ペンギン村に陽は落ちて (ポプラ文庫 た 3-1)

著者 :
  • ポプラ社 (2010年6月4日発売)
3.04
  • (5)
  • (13)
  • (17)
  • (7)
  • (7)
本棚登録 : 170
感想 : 22
3

※収録作品
ペンギン村に陽は落ちて――前編/愛と哀しみのサザエさん/いつか同時代カンガルーになる日まで/キン肉マン対ケンシロウ――愛は永遠に/連続テレビ小説ドラえもん/ペンギン村に陽は落ちて――後編

1989の作品の再文庫化。たぶんこれは初読。「ペンギン村」と聞いて即座に「ああ、あの、アラレちゃんが住んでたとこね」ってわかる世代です。現在もまだ未完で連載中の『ガラスの仮面』、アニメが続いているサザエさん、ドラえもんあたりは今の子供たちも知っているかもしれないけど、キン肉マンやケンシロウも意外ともう知らない世代も多くなってそう。

そして解説で佐藤友哉が書いていたように、この本の中に出てくるマンガで現在いちばん忘れられているのがおそらく『Dr.スランプ』ではないかいう皮肉。やっぱり鳥山明の代表作といえば『ドラゴンボール』だもんね。

自分に関していえば、単純に則巻千兵衛博士だの、ドクター・マシリトだの、山吹みどり先生、栗頭先生、パーザン、スッパマン、ニコちゃん大王って名前だけでも即座に絵が浮かぶので、懐かしみつつ面白がれました。やっぱり高橋源一郎のこの手の話は元ネタがわかるかわからないかで感想も違ってくるだろうな。

作品は全体としては一種の枠物語になっており、長めの序文で小学生の息子の「小説を書く宿題」を手伝うパパという大枠が説明され、各短編はテレビを見ながらパパが息子のために書いた小説ということになっている。

一番面白かったのはやはり表題作。他の作品はちょっと悪ふざけがすぎるのではないかと思う部分もあったけれど、表題作だけは、高橋源一郎お得意の、架空のキャラたちが住む世界の虚無感漂う哀愁のファンタジー。ペンギン村に恐怖の大魔王ならぬニコちゃん大王が降ってきてから、住民たちは奇妙は夢の世界と現実を行き来するようになり、次第にあちら側の世界のほうを愛するようになる。則巻千兵衛はアラレちゃんではなくアトムを作り、山吹先生は実はどこにも生徒のいない学校を駆けずりまわり、スッパマンに恋をし・・・。誰もいなくなったペンギン村にロボットの少年少女(アトムとアラレ)だけが佇む姿を想像したらちょっと涙が出そうになる。

あとは、家出してきて、ウルトラマンファミリーが隠居している養老院で働くことになったサザエさんが、ウルトラの父に言い寄られたり、ゼットンに恋したりする「愛と哀しみのサザエさん」がなかなかシュールで好きでした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ:  ○高橋源一郎
感想投稿日 : 2017年10月30日
読了日 : 2017年10月27日
本棚登録日 : 2017年10月26日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする