2006年 日本
監督:マイケル・アリアス
原作:松本大洋『鉄コン筋クリート』
声の出演:二宮和也/蒼井優/伊勢谷友介/宮藤官九郎/田中泯/本木雅弘
原作がとても好きで、クロとシロというキャラクターにも思い入れがあるのですが、このアニメ化は、原作ファンを裏切らない良い出来だったと思います。
『ピンポン』が「スポ根」ではなく、あくまでペコとスマイルの物語だったように、これもまたあくまでシロとクロの物語。シロとクロは、その名前が象徴するように、善悪二元論の世界で、それぞれを象徴する、非常にわかりやすく単純化されたキャラクターであると同時に、どちらかがどちらかを塗りつぶすのではなく、共存することに意味があることをも象徴している存在でしょう。映画はそれを、きちんと汲み取って作られていたなという印象です。
たしかクロが着ていた服の背中に陰陽マーク(陰陽対極図)が描かれていたり、ふたりの住処である車に描かれた「96(くろ)」の文字も、逆を返せば「69」になり。光と闇、善と悪、白と黒。それらは真逆のものでありながら、けして切り離すことができず、相反しながらも互いを絶望的なまでに必要としている。まあ、そんな説明的な解釈は抜きにしても、じっちゃんの説明台詞を待つまでもなく、クロがシロを守っているのではなく、クロのほうこそがシロの純粋さに守られているのだというのは明白なわけで。クロはシロという「守るべきもの」を失ったら存在理由さえなくしてしまう。それを思っただけで、なんてことのないエピソードでも泣きたくなります。世界を等分する光と闇の量。そのバランス。
アニメーションとしては、やはり宝町のレトロフューチャーな造形が素晴らしかったです。ブレードランナーの未来のようでもあり、それでいて大阪の下町の混沌のようでもあり(難波に道頓堀極楽商店街なんて、昭和ノスタルジーなアミューズメントパークがあるんですけども、ちょっとそれを彷彿とさせるような・笑)大好きな劇団「維新派」のセットにも通じるものがあると思いました。
ところで一つ気になったのは、確か映画ではシロがブタさんの貯金箱を朝夜兄弟にあげちゃってたんですけど、あのお金は二人が飛行機に乗ってあの町を脱出するためのものだから、あそこであげちゃったらいけないんじゃないかなあ?原作では、最後のほうで割れた貯金箱=つまり中身を二人が使ったことを意味するコマが象徴的に描かれていたと思うのですけど。う-ん、どうだったろう。なんにせよ、好きな映画でした。
(2007.06.26)
- 感想投稿日 : 2015年3月27日
- 読了日 : 2007年6月26日
- 本棚登録日 : 2015年3月27日
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