さようなら [DVD]

監督 : 深田晃司 
出演 : ブライアリー・ロング  新井浩文  ジェミノイドF  村田牧子  村上虹郎 
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感想 : 9
4

2015年 日本 112分
監督:深田晃司
原作:平田オリザ
出演:ブライアリー・ロング/ジェミノイドF/新井浩文/村上虹郎/村田牧子/イレーヌ・ジャコブ/ジェローム・キルシャー
http://sayonara-movie.com/

本物のアンドロイドがアンドロイド役を演じている映画、というので俄然興味を持ちました。ハリウッドのSF大作や日本のアニメでは定番のアンドロイドが、一種のファンタジーとはいえ比較的日常寄りの日本の実写映画にどのような形で登場するのかも興味深く。アンドロイドの製作はテレビのマツコロイドなどでもおなじみの石黒浩。アンドロイド女優・ジェミノイドFの名演技は個人的には助演女優賞もの。終盤、彼女が谷川俊太郎の詩を朗読するシーンでは堪え切れず嗚咽。

近未来というか一種のパラレル日本。各地で原発事故が起こり放射能汚染に日本中が侵されてしまう。難民となった日本人を受け入れてくれる国へ順番に移住してゆく人々。しかしその順番には当然、避難優先順位というものがある。持病持ちで、実は難民として日本に来た白人女性ターニャや、その友人で独り身の中年女性などにはなかなか避難の順番はまわってこない。ターニャは幼少時に病弱な彼女のために父親が与えてくれたアンドロイドのレオナと一緒に田舎の一軒家で静かに暮らしている。時折訪れる恋人はいるけれど、家族はすでにない。いつまで待っても訪れない順番。自暴自棄になる人々、友人の自殺、恋人の裏切り。持病が悪化してどんどん孤独に衰弱してゆくターニャ。そして最期に彼女が望んだことは・・・

原発事故、難民問題、ネグレクトなど、現代的な問題が散りばめてはあったけれど、基本的にはアンドロイドと人間の交流ファンタジーで(と私は捉えたので)政治的メッセージの強い映画にありがちな押しつけがましさがなかったのは良かったです。何もかも「データ」として情報を収集し分析し学習するアンドロイドのレオナには「忘れる」ということが理解できない。何を美しいと思うか、どう感じるかはターニャから収集したデータの集積にすぎない。にも関わらず、ターニャの他愛ない問いかけに律儀に応え続けるアンドロイドの、不思議な優しさ、包容力。機械なのに何故か温もりを感じさせる彼女の声。かなうなら、自分も死の間際まで、レオナの朗読する谷川俊太郎の詩を聞いていたい。そうすればきっと自分を孤独だなんて思わずに死んでいける気がする。

原作は平田オリザの戯曲。主演のブライアリー・ロングは、最初は何故わざわざたどたどしい日本語の白人女性を主人公にするのだろうとちょっと疑問だったんですが、舞台でも同じ役を演じていたということなので、だんだん背景がわかってくるにつれ納得。でもまあ、理由づけなどどうとでもなるので日本人女性のほうが違和感なかった気はするけれど。

友人役の女優さんはとても良かったです。彼女も平田オリザの青年団の女優さんらしい。同じく途中でヒッチハイクしてくる若いカップルの女性も劇団の人みたいだけど、こちらはちょっと演技ではなく年齢に無理があった気が・・・。舞台ならOKでも映画では、リアル10代の村上虹郎の恋人役にしては年上すぎるでしょう。

村上虹郎は演技しているところを初めてみましたが、二世タレントとしては珍しく両親の良いとこ取りで将来有望そう。顔は父・村淳似のイケメンベースに母・UAのエキゾチックさを足したような感じ。声質も個性的でこれはママゆずりだろうな。回想シーンのみだけどヒロインの母親役がイレーヌ・ジャコブだったのはなかなか贅沢。

(2016/3/23)新文芸坐

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ:  邦画
感想投稿日 : 2016年7月4日
読了日 : 2016年3月23日
本棚登録日 : 2016年7月4日

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