巴里の空の下オムレツのにおいは流れる (河出文庫)

著者 :
  • 河出書房新社 (2011年7月5日発売)
3.85
  • (88)
  • (154)
  • (100)
  • (15)
  • (4)
本棚登録 : 1833
感想 : 172
5

元祖、料理エッセイと呼ばれる、シャンソン歌手石井好子による、戦後ヨーロッパ留学中の料理や食べ物についてのエッセイだ。食べるのが大好き、という人にはおすすめの一冊。まだ海外の食事が日本国民から縁遠かった時代に書かれたものであるが、今の時代に読んでも中途半端なエッセイストが書くグルメリポートより、はるかにすっと入ってくるものがある。

タイトルのオムレツは実に美味しそうだし、ラザニアやパエリアのように今となっては馴染み深い料理も珍しい料理として紹介されるので面白い。フランスに10年くらいいたそうで、フランスの料理がメインであるが、意外なことにムール貝の蒸した料理については触れられていなかった。あれはすごく美味しいのに。面白かったのは、彼女が、日本は紅茶を美味しく淹れないと嘆いていて、いまでも日本はカフェでは紅茶後進国で、ここだけは変わってないなあ、とため息をついてしまった。

もともと食いしん坊だった石井は、料理が出来ない、料理下手な女性だったというが、何度も大きな失敗を重ねて、おいしく食べるコツをマスターしたようである。紹介されるレシピも、本格的な材料が無くてもできるように、そして手順は、機械的ではなく、どういう色や形になるかが具体的な表現でなされているので、家庭的な味わいがして嬉しい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 料理
感想投稿日 : 2013年4月13日
読了日 : 2011年12月17日
本棚登録日 : 2013年4月13日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする