経済史入門: 現在と過去を結ぶもの

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  • 慶應義塾大学出版会
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  • Amazon.co.jp ・本 (339ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784766406740

作品紹介・あらすじ

現代の経済は過去の遺産であり、その形成過程(歴史)を知ることは未来への見取図を描くことにつながる。古代から現代までの人類の経済活動をわかりやすく解説しつつ、経済史を学ぶ意義を説く。

感想・レビュー・書評

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  • なぜ近代において、経済発展が起こったのか?そして、なぜそれはヨーロッパから生じたのか?また、なぜある地域では起こらなかったのか?という素朴かつ壮大な探究。よって欧州以外の記述もあり、網羅性がある。後進国である日独の共通性と差異性について考える事も有意義であると思う。第1章「経済史とは何か」は必読。

  • 一文一文が示唆に富んでいる。各時代や各地域の経済発展の背景や原因を考えることができて非常に興味深かった。以下刺激を受けた文章の引用。

    「もし私が好古家であるならば、古いものにしか興味を持たないだろう。しかし、私は歴史家だから生きているものを愛する」―アンリ・ピレンヌ

    「経済変化は極めて緩慢で長期的なものであるので、その変化の中に生きている人びとが、変化に気付くかどうかは分からない。」

    「(後続国の国民は)先進国民にとって幾世紀もの経験を要したところを、一挙に急いで模倣しようとし、熟考を経た方法にしたがって、己を組織する。ドイツ、イタリア、日本は、こうした国民である。ロシアも領土の広大さが全体的計画の迅速な実施への障害をならなかったならば、同じ例を示すであろう。……日本は、ヨーロッパは自分のために作られたものと考えているに相違ない。」―ポール・ヴァレリー

    「国家というものが、人びとの観念にとって固定的な枠である必然性はない。ローマの市民や中世の人びとにとって、国家は存在しなかったし、明治以前の日本においても人びとの思考の枠はせいぜい藩という単位であった。アジアやアフリカにおいて、あるいは国民国家を生んだヨーロッパにあっても、いわゆる民族紛争が多発したことは、国家がいかにもろい枠であるかを示している。市場経済が世界に拡大した過去二世紀間は、逆説的ではあるが国家が強大化した時代でもあった。今日のわれわれにとって、国家の枠を越え、世界的なものの見方をすることこそが、問題解決の糸口となる。ここで求められているのは、まさに観念の変革である。ケインズも述べたように、思想や観念は実際には既存の利害関係よりも強力なのであって、学問の意義もこの点にある。市場経済や国家は歴史的に形成されたものであり、世界帝国や封建制と同じく不死の存在ではありえない。経済活動の自立は人びとの生活水準の向上に貢献した。しかし、経済的利害を文明の主人として人びとが崇拝する時代も永遠なものではなかろう。国家の枠を越え、時代の枠を越えて視野を広げる…」

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