文豪谷崎潤一郎の生涯を賭したミューズ探しの旅、と言ってしまうともう一言で終わってしまうのですが、うーん、ここまで実在していた人物及び家族を赤裸々に描いてしまうところに桐野さんの凄さを感じました。

谷崎の築いてきたミューズ候補の女性たちで成される家族帝国ではあったけど、彼がずっと待っていたのは作品世界に縛り付けられそこから抜け出せない女性よりも、それを打ち破る自分の予想や現実を遥かに超えた女性だったのだろうかと思いました。

終盤近くの重子がひれ伏す谷崎を足蹴にするシーンなどは、ちょっと「痴人の愛」を重なりましたが、現実で彼を本当に足蹴にした女性は小説世界のナヲミではなく重子しかいなかったのでしょうね。

だけど、そんな重子でさえも、実は二重に張り巡らされた小説世界の住人でしかなかったのでは…とラストはちょっとゾクッとさせれました。
一つ目の枠は超えてきたけれど、実はもう一つ枠があって…などと思うとやはり文豪って業が深いよ、と嘆息せざるを得ません。

2017年8月3日

読書状況 読み終わった [2017年8月3日]
カテゴリ 小説

映画「人生フルーツ」鑑賞済みです。
しゅういちさんが亡くなった後の英子さんのインタビュー(ききがたり)を中心に収録されている本。
もちろん、生前のしゅういちさんの言葉や夫婦の会話のやりとりも収録されています。写真や英子さんのレシピもあって、ファンにはすごく読み応えがあって価値がある一冊です。

物が溢れて、モノの奴隷になりながらあくせく生きているワタシ達世代には、まさに憧れの老後でありスローライフであるのだけれど。
夫婦で好きなことをして楽しく生きているように傍からは見えるかもしれないけれど、そこに至るまでにお二人の取捨選択や譲れない人生へのこだわりが見えてきて非常に興味深く読めました。

ターシャ・テューダーの生き方にも言えるのだけど、苦渋の決断の取捨選択ではなく、好きなものを追求してきた生き様なので、お二人の人生は生き生きと輝いて見えるのだろうなぁと感じました。

ちょっと意外だったのが、下世話な話で申し訳ありません、お金のこと。
年金が口座に入ると結構使い切ってしまう、というのがへぇ~、ちょっと意外、と思いました。
娘さんが「お母さん通帳に一銭もないの?」と心配するほどなのですが、英子さんは、ストックしてある食べ物があるからそれを食べていれば来月まで持つから、とどこ吹く風なのが(笑)
なんか、いいですね、こういうの。
もしかしたら、お金を遺産として子供に残すよりも、こういう親の生き様を見せることが遺産になるのかな、と思ってしまいました。

お料理が大好きで台所に立っているとルンルンなの、という英子さん。どうかいつまでもお元気でいてほしいです。

2017年6月27日

読書状況 読み終わった [2017年6月27日]
カテゴリ エッセイ

読書状況 読み終わった [2017年3月7日]
カテゴリ 図説

読書状況 読み終わった [2017年2月6日]
カテゴリ マンガ

ネットで話題になっていたので手に取った一冊。
いわゆる風俗レポ、と思ってエロティックな描写を期待すると肩透かしを食うかもしれません。(あるにはあるけれど、ボリューム的にはさほどないので(笑))

このマンガのキモは「さびしすぎて」というタイトル部分。
なぜこんなにも筆者が寂しかったのか、なぜレズ風俗を選ぶに至ったのか、という葛藤の部分です。ボリューム的にもそちらの部分の描写が多いです。
個人的にはこの部分が丁寧に描かれていたので、興味深く読みました。

たぶん、癒やしと許しと「ぎゅっと抱きしめられたい」他人の体温を感じたかったのかなぁと。
女性である筆者が、対男性でそれを求めると(異性経験がほぼないに等しいので)いろいろとリスクが多い。母親とのエピソード(母親と特にすごく仲良いわけでもないのに、母親の肉体的な柔らかい部分に固執したい)、肉体の暖かさ、柔らかさに包まれたい、となると、相手を女性に限定したレズ風俗、というのは個人的には「あ、そういう考えもあるのか(ひざポン)、こういうのも有りだな」と読んでいて感じました。

単なる風俗レポ、というよりは、自分の内面世界を試行錯誤しつつ切り開き広げていく冒険譚として読むと納得出来るかもしれません。
もちろん失敗エピソードもあるのですが、なにより筆者自身が真摯に正直に描こう、という気持ちが見えるので、手段はどうであろうと読後は
「よく頑張ったなぁ」
と思えてしまいました。

人生の「甘い蜜」を筆者がどうか見つけてくれますように、と思います。

2017年1月30日

読書状況 読み終わった [2017年1月30日]
カテゴリ マンガ
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読書状況 読み終わった [2017年1月26日]
カテゴリ マンガ

読書状況 読み終わった [2017年1月26日]
カテゴリ マンガ

読書状況 読み終わった [2017年1月26日]
カテゴリ マンガ

女性、特に子育てを経験した母である方が読むと、ちょっとしんどいかな(読むとどっと疲れが出たというレビュー多数)と思いました。ワタシも同じく。

乳幼児の虐待死事件の刑事裁判の補欠裁判員に選ばれてしまった梨沙子。彼女も3歳になる娘の子育てに悪戦苦闘する毎日であったので、被告の女性、水穂に自分を重ねつつ、公判は進んでいく。

余談ですが、ワタシはSNSでは、あまり育児系のアカウントが少し苦手です。声高にウチの育児ってこうよ! ウチの子こんな感じ! 凄いでしょ!的な発言を見ると、個人的にどっと疲れてしまうので…(もちろん例外の方もいらっしゃいますし、勝手にワタシが発言読んで疲れると感じるだけなので他意はなく、個人的な好みだと思って下さればいいです)

描かれた育児のエピソードでは、母乳が出る、出ないのあたり、ワタシも似たようなことで四苦八苦したので、なんだか懐かしかったり切なかったり…これも過ぎし日の思い出になってしまったので今は冷静に語れますが、当時はよく泣きべそをかいていたなぁと思い出します。

この小説で描きたかったのは母性ではなく、家族というそれぞれ違った主観をもった個人同士の集まりの中で、何が「普通」なのか、何が「幸せ」なのか、お互いの「人の愛し方」がどう違うのか、なら落とし所はどこなのか、という難しさを抱えているのだ、という事実なのではないかと思います。
それに気づいたときに、ちょっとゾッとしました。

傍目からみたら全く問題のない、「あら、そんなの、よいご主人(お姑さん)じゃないですか」と言ってしまいそうな、夫や義母のおだやかな暴言というフレーズが本当に怖かったです。
でもあるんだろうな、こういうのって。
ワタシは幸か不幸か言葉通りにしか受け取らない鈍感な人間なので、気づいていないだけで、敏感な人だと本当に柔らかな牢獄にいるような感じなのかもしれませんね。
でも、もし自分がそれに気づいてしまったなら…この小説の恐ろしくて悲しいところはそこなのかもしれません。

主人公の梨沙子のこれからは、この小説ではあえて描かれていませんでしたが、どうか彼女が柔らかな牢獄から自由になれていまように、と思わずにはいられません。

2017年1月25日

読書状況 読み終わった [2017年1月25日]
カテゴリ 小説
読書状況 読み終わった [2016年9月26日]

自虐の詩もそうだったのだけど、普段の日常エピソードから作者の本当に言いたかったことをガツンと浴びせられるエンディングへの流れは素晴らしいと思います。

人間社会に対する、自我を持ち始めた小雪の素朴な疑問が、やがて世界の矛盾点を鋭く突く糾弾へと変わるのも上手いなぁと思ってしまいました。
貧富の差のある人間社会への鋭いアンチテーゼを主張することにより、マリアと呼ばれる小雪。
ですが、その小雪の存在自体が危うくなりそうな、ラストシーンの母の「そうなったらロボットはいらなくなるのよ」というセリフにすごく考えさせれました。
清濁併せ呑むところが今の人間の世界なのかもしれませんね。それがいいか悪いかはきっと誰にも結論は出ないのでしょう。

2016年4月2日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2016年4月2日]
カテゴリ マンガ

読書状況 読み終わった [2016年3月17日]
カテゴリ 小説

読書状況 読み終わった [2016年3月15日]
カテゴリ 実用本

読書状況 読み終わった [2016年1月15日]
カテゴリ 実用本

読書状況 読み終わった [2015年12月7日]
カテゴリ 小説

読書状況 読み終わった [2015年9月8日]
カテゴリ 小説

よくわからない、という感想多いのだろうけど、自分はこういう雰囲気好きだな。雰囲気小説と言われようとも。

大きくドラマチックにストーリーが動くわけではないのだけど、人の心の儚さやもの悲しさ、寂しさや無常感が良いです。
架空の妹、という部分で、雛子が老齢のため壊れかけているのかと思ったのですが、予想していたのとまた違った展開で良かったと思う。

すべての問題点がきれいに解決する人生なんて、ないよね。
自分の思い通りにすべて行くような人生って面白くないよね。
だからこそ、人生は儚く美しいのかもしれません。

2015年7月26日

読書状況 読み終わった [2015年7月26日]
カテゴリ 小説
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谷崎の痴人の愛をベースにした、更年期のオバサンの夢小説、だと思いました。
自分もオバサンなので、同族嫌悪的な感想ですみません(笑)
でもシチュエーションが素直にオバサンの夢小説だと思ってしまいました。まあ、性の技巧の指南とかは、美々しい言葉で実践なしで講義されてもなぁ~、ただ美々しい言い回ししたかっただけ違うのかと。
言葉が美々しいだけ、個人的には滑稽に思えてしまいました。

山田詠美さん、昔は好きだったけど、ここ最近は劣化しつつあるみたいで悲しいです。ただ、文章は相変わらず綺麗です。その辺りが、今回さらにオバサン達のための夢小説とかおとぎ話っぽくなってる原因の一つなんですけど。

2015年7月13日

読書状況 読み終わった [2015年7月13日]
カテゴリ 小説

するするっと読めてしまった。
映画を観た後なので、すんなり映画のキャスティングが脳内に再現したまま読めました。

ただ、まぁこの手の風変わりな生活ほっこり系、はエンディングが難しいですね。
強烈に印象に残るエンディングにすると、ストーリー全体のバランスを崩してしまうことになりがちなので…。

あっさり読めた分、たぶん3ヶ月後ぐらいにはストーリーあちこち忘れてるだろうなーと思います。
それぐらい、あっさり、さっぱり(笑)

2015年6月12日

読書状況 読み終わった [2015年6月12日]
カテゴリ 小説
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読書状況 読み終わった [2015年2月9日]
カテゴリ マンガ

しっかりものの姉育実と、言葉の発達の遅い拓人の幼い姉弟の周囲をとりまく群像劇、といえばいいのか。
群像の中には、タイトル通り、ヤモリやカエル、シジミチョウなどの小さな生き物も含まれる、というところが良いです。

言葉の発達がやや遅れている拓人は、周囲の人間や生き物達の心や、無意識の声を聞くことが出来るというストーリーなのですが、小さな生き物達の言葉にならない生への賛歌の描写が、もう悲しいほど美しく、はかなく、なぜか読んでいてちょっと泣きそうになりました。

幼い姉弟の周囲の、ちょっと入り組んだ大人達のエピソードも対比するかのように描かれています。
小さな生き物はこんなにもシンプルにただひたすらに生きているのに、人間は感情が絡み合って生きているのだと改めて思いました。

ラストの成人してからの二人のエピソードが、一見唐突に思えるかもしれませんが、なおさら、幼少時の二人の、生き物たちとのちょっと不思議な関わりを、はかなく美しく、そして少し物悲しく感じさせる読後感です。

2015年2月9日

読書状況 読み終わった [2015年2月9日]
カテゴリ 小説

映画とは違い、本編のキーパーソンである、娘・加奈子の行動原理と原因が明らかにされている。
それゆえ、映画での登場人物ほぼ全員クズ、という印象とは少し違うかも。
フィルム・ノワール的なストーリーの流れはだいたい同じです。

ただ、これでもかこれでもか、と暴力描写の量が多いので、苦手な方は注意です。そして、これだけ暴力描写がある割に、狂言回し的な役どころの藤島(加奈子の父)が、よく死なずに生きてるなぁ…というのはありますが(笑)

2015年1月27日

読書状況 読み終わった [2015年1月27日]
カテゴリ 小説

ネットやテレビでちょっと話題になっていたので…とそれ以外の予備知識もなく軽率に手に取ってしまった一冊。
馬鹿なワタシは、「最貧困女子」というタイトルで、
「ああ、なんかボンビーガールとかあんな感じの話なのかなー」
と思いながら読み進めていたのですが、ここに出てくるのはそんな「貧しくても明るく」というのではなく、幼少時から本当に悲惨な日々を送り、まさに生きるか死ぬかギリギリところでセックスワークを生業としている女性たちのケース。
(マイルドヤンキー的な、それこそ「お金はないけど地元の仲間がいるからそれなりに幸せ」的な女性のケースも一人だけ紹介されてはいるが、おそらく他の悲惨な女性達との対比のために書かれているのだと思われます)

読んでいて、桐野夏生の「グロテスク」を思い出したんですが、悲惨さは同じぐらいでも、この本に出てくるケースの女性たちの多くは、サバイバル的にセックスワークに流れていて、より切羽詰まっています。
知的障害を持つ女性のケースは、本当に読んでいて心が痛かったです。

これを読んで、「生活保護を受けれるだけ、まだましなのかもしれない」とつくづく感じます。
公的な福祉や保護を受けるまでに至らない水面下のケースに、読んでいて自分の無知を恥じ入りたい気持ちになってしまいました。
行政の差し伸べる手と、彼女らが欲している手の、なんと隔たりがありすぎることか。

筆者の思い入れが強すぎて、ラストは本当に実現が難しそうな理想論的な解決案はあるものの、いろいろと考えさせられることが多かったです。
でも情けないことに、これを読んだからといって、ワタシの中ではまだ答えが見つかっていません。
今まで知らなかった、今の自分からはあまりに遠くかけ離れた立場の女性たちに、手を差し伸べるべきなのか、それとも自分の平穏な日常のテリトリーを守るために、「お願い、ここから先は入ってこないで」と小さな声で冷たく言い放ってしまうのか(ものすごくエゴで保身ですが)、その時になってみないとわからない、今は結論が出ていない、というのが正直な気持ちです。
その意味では、読んだ後にこれほど感想や自分の考えの結論が迷走した本はこれが初めてかもしれません。

キレイ事で手を差し伸べるだけではすまないぐらいの悲惨で切羽詰まったケースなので、卑怯な言い方ですが、自分の中の善意とリスクを天秤にかけてしまうかもしれないなー、と思ってしまいました。

ただ、こういう女性たちの存在を知ることができて良かったです。
自分の中での考えの結論は本当に今、迷走しているのですが、少し時間を取っていろいろ考えてみたい、と思わせてくれる本でした。
まとまりがなくてすみません。

2015年1月15日

読書状況 読み終わった [2015年1月15日]

「ムッシュー・ド・パリ」と呼ばれた、パリの死刑執行人、シャルル-アンリ・サンソンのドキュメンタリー。
マンガの「イノサン」で、彼の人となりに興味を持ったので読んだのですが、余計な解釈を極力省きつつ、史実のみを忠実に記述してあったように思います。簡潔で読みやすかったです。
国王ルイ16世を尊敬しつつも、革命という大きな流れに逆らえず、意に反し、ルイ本人を処刑せねばならなかった、そして死刑制度に疑問をいだき煩悶しながらも、多くの人々を手にかけねばならなかったシャルルの苦悩はいかばかりだったのだろうか。
また、ギロチンという処刑道具が、実は人道的な意図に基いて誕生したというのも実に興味深かったです。
ですが、ギロチン自体が、死の苦痛を短く終わらせると同時に、死刑執行がスピーディに行われてしまい、結果として大勢の人々の命を奪うことになったという事実。

世の流れ、大勢の人の勢いが作り出す歴史というものの残酷さを感じずにいられませんでした。

2014年12月26日

食にまつわるエッセイ集。
文章と筆者自身が描いた素朴なイラストがマッチしていて、読んだ後すごくほっこりした気持ちになりました。

「たべものの味には思い出という薬味が…」という冒頭の文章には深く頷いてしまいました。

書かれている題材のメニューが、それほど贅沢なものばかりではなく昭和を感じされるものが多いのも読んでいて楽しかったです。

味覚という感覚に、思い出がからみついて、同じメニューや食べ物を食べると、今まで忘れていた無意識の部分から鮮やかに思い出が浮かび上がってくる感じがよく描かれています。

個人的にはくさやとバンデラス、という取り合わせが一瞬え? と驚いたのですが読んでいてこれほどなるほど!と思わせてくれる対比はないなぁと。うまい組み合わせです。

これを読んだ後に、母がよく作った名もない炒め物とか煮物が急に食べたくなりました。
食材のシチュエーション、料理する環境、食卓を取り囲むメンバー、食事って一期一会なのかもしれませんね。

これを読むと、タイトル通り食べ物がいとおしくなる本です。
食事やおやつ、味わって楽しんで食べて行きたいな、と思いました。

2014年12月21日

読書状況 読み終わった [2014年12月21日]
カテゴリ エッセイ
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