ビートルズが愛した女: アストリット・Kの存在 (幻冬舎文庫 こ 9-2)

著者 :
  • 幻冬舎 (2001年2月1日発売)
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感想 : 2
5

読み終えて、しばし涙が止まらなかった。

 この本はアストリット・キルヒヘアの物語であるが同時に、ビートルズを愛するすべてのファンが手に取るべき物語であると思った。

 40年前、中2の春にビートルズを知った僕は、彼らの音楽と共にハンター・デイビスやブライアン・エプスタインの著作などで彼らの物語に触れた。

 特にデビュー前の、喧騒と興奮と成長の物語は、のちのロック少年たちのセルフストーリーの原型となっていくもので、そこに登場する名脇役たる仲間たち、スチュやアストリットやローディーのニールやマルには、まるで自分の親友たちのような親しみを感じさせたものだった。

 本編の前半は、アストリットの視点からの少年のようなファブ4のサクセ スストーリー。
 アストリットにしか語ることの出来ない、ファンには堪らないエピソードが満載だ。

 そして後半はアストリットの、裏切りと傷心の後半生が綴られる。

 才能とセンス溢れる容姿とは裏腹の、細やかで人に献身的に尽くさずにはいられない性格がゆえに、信ずる人々から裏切られ続けるその後半生。

 しかし、年齢を重ねて自己を深く振り返る彼女の真摯な姿を知れば、ビートルズの面々がいかに彼女を姉のように、そして恋人のように敬愛し続けたかの理由がわかる。

 それは読み終えてみれば、一人の女性の豊饒な物語であり、ふと ♪♪ in my life, I love you more ♪♪ と口ずさんでしまう物語であった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: バンド
感想投稿日 : 2014年3月29日
読了日 : 2014年3月29日
本棚登録日 : 2014年3月29日

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