デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川新書)

著者 :
  • KADOKAWA (2010年6月11日発売)
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  藻谷浩介「デフレの正体~経済は「人口の波」で動く」を読む。
  面白い、引き込まれた。5年前のことが前提になっているので、経済の状況はちと古いのだが、それ故にこそ、予言の意味として振り返ってみるのがいい。
  経済学的な観点からの評価は自分の出来ることではないが、「人口の波」で経済が動くというのは、よく判る。著者が大きな要因として取り上げる「団塊の世代」の行動・考え方はまさに自分自身の問題でもあるからだ。

  内需が回復しないとの声はもうどれだけ続いているだろう。消費税増税の影響はもちろん大きいが、大きな問題の一つが既に仕事をリタイアした高齢者がモノを買わなくなったということ。例えばクルマの国内販売は一向に増えず減少の一方。これは若者のクルマ離れが大きな要因だとよく云われていたが、実は高齢者がクルマを買わなくなったのも大きな要因だと。もう何もかもモノを持っている豊かな高齢者は、あと何年生きるかも知れない老後資金として持つことを優先し、さらにモノを買うという行動を控えるからだという。結構な金融資産を持っている高齢者が買い控える、これが内需を押し下げるのはごく自然な話かも知れない。確かに判りますよね。何ほどの小金も持っているわけではないが、正直なところ、自分でも今さらに買わなければいけないものなど殆どない。せいぜいが古寺探訪などの旅行をするくらいとも云えるわけだから。
  著者は、その打開ために、①団塊世代がリタイアした後の若者の所得を上げるべきだ、②女性を活用し就労人口を増やして購買力を上げる必要がある、③外国からの観光客を増やして消費を図るべきだ、などと提言。実はこれは、くしくも現在安倍内閣が推進していることに他ならないのだが、5年前にはこうして提言が既にされていたということになる。

  最近はGDPが僅かながら伸びていると云うことだが、恐らく円安効果で自動車などの輸出が大幅に伸びているのが要因に違いなく、再び円高傾向に戻れば、また冬の時代に逆戻りと云うことになるのかも知れない。要は、年寄りも我々年寄り予備軍も「ピンピンころり」と死ねることを信じて、金を貯め込まずにせっせとと使いなさいということに尽きるのだろう。団塊世代というもの、いつの時代にも世間から叩かれ、要求されることが多いのには、腹立たしく辛いものがあるな、ホント。

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感想投稿日 : 2015年6月23日
読了日 : 2015年6月19日
本棚登録日 : 2015年6月19日

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