知的障害のチャーリイ(32歳)は、アルジャーノン(白ネズミ)の動物実験で成功した最先端脳手術を受けて、高い知能を得る。この力作のスゴいところは、全編が彼自身の日記で語られる点で、はじめのほうのひらがなだらけのたどたどしいにっきは、段々と漢字混じりの洗練された文章になっていく。ということは、もちのろん、障害者の視点で語られるとても重たい話でもある。友達と仲良く遊んでいた過去の記憶はじつはいじめだったと知る。子供の頃に虐待を受けて母親不信の彼は、恐怖で女性ともうまく付き合えない。そして同じく高度な知恵を得たはずのアルジャーノンが。。。総じて救われない話なんだけど、日記という主観的な形式なので、逆にそれぞれのエピソードを客観視できるのが秀逸。ハイライトは母親との20年振りの再会。家族の苦悩をここまで鮮烈に描いた作品はなかなかない。「ライ麦畑でつかまえて」を挫折した過去があって心配だったけど、斬新な文章構成にも助けられて、なんとか読了した。翻訳者の苦労と工夫に敬意を表する。チャーリイは最後の最後まで、おりこうさんになりたい、つまり知的向上心をもった人間として描かれる。議論があるとすればそこだろう、、障害の有無にかかわらず。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2017年8月6日
- 読了日 : 2017年8月6日
- 本棚登録日 : 2017年8月6日
みんなの感想をみる