20世紀SF 3 1960年代 (河出文庫 ン 2-3)

著者 :
制作 : 中村融  山岸真 
  • 河出書房新社 (2001年2月1日発売)
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感想 : 16
3

まず、過去を知らない人は巻末の解説を先に読んだ方がいいかもしれない。私は予備知識なしで読んだのですが、どの作品も難解に感じました。1960年代の時代背景が分かっていれば、もう少し楽しめただろう。個人的な好みの作品は、『「悔い改めよ、ハーレクィン!」とチクタクマンはいった』『メイルシュトレーム2』『町かどの穴』『イルカの流儀』といったところ。

個別作品の感想は下記の通り。

◎復讐の女神(ロジャー・ゼラズニイ/著 浅倉 久志/訳)
難易度高い。西洋では常識になっている西洋文化を知らないからだろう。ストーリーは分かるのだけど、その中にある面白さを理解できなかった。

◎「悔い改めよ、ハーレクィン!」とチクタクマンはいった(ハーラン・エリスン/著 伊藤 典夫/訳)
SFらしいSFだなあ。遅刻が重罪で累計遅刻時間が多くなると死罪にもなる厳しい世界。でも現実世界も似たようなものか。電車なんて2分くらい遅れたら、鉄道会社の係員が何回もお詫びのアナウンスをしているもんなあ。過ぎたるは及ばざるがごとし、という事で、適当適切なのがちょうどいいのかなと、本作品を読んで思った。

◎コロナ(サミュエル・R・ディレイニー/著 酒井 昭伸/訳)
自殺願望を持ったテレパスのリーと宇宙港の職員であるバディ。その二人が出会うことで二人が救われる。

◎メイルシュトレーム2(アーサー・C・クラーク/著 酒井 昭伸/訳)
月から地球に向かう時にアクシデントが発生し、月の周りを宇宙服だけでほぼ一周することになる男の話。危機一髪の状況の描写がうまい。さすが巨匠である。最後までドキドキしながら読んだ。もっと続きを読みたかった。

◎砂の檻(J・G・バラード/著 中村 融/訳)
火星なの?地球なの? と最後の方まで謎に思いながら読み進めた。素直に面白い。

◎やっぱりきみは最高だ(ケイト・ウィルヘルム/著 安野 玲/訳)
バーチャルアイドルなんて昔にいたなあなどと思いながら読んだ。アイドル(女優かな)とマトリクスが融合したYouTubeのような世界。芸能界の怖さはリアルな感じがして良い。これは今も昔も変わらないのだなあ。

◎町かどの穴(R・A・ラファティ/著 浅倉 久志/訳)
面白い法螺話。おもしろおかしくもあり、シュールでもあり、ホラーでもある。鏡で自分の姿を見たらゲシュタルト崩壊しそうだ。

◎リスの檻(トーマス・M・ディッシュ/著 伊藤 典夫/訳)
白い立方体の部屋に閉じ込められている作家の物語である。シュールとしかいいようがない。じわじわと効いてくる面白さである。

◎イルカの流儀(ゴードン・R・ディクスン/著 中村 融/訳)
イルカと人類がコミュニケーションする過程で、驚きの理論が明らかになる。これもファーストコンタクトものといっていいのかな。SFらしいSF。

◎銀河の<核>へ(ラリイ・ニーヴン/著 小隅 黎/訳)
銀河の中心に簡単に行ける宇宙船があったら、どのような景色が見られるのだろう。その想像を見せて、さらに意外な結末を突きつけられる。物理的に疑問を持ってしまうところもあるが、楽しく読める。

◎太陽踊り(ロバート・シルヴァーバーグ/著 浅倉 久志/訳)
“きみ”を指し示す対象が次々に変わるので、そこを気を付けなければならない。“きみ”と最初に示されたトムの正体を理解できなかった。もしかしたら人間ではないのかもしれない。コミュニケーションできない知的生命体との関わりは難しい。

◎何時からおいでで(ダニー・プラクタ/著 中村 融/訳)
タイムトラベルのショート・ショート。タイムトラベルをやった結果、実際に訪れるのはこのような結末かもしれない。

◎讃美歌百番(ブライアン・W・オールディス/著 浅倉 久志/訳)
自分には意味不明な作品。自分には難しかったし、好みの作品でもなかったのだろう。月が地球から飛び出し、代わりに金星が地球の姉妹星になる世界で、異形の知的生命体が活動する世界。そこまでしか理解できなかった。

◎月の蛾(ジャック・ヴァンス/著 浅倉 久志/訳)
難解な作品だった。自分好みではない。

◎変革の嵐が吹き荒れた時代(中村 融/著)
本書に収録された1960年代のSFについての解説。各作品を読む前に、この解説を読んでおいた方が、各作品をよくタノシメルかもしれない。自分が知らない60年代について知ることができて満足だ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: SF
感想投稿日 : 2016年7月2日
読了日 : 2016年6月30日
本棚登録日 : 2016年6月19日

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