コトラー マーケティングの未来と日本 時代に先回りする戦略をどう創るか

  • KADOKAWA (2017年3月24日発売)
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今から20年近くにマーケティングという言葉を知って、その分野を少し勉強したことがありましたが、そのときから、この本の著者である「コトラー氏」の名前は知っていました。現代では、私が勉強したころの1.0や2.0でははく、4.0と進化しているとのことです。

この本ではその進化の過程が解説された後に、現代の資本主義の特徴(弱点も含めて)、アメリカと日本における資本主義の違いについて述べた上で、日本の資本主義に未来があると結論できています。この本は、前書きで述べられている様に、日本向けの書籍で、日本だけで発売される本とのことです。著者が日本人なら理解できますが、著者があのコトラーですから驚きです。

日本の強みを解説している何人かの日本人は知っていますが、最近ではあまり例を見ないと思います。この本で述べられている点を参考にして、あと10年程度になった私の社会人生活にも活用していきたいと思いました。

以下は気になったポイントです。


・日本について心配しているのは、以前に比べて日本からの留学生が少なくなっている、少子高齢化の進展・移民の受け入れに積極的でないこと(p5)

・マーケティングの考え方を体系化し、S(セグメンテーション:市場細分化)、T(ターゲッティング)、P(ポジショニング:独自ポジションによる差別化)の「STP」というマーケティングのフレームワークを構築した(p8)

・今日のマーケターの多くは、マーケティング4.0の世界になっても、いまだ、マーケティング1.0(製品中心)、2.0(顧客志向)の段階にとどまっている(p49、53)

・1986年には、従来の4Pに加えて、政治力(political power)、広報活動(public relations)という2つのPを追加している(p51)

・サービス業の場合には、3つのP(要員:people、業務プロセス:process、物的証拠:physical evidence、例として立派な制服、トレーサビリティ)を追加する、サービスには1)無形性、2)不可分性、3)変動性、4)消滅性という特徴があるので(p53)

・コモディティ(普及が進み、差別化が困難になった製品)は、新製品を生み出しても、その製品が企業の想定した消費者に簡単に届かなくなった(p54)

・他社の競合商品との違いを説明できて、マーケティング2.0の段階になる(p57)

・顧客に究極の経験を提供させるため、娯楽性(Entertainment)、美的要素(Esthetic)、非日常性(Escape)、教育的要素(Education)の「4E」が必要である(p61)

・マーケティング3.0では、感情に訴えるようなマーケティングを、精神に訴えるようなマーケティングによって補完する。この段階にある企業は、利益(profit)、人的サービスの質(People)、地球(Planet)「3P」のために働く(p64)

・マーケティング3.0の、価値主導マーケティングをもたらしたのが、インターネットであるが、まさにテクノロジーそのもの、デジタル革命に焦点を当てたものが「マーケティング4.0」であり、オンラインとオフラインが出会ったということ、ブランド確立のためのスタイルと実体の組み合わせ、IoT(センサーデバイスなどのモノが情報交換することで相互制御する仕組み)による機械と人の間のネットワークの組み合わせ=評価サイトで評判やスコアを見ることができる(p77)


・製品購入時に顧客がたどる「5A」とは、気づき(Awareness)、魅了(Appeal)、尋ね・求め(Ask)、行動(Act)、推奨表明(Advocacy)から構成され、AIDA(関心、興味、欲求、行動、Attention/Interest/Desire/Action)にとって代わるもの、前半は従来型、後半はデジタルマーケティングである(p79、242)

・マーケティング4.0が注目すべき消費者のセグメントは、世代・ジェンダー・メディア特性に注目する。ミレニアル世代(1980-2005生まれ)、女性、ネチズン(p87)

・企業が生き残っていくために求められる特質は、レジリエンス(損失から復元するための能力)、アジリティ(変化対応能力)(p95)

・高品質の製品を提供することで地位を築いてきた企業は、廉価で性能の劣る技術に対して経営資源を投入することを躊躇するが、こうして鉄鋼大手はスクラップから鉄鋼をつくる電炉メーカの浸食をうけた、この破壊的技術が廉価のまま品質を向上させたとき、鉄鋼大手にはとるべき策はなかった(p115)

・大学という存在自体が、オンライン講義などの新しい学習システムによって淘汰の波に直面している。個人がそうした変化に追いつくには、生涯学習者になるほかない(p116)

・じつは、仕事の多くが「人を遊ばせないでおくための無意味なもの」であることを忘れてはいけない(p117)

・日本では企業家精神を育てるため、教育方法を「記憶を教える」ことから、「思考を教える」ことに変えなければならない(p120)

・今後、主要都市は、中世欧州の都市国家のような位置づけになり、国家を引っ張っていくような力を発揮するだろう(p128)

・世界に都市が24万以上存在していて、そのトップ100が、世界のGDPの37%を占め、人口1000万人以上の都市が36ある。トップ600が、人口20%、34兆ドル(全体の半分)を占めている(p130)

・グローバルな都市で、中間層が成長したのは、多国籍企業の存在が理由である。政府は市民の貧困は和らげられるが、中間層を成長させられるのは他国籍企業のみ、富の源泉は都市に存在するが、本当の主権者は多国籍企業(p135)

・いまアメリカで起きているのはダウンタウンの復活、デトロイトの不動産(高層ビル)に積極的に投資しているのは、シンガポール(p139)

・アメリカでは政策は、巨大な多国籍企業・1%の富裕層によって決められる(p156)最低賃金に加えて、重くのしかかるのは、学生たちの借金。学資ローン残額は1兆ドル、4000万人のアメリカ人が借りている(p162)

・アメリカ企業がシェアホルダー志向であれば、日本は逆にステークホルダー志向といえる(p182)

・世界中の創業200年を超える企業の半数弱が日本に存在している(p187)

・いまや3Dプリンタの登場により、職人芸にまで達する熟練工の仕事すら、代替え可能となった(p212)

・自動化によって職が消えていくことは、これからますます社会では、起業の重要性が高まっていく、将来性のある技術は、IoT、先進的ロボティックス、自動走行自動車、次世代遺伝子技術、再生可能エネルギー(p213)

2017年5月21日作成

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ビジネス
感想投稿日 : 2017年5月21日
読了日 : 2017年5月21日
本棚登録日 : 2017年5月11日

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