トヨタ・ショック

  • 講談社 (2009年2月21日発売)
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昨年11月頃から自動車メーカの収益が非常に悪くなり、何度かの修正があった後に、とうとうトヨタは営業赤字となってしまいました。ショックなのは、2008年前期は、2兆2700億円の黒字(p123)だったことです!

手元資金を10兆円以上も保有して堅実経営をしていたトヨタがなぜ円高、サブプライム問題があったにせよ、一気に赤字にまで転落してしまったのかが腑に落ちませんでした。この本を読んでも完全にはわかったとは思えませんでしたが、トヨタ自身が北米ビジネスにいかに頼っていたのかがわかりました。

利益の源泉だった北米がおかしくなったら利益が出なくなるのは当たり前ですね、ただ、この数年間は史上最高益を更新し続けていたこともあって、いつのまにか利益を追うことばかりに夢中になっていたようです。これから長いトンネルに入ることでしょう、トンネルを抜けると別世界になっているかもしれませんが、自動車業界の業績が深く影響する業界に身をおいているものとして、悔いのない社会人生活を送って生きたいです。

以下は気になったポイントです。

・2008年11月6日のトヨタショックから、わずか1ヵ月半で7500億円マイナスとなった要因解析:原価改善とコスト削減で+1300、為替変動で2000(対ドル1円で400、ユーロでは60億円の減少)、販売減少で5700、金利スワップ評価で1100億円マイナス、合計でマイナス7500億円(p20)

・グローバルマスタープラン(グロマス)、その後に導入されたGPM(グローバル・プロフィット・マネジメント)によって、ボトムアップからトップダウンの会社となった(p37)

・テキサス州のタンドラ専用工場が、トヨタ経営を苦しめる元凶となる、国内元町工場ラインでは6車種の混流生産かのうだが、専用工場は柔軟性なし、なので2008年8月から3ヶ月間操業停止することに(p39)

・北米向けの輸出車部品を作っているところは、6割から7割減(p66)

・80年代まではトヨタ社員が直接下請け会社に出向いて、ノウハウを教えて検討したうえでコストダウンの努力をしていたが、今回は頭ごなしに押し付けられた(p78)

・2008年12月の国内での生産台数は、25%減少の24.5万台、世界各地の製造拠点も25%減少した(p92)

・カムリを生産(昨年まで50万台)するケンタッキー工場では、昨年半ばから25日間という異例の操業停止、インディアナ工場・テキサス工場(タンドラ、セコイヤ)も同様(p115)

・トヨタはアメリカでの収益競争において、小型車・ハイブリッドではなく、大型ピックアップトラックやSUV(タンドラ,セコイヤ)で挑んだ(p129)

・英国は2008年に気候変動法2008という法律までつくって、厳しい削減義務を課したのは、排出権取引における主導権を確保するため(p138)

・トヨタの自動車ローンは、2008年3月末で12.2兆円の貸出債権がある、自動車ローンと住宅ローンが連携する米国では、不良債権化が強い(p146)

・2009年1月の国内生産は、前年比4割減の約20万台、2・3月は11日間の臨時操業停止日を設けるので、15万台となる(p154)

・各国自動車工業会の調べでは、2009年販売予想は、日本がマイナス5%、北米がマイナス21%、その他が10~15%、全体で15%(p157)

・奥田、張、渡辺体制で、トヨタが成長のアクセルを踏むことができたのは、円安(110円台)・金融(ゼロ金利、リース)の恩恵である、トヨタの想定為替水準は105円、限界利益率は20%なので、20%近い円高にお手上げ(p175)

・ トヨタはGMに対して技術力は上でも、傘下のローン会社に資金を提供して、自らの負債で販売台数を増やすというビジネスモデルはGMと同じであった(p182)

・CSMが2008年4Qに発表したデータによれば、2007年にくらべて2014年に生産台数が拡大していると予想されるのは、世界51カ国中38ヶ国、減少は13ヶ国、アメリカは07年1054→783(09)後に、2011年に回復、日本は08、09減少(大底)、2014年に回復、欧州では2014年においても減少、2倍以上はインド、インドネシア、ルーマニア等、中国も80%増加(p199)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 自動車
感想投稿日 : 2012年8月21日
読了日 : 2009年3月15日
本棚登録日 : 2012年8月21日

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