教養としての仏教入門 身近な17キーワードから学ぶ (幻冬舎新書)

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  • 幻冬舎 (2016年9月30日発売)
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感想 : 10
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仏教の基本原理についても書かれていますが、この本を読んで良かったと感じたのは、仏教をほかの宗教(キリスト・イスラム教)との比較を意識して書かれている点です。

この本の筆者である中村氏は、宗教についてしっかりと研究した方の様で、仏教の特色がよくわかりました。

この本で、如来・菩薩・明王の違いが分かりました、仏像に怖そうにしているのと、柔和な顔をしているのも、仏さまの種類が違うし、怖い顔をしている訳(明王は、我々の煩悩を威嚇している)もわかってよかったです。

以下は気になったポイントです。

・日本には伝統的に様々な習い事が多いが、師匠について少しずつ習熟していくシステムであり、どこか精神修養的な側面を持っている。起源を辿ると、禅宗などの仏教修行の伝統が影響を与えている、西洋と異なり何か一つだけ凄い事をやったらOKというわけではない(p42)

・仏教修行はコンピュータゲームと異なって点数化された格闘技サバイバル能力をため込むものではない(p43)

・四諦とは、釈迦の人生の診察を要約的に示した標語である、苦諦(病気の認定)、集諦(病因の特定)、滅諦(治療の目標)、道諦(治療の計画:処方箋を書く)、処方箋とは、八正道という具体的な修行のメニューである、四法印として、諸行無常・諸法無我・一切皆苦・涅槃寂静がある(p46、156)

・仏教では、六道輪廻といって、生まれ変わった先の生の状態を6つのカテゴリーに分けている、地獄・飢餓・畜生(欲望ばかりの境遇)・阿修羅(闘争心にさいなまされる境遇)・人界(ふつう)・天界(神のような境遇)(p52)

・「ほとけたち」は、如来・菩薩・明王・天、の4つに分けられる、如来は知恵と慈悲を無限にもち神通力がある、菩薩は面倒見の良い先輩、有名な如来は、釈迦(法隆寺)・薬師(薬師寺)・毘盧遮那(東大寺)・大日(東寺)阿弥陀(本願寺)がある、明王は呪文のパワーが人の姿をとって現れていて基本的に怖い顔をしている、我々の煩悩を威嚇しているから(p63、67)

・八正道とは、思想的指針(正見:四諦を忘れない、正思:怒り・害する思想に走らない)、生活上の指針(正語:正しい言葉使い、正業、正命:適切な衣食住)、瞑想上の指針(正精進、正念:心身の現象をチェック、正定:欲望を離れるための瞑想)(p86)

・六波羅蜜とは、布施(与え方)、持戒(戒の保ち方)、忍辱(辛抱の仕方)、精進(努力の仕方)、禅定(瞑想の仕方)、般若(智慧)波羅蜜(究極の智慧)である(p101)

・他力本願とは、阿弥陀ブッタのような他者の救済力を借りて、悟りを行うこと。他人に甘えて何もしないことではない(p111)

・般若心経は、禅宗・天台宗・真言宗、浄土宗や浄土真宗は、阿弥陀経・無量寿経等、阿弥陀仏について書いたお経、日蓮宗は法華経を読む(p134)

・日本の神々は仏教システムの中に位置づけられた、ブッダや菩薩が化身となって日本の神になっているという思想も広まった。アマテラスの本体は大日如来、八幡神の本体は阿弥陀など(p139)

・日本仏教の宗派として、1)密教:真言宗、天台宗、2)禅宗:臨済宗・曹洞宗・黄檗宗(おうばく)、3)阿弥陀信仰:浄土宗、浄土真宗、融通念仏宗、時宗、4)法華経信仰:天台宗、日蓮宗(p177)

・空海は804年の遣唐使として中国にわたり、密教第七祖とされる、恵果から3か月で密教の正統的後継者として認定された、帰国後、京都の東寺を天皇から賜り、高野山金剛峰寺に真言宗を始めた(p178)

・天台僧の栄西は、鎌倉幕府の庇護のもと、臨済宗をひらいた、京都の建仁寺、鎌倉の寿福寺などは栄西の創建した寺(p179)

・ユダヤ、キリスト、イスラム教の「神」は、理論的には同一の神である(p193)

・復活した救世主のことを、ユダヤ人の言葉では「メシア」、当時の国際語であるギリシア語では「クリストス」、日本語読みしたのが、キリストである(p201)

・イスラム教誕生のころは、各部族が部族の神を信じていて、差別的なものも多かった。経済格差も大きくなっており、問題が起きていた、そうした神々を超越した、唯一絶対なる神の視点で社会システムを一新したのが、イスラムであった(p207)

・カトリックは、聖書のみならず聖書を編纂した教会の伝承も重んじた、プロテスタントは聖書のみ(p209)

2017年4月9日作成

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 社会・生活・労働
感想投稿日 : 2017年4月9日
読了日 : 2017年4月9日
本棚登録日 : 2017年4月5日

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