嘘だらけの日中近現代史 (扶桑社新書)

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  • 扶桑社 (2013年6月1日発売)
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倉山氏によって書かれた「嘘だらけの歴史シリーズ」の一冊で、私にとっては、米国・英国・露国についで四冊目の本となります。

歴史というものは、勝者(現在の政権を握っている人々)が後世に伝えようとして作るものであることを理解している私にとって、タイトル自体にはそれほど驚きませんが、普通の歴史教育しか受けてきていない私にとっては、著者の倉山氏の指摘するような「嘘だらけの」知識しかないのだと認識しています。

倉山氏の書かれていることは、十分な調査によるものだと私は思っておりますので、このたびのこの本で、中国との日本の関係について勉強したく思いました。

以下は気になったポイントです。

・欧州がペルシア人と戦争をするたびに大敗しているのに、たまに勝つとすべてであったかのように記述する、ペロポネス戦争・アレクサンダー大王・ローマの五賢帝の3つだけ並べると、白人はアジア人より優れていたような錯覚になる(p19)

・皇帝は辞典の編集を行った、とあるがあれは本当に言葉を変えている。北京をペキンを読むのは明の時代、文字や発音を標準語として統一することは、偉大な権力者の証(p20)

・科挙の試験に合格すると、言語オペレータになれる、発音が難しいうえに、方言がひどいので文字でやりとりするしかコミュニケーションの方法がない(p23)

・史実の三国時代は、人口の9割が減少、純粋な漢民族はこのときに消滅したと言われる(p41)

・三国時代を統一したのは、魏を乗っ取って建国した「晋」である、安定できなかったので、洛陽から建康(南京)に遷都した、316年までを西晋、以後を東晋というが、北方を放棄して南方に逃げた(p49)

・ユーラシア大陸を席巻したモンゴル帝国が中国を侵略して成立した国が「元」である、モンゴル帝国の一部にされてしまった時代の中国の名前が「元」である(p53)
・元が日本に敗れて以降、元の支配力は弱まる。末法仏教を信じる秘密結社だった白蓮教徒が紅巾の乱を起こすと、モンゴル人たちは草原に帰っていった。この支配地を「北元」という。そして、中国を中国人が統治した、後漢以来、1000年振り(p54)

・欧州の大国が世界の大国になるのは18世紀、1756年からの7年戦争(フレンチ・インディアン戦争)は事実上の世界大戦であった、世界中の海で、イギリスとフランスが戦っている(p66)

・形式的には、1441年に琉球は、時の室町幕府将軍・足方義教によって島津氏の所有になっている(p76)

・当時知られていなかった事情として、14箇条の要求、と、7箇条の希望、は最後通牒の形で突き付けられた。これは袁世凱が日本の外務省に、受け入れるために国内世論を納得させるのに協力してほしいと頼んできた(p114)

・腐敗した政党内閣、デフレ不況に無策な大蔵省、日本人が拉致されても日中友好で何もしない外務省、関東軍が事変を断行したことは、閉塞感を打破するかのように国民世論は感じた(p149)

・関東軍は、満州というフランスとドイツを合わせたような領域で、30万とも50万とも言われる張学良軍を、一個師団:1万五千人で撃破し制圧した、現に全戦全勝であった(p163)

・満州国は日本がでっちあげた傀儡国家だというなら、アメリカは21世紀になってから、アフガニスタンやイラクで同じことをやっている、ロシアもグルジアからアブハジアを切り離して、独立国を名乗らせている。バングラデシュは、インドがパキスタンから独立させた国(p177)

・日本はアメリカと異なって、台湾、朝鮮、満州に、エリートを送り込んだ。桂太郎、明石元次郎、後藤新平、朝鮮総督は総理大臣修行ポストという位置づけであった(p181)

・満州国は、当時の世界60か国のうち、21か国が国家承認をした(p183)

・日本は対米戦の最中も、陸軍の主力は満州と中国大陸、ソ連を警戒しつつ、中国に張り付け、アメリカと戦っていた。この過程で、東南アジアのイギリス軍は壊滅した(p211)

・スターリンは、ソ連軍の将校(一説には中佐)だった朝鮮人の金日成を連れてきて、強制的に独裁者にした(p229)

2019年9月16日作成

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 中国・中国語
感想投稿日 : 2017年1月1日
読了日 : 2019年9月16日
本棚登録日 : 2016年5月4日

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