二十世紀旗手 (新潮文庫)

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感想 : 69
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端的に言って、太宰にとっては入口のみの、読者にとっては出口のみの短編作品集。太宰の狂乱の様を顕すように、ほとんどの作品が、文章と呼べるかすら疑問なほどのじゃじゃ馬である。内々の空間四方に、あらん限り苦悩を叩きつけたばかりのものであって、現代のカテゴリとしては明らかに小説ではない。奇を衒おうという試みは散見できるが、筆が伴わない。私小説の体が備わるまでの過渡作品群と言ってもいい気がする。ところが、百行のうちに一行の珠が隠れているから油断が出来ない。「HUMAN LOST」はその向きがベクトルとして機能し始めている(と私は思う)。非常に難しい一冊。だが、「人間・太宰治」を識るには恰好の作品集なのかもしれない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2013年1月17日
読了日 : 2013年1月17日
本棚登録日 : 2013年1月17日

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