最悪 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2002年9月13日発売)
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感想 : 749
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川谷鉄工所の社長、川谷信次郎と銀行員の藤崎みどり、パチンコとカツアゲで生活するチンピラの野村和也。普通に生活を送っていれば 全く接点のない三人が、それぞれにこんなはずじゃなかったというような運命を辿っていき予期せぬ事件から思いがけなく遭遇する。
  
 最近の犯罪小説や映画は、まず始めに事件ありきなのに対し、この作品の前半は登場する三人の普段の生活が代わる代わる描かれているだけである。しかしそのことにより登場人物一人一人に焦点を当てることになり、結果として後半部分をますます引き立てている。
確かに新聞に載らないような小さな事件というのは、些細な気持ちの変化や一瞬の感情の爆発によって起きるのかもしれない。
 最初に人物ありきで始まるからこそ、事件前後の心の変化がとてもリアルに描写されており、その心の変化を読み取ることができるのが非常に面白い。これこそが人の内面に視点を当てた奥田英朗作品の醍醐味なのであろう。 
 大好きな奥田英朗作品七作品目読了。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2014年5月31日
読了日 : 2014年5月31日
本棚登録日 : 2014年5月1日

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