阿寒に果つ (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2000年4月6日発売)
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本棚登録 : 219
感想 : 29
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 渡辺淳一は「失楽園」以外、読んだことないんだけど、これはツイ友が読んでたのと、「真面目な医者が官能小説家になったきっかけ」になった実話、ということで、読んでみた。
 14歳でデビューした天才少女画家が作者本人を含めた5人の男を手玉に取って同時進行の恋愛(?)をした末に18歳で阿寒の雪原で凍死自殺するっていう話です。姉との同性愛に近いものもあったので、それがポイントかと思ったけど、そうでもない。
 ナルシシズムが嵩じて、本当は誰も好きになれなかった、死ぬ時も、「生きていた時よりも美しく、華麗に」と願った末の凍死、っていう話。うーん、そんなに「自己愛」に溺れる人ってホントにいるんだろうか?僕にはそれよりも、厳格な父親と繋がれなかったから寄りかかれる存在が得られなかった、っていう「人間(男性)不信」の結果のように思えます。だから、自殺したからという訳じゃなくて、読んでて「可哀想」と思ったりもしました。
 小説としての感想は、「うーん、微妙」かな。でも、やっぱり実話(もちろん脚色はあるだろうけど)に基づいてるだけに、この女性が何を考えてこういう行動を取ったのかってのを「推理」することには意味があります。
 多分読み手が男性か女性かによって全く感想が違う小説だと思います。そういう点ではやっぱり優れてるんだろうなとも思ったり。1970年代前半のベストセラーだったのもむべなるかな。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2014年7月24日
読了日 : 2014年7月21日
本棚登録日 : 2014年7月24日

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