東大法学部 (新潮新書)

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  • 新潮社 (2005年12月15日発売)
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 東大法学部は、近代国家を形成する上でとても重要な役割を果たした。明治時代、日本は西欧列強に伍していくため、法律が整備された法治国家を早急に構築する必要があった。その法律を作る人材を供給する機関として東大法学部は創設された。いまでも霞が関において、東大法学部卒の人間が大きな力を持っているルーツはここにある。
 しっかりとした制度がまだない真っ白な状態で、制度を作っていくことが必要だった時代は、そういう能力を持った官僚がすさまじい権力を握っていた。しかし、ある程度制度が完成し、先進国の仲間入りを達成した頃には、当初作られた制度は時代に合わなくなってきており、新しく制度を作り直さなければならなかった。しかし官僚は、一度作った制度を消すことはできない。なぜなら、既存の制度によって既得権を得ている集団があるからである。そこで制度を作り直すことができる政治家に、徐々に権力が移っていった。
 現在の東大法学部において、もはや官僚は人気の進路ではなくなっている。東大法学部生たちは人材としての「代替不可能性」を求めて、弁護士になったり、外資系企業に就職したりする道を選んでいる。このような進路を選ぶ学生たちに、国立大学に国費を投入するというかたちで援助する必要があるのだろうか。もはやその必要性は薄く、私立大学と区別なく補助金を使うか、学生個人に補助金を出すべきだろう。
 真のエリートには、「公共の精神」「総合的な知力」「問題解決力」などが求められる。そのようなエリートを育成するためには、現在のような東大を頂点とするピラミッド型ではなく、多様性を持つ構造にしなければならない。
 この本は簡単にいってしまえば「東大法学部批判」の本である。かなり前に購入して読み始めたが、当時は全く興味がわかず放置した本であり、最近部屋の整理をしていたらたまたま見つけたので、読んでみるとすらすら読み終えてしまった。この3年間ほどで少しは成長したのかもしれない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 公務員
感想投稿日 : 2011年3月7日
読了日 : 2011年3月7日
本棚登録日 : 2011年3月7日

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