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悪魔のパス 天使のゴール

村上 龍

/ 幻冬舎 / 2002年05月02日 発売



本書はフィクション小説という事らしく、ちょっとしたミステリー風ストーリーが全体を通して展開されるがそれはおまけである。本書の半分は南仏やキューバと言ったリゾート地の旅行記と、それらで楽しめる現地料理ルポがメインである。恐らくこれらは著者の個人的体験から書かれているらしく、非常に精緻で興味は無くともいつかはキューバに行ってみたくなるほどだ。
そして、残りの半分はサッカー試合の描写である。特に後半4分の1の最終戦は実名を伴った往年の名選手の活躍を存分に楽しめる。帯で元日本代表の中田英寿も書いているが活字で楽しむサッカーというのも中々楽しいという事を発見した。ちなみに本書の主人公である夜羽(ヤハネ)選手は完全に中田英寿をモデルとして描かれているのも、サッカーファンとしてはニヤリとしてしまうところだ。
著者の小説が好きで本書を読もうか悩んでいる人は二つ注意すべきである。一つはサッカー(特に欧州サッカー)が好きか?もう一つは海外旅行が好きか?両方を満たす人は本書を楽しめるだろう。ただし、あくまでも小説的な要素はおまけでミステリー風ストーリーに至っては刺身のツマぐらいに考えておくことが必要だ。


2012年05月16日 | コメント(0) | 小説 | 読み終わった (2012年05月16日) |



中華人民共和国、すなわち中国共産党による少数民族弾圧問題といえばたいていの日本人はチベットの事が頭に浮かぶだろう。チベット問題も深刻ではあるが、それと同じもしくはそれ以上に新疆問題も深刻な状況に置かれている事はあまり日本では知られていない。少なくとも欧米諸国に比べて新疆問題に対する認識は非常に薄く、したがって問題への対応努力は殆どなされていなのが実情だろう。
本書は著者のフィールドワークや、新疆関係者への地道なインタビューに沿ってまとめられた新疆問題の俯瞰地図である。少しでも新疆問題に関心はあるが、あまり学術的ではなくとっつきやすい問題の解説本を求めているのであれば本書はかなりオススメの一冊である。
前述のようにそもそも日本では新疆問題に関する情報が少なく、こういった書籍を地道に当たっていく以外に問題の内実を知るすべがない。こういった問題を解決に導くには問題に対する認識が広く普及する事が欠かせないので本書のような本が増える事を願うばかりである。
本書を読んで共産党の民族問題に対する対処は益々よろしくないと思うばかりである。9.11テロの後、イスラム過激派が主導したということを共産党は「わざと」誤解して々イスラム教徒であるウイグル人をテロリスト呼ばわりしてきた。テロ当時、日本のメディアもこぞってイスラム過激派が全てテロリストであるかのように報道し、共産党よろしくイスラム社会への悪影響を担う一端となっていた事が記憶に新しい。そもそもウイグル問題もまともに扱えない日本のメディアがイスラム社会への論評を展開する事は馬鹿げているようにしか思えない。
イスラム教徒自体は全世界で10億人を超えていると推定されており、決してマイノリティとは言えない。しかしながらイスラム圏に属する民族はキリスト教系民族と異なり、文化や国家背景が異なる少数民族に分担されてしまっている経緯もあるせいで結果として「イスラム少数民族」というカテゴリが発生しやすいのだと思う。
少数民族問題(特に中国共産党の)やイスラム問題に興味のある人は是非一読を進めたい書籍である。


2012年05月12日 | コメント(0) | 政治 | 読み終わった (2012年05月11日) |

ライアーズ・ポーカー (ウィザードブックシリーズ)

マイケル・ルイス

/ パンローリング / 2005年12月17日 発売



この手の本、いわゆる投資銀行関係の本は大体において面白く読める印象がある。投資銀行を扱った本は良くも悪くも極端なので、殆ど小説のような感覚で楽しめる事が一因だろう。もちろん、本書はノンフィクションではあるが。
投資銀行を舞台に語られる「物語」は何もかもが極端だ、事業資金が図抜けていたり(一社員が数億ドルをぽんぽん動かす業態なんて他にあるのだろうか)、描かれる感情が突き抜けていたり(麻雀で2万円負けるだけで惨憺たる気分になるのに、2億ドルも吹き飛んだ時の感情など想像がつかない)、もちろん登場人物は全てが個性的だ(本書においては「人間ピラニア」がお気に入り)。
だがこれらはいずれも事実なのだ、こういう本を読むと「事実は小説よりも奇なり」とはよく言ったものだとつくづく思う。
極端な人々が極端な事業を行って極端な感情表現をする投資銀行というところは、さぞかし摩訶不思議なジャングルで一度入ったら2度と出てこれず命を落としてしまうのかと言うとそういう事でもない。(もちろん不幸にもそうなってしまった人々もいるだろうが)。本著者のマイケルルイスを始め、どことなく飄々としているというか、極端な損や得を出して狂乱しているのに何となく冷めた空気を感じる。
投資銀行勤務経験が無い者にとってこの空気の正体は分かりようが無いのだが、一言で言うと「どんなにヘマしたって死にはしない」という感覚に近いものなのかと推測している。
生活におけるどんな状況でも血の気が引く場面はあり、仕事の上でもそういう場面を完全に避ける事は難しいだろう。
とんでもないヘマをやらかした時にはまるで人生が終わってしまったかのよに感じるし、実際に人生を終わらせてしまう人がいるのも事実だ。しかし少し考えてみると、どれほどのヘマをしたとしても死に直結するような事は殆どないだろう。工事現場や工場で働く人には充分に注意して欲しいと思うけども。
投資銀行物語の大半にそういった諸行無常というか、なるようになる、と言った小気味よい開き直りの精神が感じられる。そして恐らくそういう感覚を持ってる人間でないとまともに勤まらないのでは無いのかとも思える。
本書からはそういった小気味よい開き直りと著者の皮肉がたっぷり詰まった業界感を存分に楽しめる。そういう業界に興味がある人にとって読んでおいて損は無い一冊だろう。


2012年05月02日 | コメント(0) | エッセイ | 読み終わった (2012年05月02日) |

グーグル秘録

ケン・オーレッタ 土方 奈美

/ 文藝春秋 / 2010年05月14日 発売



Googleの誕生から成長と、その周りを取り巻く状況について詳細に書かれた一冊。技術的な側面よりも業界話やビジネス面における記述が大部分を占めるのが特徴的。
著者のGoogle社内外それぞれ100回を超えるインタビューに加え、しっかりとした調査によってかなり綿密でボリュームのある一冊に仕上がっている。500ページ超とサラっと読むには少し困難だが(なので評価をひとつ下げた)インターネット市場最も成功を収めた会社は一体何をして何を変えたのかについて理解するのに十分なボリュームがある。
著者本人がジャーナリストという事もあってか、Googleとメディア企業とのやり取りについてはかなり読み応えのある内容であり、今後のメディアに行く末について著者からの示唆もふんだんに散りばめられている。
Googleだけでなく昨今のネットを取り巻くメディア論について興味が有る人は読んでおいて損の無い一冊だろう。


2012年04月13日 | コメント(0) | ビジネス | 読み終わった (2012年04月14日) |

サッカー戦術クロニクルII

西部謙司

/ カンゼン / 2009年09月02日 発売



サッカーを戦術的に観戦する視点を高める一貫として本書に興味を持った。結果としてその考えは完全には満たされなかった。本書は現代戦術についてメインには取り扱っておらず、むしろ過去の戦術(1972年西ドイツ等)から現在の戦術(ガスペリーニのジェノア等)に至るまでの歴史書という扱いが妥当である。もちろん、これはこれで面白い。
基本的にサッカーというスポーツは他のスポーツに比べると「戦術」という概念が幼稚であると言われる。たしかにその通りだとは思うが、だからこその面白さがある。戦術が革新、変化されるタイミングというのは殆どの場合が「既存の戦術が破壊された時」であり、その破壊される様と新たな戦術が創造される様子は観戦者にとって大きな楽しみであるといえる。
しかしながらサッカーの戦術というのは理解するのが難しい。個人的な間隔として難しいというより「認識しづらい」という方がしっくりと来る。これはサッカーが野球等と異なり攻守が明確に別れておらず流動的に攻守が入れ替わる事が大きく関係しているだろう。守っている時も攻める場合を想定したり、逆もある。もちろん、守ってる時はある程度あきらめて攻撃に全精力を傾けるチームも有るなど様々だが、素人(玄人もか?)が試合観戦を通じてチームの戦術をしっかりと理解するのは難しい。だからこそサッカー観戦後の議論というのは大いに盛り上がるものだと思う。
さて本書は次回の日本代表戦を見る上での戦術理解に役立つかというとそうでもない。歴史書を読めば直近の政策立案に役立つわけではないように即効性のある内容ではない。しかしながらこれからサッカーの戦術理解を深めていく上で「過去に何があったのか」という事を知っておくのは有意義だと言えるであろう。実際に1972年の西ドイツの戦術は読んでるだけでワクワクするような内容だ。この考えの本質自体は現代戦術、例えばいまのバルセロナなどにも受け継がれていることが見て取れる。
サッカーをより深い理解で持って観戦する事を希望するならば一度は読んで置いて損は無い本だろう。ただ、戦術本なので図解による説明やケーススタディをもう少し盛り込んでも良かったのではと思うところがちょっと残念な点だ。


2012年03月25日 | コメント(0) | スポーツ | 読み終わった (2012年03月25日) |

殉教の中国イスラム―神秘主義教団ジャフリーヤの歴史

張 承志 梅村 坦 Zhang Chengzhi

/ 亜紀書房 / 1993年10月 発売



中国のイスラムというと回教の事をさすが、本家イスラムよろしく中国回教にも様々な教派が存在する。(一時期ニュースでもスンニ派とかシーア派等の単語が飛び交っていましたね)本書は中国回教の中でもスーフィズムというイスラム神秘主義を信条とするジャフリーヤ派に焦点を当てた一冊である。
まず全体を通してその情報量と調査内容に圧倒される。そもそもジャフリーヤ派の詳しい史実は調査が難しく、本家中国の回民にもあまり知られてない事もある。その中でこれだけの歴史と宗教的知識をまとめた著者と編訳者には並大抵でない努力があった事だろう。
さて、内容が内容なので興味を持つ対象は限られる・・・と思いきや本書は中国回教というマイノリティのさらにマイノリティであるジャフリーヤ派という一教派を取り扱っているにも関わらず近代中国史における重要な示唆を数多く盛り込んでいる。この事は編訳者もあとがきで指摘している。
昨今でも共産党政府によるチベット族に対する政策をはじめ、中国内宗教政策に関する多くの問題が起きているのは周知の事実だ。だが中国における宗教政策、もっと行ってしまえば少数民族に対する政策問題は昨日今日に限った話ではなく非常に根が深い問題だ。本書はジャフリーヤという題材を掲げつつ中国政府が歴史的に抱える宗教政策、果ては民族政策上の問題を浮き彫りにしている。
チベット族の問題等をきっかけに「チベット族以前の中国における宗教・民族問題」を知るうえで本書は有用であろう、また同時に回教ジャフリーヤ派における歴史や伝承を知るのにも当然有用である。
イスラム系そのものに言える事だが、イスラムの歴史は非常に(言い方が適切かは分からないが)ドラマティックなモノが多く感じる。本書においても馬化龍によるアタイトゥの件は宗教意識を抜きにして感動的だと思える内容である。
ジャフリーヤはスーフィズムという特性上、タリーカ等の秘密主義的な謎に満ちている部分がある。同時にシャリーアを批判する姿勢から非常に厳しい信仰を要する部分がある。その神髄は信仰を通して自己を高め、イスラムの神でるアッラーっと一体化するというヨガや仏教系密教等にも通じる壮大な思想を描くところに強い神秘性を感じる。
イスラム、中国近代史、民族政策等のキーワードに合致する人は読んでみて損は無い一冊だろう。


2012年03月15日 | コメント(0) | 宗教 | 読み終わった (2012年03月15日) |



今をときめくフェイスブック変遷についてのストーリー。
「フェイスブックって何?でも知らないと乗り遅れそう・・・」とか「使った事は無いけど、流行っているというフェイスブックを勉強しなければ!」等と思っている人は本書を読む必要はありません。今すぐにfacebook.comにアクセスしてメールアドレスを登録し、プロフィールを充実させ、写真をアップロードし、firmvilleでも始めた方がよっぽどfacebookを知ることができます。
では本書はどのような点にフォーカスされているかというと、「フェイスブックはどのように成長(サービス面、資金面)してきたのか?」とか「一体どのような人たちがフェイスブックにかかわっているのか?」という面で詳細に記述されている印象を受けます。サービスそのものがどうのこうのというよりも、ビジネス面と「人」にフォーカスしているという事です。フェイスブックを支える技術的な部分もそこまで突っ込んで書かれてはいないですね。
なんにせよ500ページ近いボリュームもあるので、インタビューの内容やフェイスブックの中の人々(特にCEOであるザッカーバーグ)が何を考えているか、という点はよく調査されています。ただ、これらを知って何の役にたつかは分かりませんが、今や世界で一番成長しているサイトの裏側を知る事はそれなりに刺激的です。
当然、映画「ソーシャルネットワーク」で取り上げられていた部分の描写もありますが、前半80ページくらいまででそこまでフォーカスしている感じではありません。映画で主題であったザッカーバーグの内面性や人間関係への興味の延長として本書を読むのはお勧めできないでしょう。個人的にはVCやショーンパーカーのやり取り等をはじめとした資金調達に関する記述が面白かったです。


2012年03月05日 | コメント(0) | ビジネス | 読み終わった (2012年03月05日) |

貝と羊の中国人 (新潮新書)

加藤 徹

/ 新潮社 / 2006年06月16日 発売



本書から得た内容から判断して歴史としてカテゴライズした。
自分としては基本的に「国民性」という概念に少々懐疑的な気持ちを持っている。間違いなく多様性が増して来ている最近の世界において、特定の民族に「このような特徴がある」と単一的に論じる事はできないと考えているからだ。この考えはある程度正しいと思われるが、逆の考えが成り立つ訳でもない。そういった中で民族を理解する上で歴史から学ぶ事は非常に重要な事となってくる。
著者は中国文化、とりわけ演芸が主な研究らしいが中国の歴史についてかなり詳しくまとめられている印象を受けた。また著者独自の解釈が本書の通じてしっかりしているので非常に読みやすい一冊である。中国の歴史を民族や文化等の側面から眺めたい場合に最適の一冊であると言える。
その中でも著者が語る「士大夫支配」という議論については大きく注目した。あまり他で見る事の無い理論ではあるが、言われてみれば納得する内容であり非常に示唆に富んでいる。この考え方は更に詳しく中国史(特に政治)について学ぶ際の一つの方向性として面白いだろう。


2012年02月26日 | コメント(0) | 歴史 | 読み終わった (2012年02月18日) |



昭和末期に生まれ事もあり昭和天皇への印象というのは殆ど存在しなかった。むしろ、昭和天皇崩御よりも小渕総理が平成を発表した事の方が強い印象に残っているくらい。
その後、大東亜戦争周辺の歴史を知るにつれ昭和天皇の印象もできあがってはいくのだが、如何せんあの時代は天皇よりも政治家が目立っていたと思うのでそれらへの印象が強く、昭和天皇の印象はあまり残らなかった。
この本によって昭和天皇の行った「聖断」や「行幸」等の概要が知れた事は非常に有用であった。これらの行為は「天皇とは日本国家にとっていかなる存在であるか?」という疑問に応える為の一つのファクターであると言える。天皇とは一体何なのか?という疑問を持つ人には漫画という体裁上(字数は多めだが)読みやすく、うってつけなのではないかと思う。


2012年02月07日 | コメント(0) | 歴史 | 読み終わった (2012年02月07日) |

日本男児

長友佑都

/ ポプラ社 / 2011年05月25日 発売



軽いながらもFC東京サポーターである私は、長友が指定強化選手に選ばれた2007年時からプレイを見ていた。練習試合でリチェーリをフルボッコしたという前評判通り2008年の正式デビュー時には東京ダービーでいきなり怪物フッキを抑えるなど大活躍。
2009年は石川(ナオ)革命があった年なのだが当の石川ですら代表に縁がなく同僚の長友は元々層が薄かったという事もあってか、あっという間に代表サイドバックに定着する。
気付いたらW杯初戦のカメルーン戦で相手チームの世界的エース、サミュエル・エトーを封殺するという重要ミッションに抜擢されこなしてしまう。
その後のアジア杯では延長戦後半で相手DFをぶっちぎって決勝点のアシスト等と貢献し、かっての強敵(と書いて友と呼ぶ)が在籍する世界的強豪インテルへ移籍する。
相当はしょって書いてはいるが、とんでもないキャリアだと言う事は伝わるかと思う。
しかし、当の本人は本書の中でこれは当然の結果だと言っており、自信の絶え間ない努力と意志の強さだと語っている。
さて、この本に書かれている事で一般人に役立つ事はどれだけあるだろうか。少なくとも私には殆ど役に立つことはなかったです。
彼の努力は控えめに言っても超人的であるだろう事はプレイを見ればある程度予測がつく。メンタリティについてもこれが25歳の考える事なのか・・・と軽く引いてしまうレベルである。しかし、それが普通になっているのだろう。そういう世界でもトップクラスの環境に身を置いて、切磋琢磨する人間はジャンルは違えどそういうオーラをまとうのだと思う。
このオーラをうまく説明するのは難しいが、強いて言えばとんでもない努力をし、毎日大きなプレッシャーと戦っているにも関わらず、なんとなく余裕があって楽観的にすら見える感じだ。しかし、かと言って隙があるわけではない。
彼のようなアスリートだけでなく、経営者にしろ、俳優にしろ
このレベルで成功する人間には共通してこの感覚があるように感じる。
さて、そんな人物の書いた本を読んで一般人に何か得るものなどあるのだろうか?彼の努力や意志を追いかけるのはおそらく限りある人間にしかできないであろう、であればこういう本を読む時間は、自分なりの、別の時間に使った方が有意義かもしれない。
じゃあなぜ私は読んだのか?この選手のファンであれば読んでみたくなるのが心情というものだ。


2011年06月08日 | コメント(0) | エッセイ | 読み終わった (2011年06月08日) |

20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義

ティナ・シーリグ Tina Seelig 高遠 裕子

/ 阪急コミュニケーションズ / 2010年03月10日 発売



ハーバード大名物教授の並び2010年にヒットしたスタンフォード大教授の著作。
一言で感想を述べると「絶対に買い」である。
よくある自己啓発の本、と言ってしまえばそれだけであるが、ならば余計な自己啓発本を10冊読む代わりにこれだけを読んでおけば十分だ。それだけ内容も価値もある一冊である。

最近は本棚も手狭になってきたのでよほどの本で無い限り購入は控え図書館で済ませているのだが、本書は間違いなく購入すべきだと感じた。
何故か?本書は私が繰り返しよむだけだけじゃなく家族や恋人はもちろん、周囲の人(特に自分に近ければ近いほど)是非読んで欲しい一冊だと感じたからだ。
本書で主張している事は非常にシンプルで一貫している。「常識を疑え」ただこれだけだ。その事を著者が実施するスタンフォードでの企業家育成のコース、様々な経験等から事例をピックアップし丁寧に論を進めている。邦題だと20歳(大学生か?)向けに感じるが
高校生、少し賢ければ中学生でも十分に堪能し意味のある一冊となるだろう。無論、購入者の大半を占めるであろう大人にも大きな意味のある一冊である事は言うまでもない。

個人的に興味深いエピソードを一つ挙げる。
ある二人の戦闘機パイロットがいた。片方は先輩から「こういう時どうすれば良いか」というのを1000個も教わっているので何が起きても対処できると考えていた。もう片方のパイロットはたったの三つしか教わっていなかった。ただしそれは「何をやってはいけないか」という事だった。
世の中は不明瞭で常に変化する。大事なのはそのスピードに乗り遅れずに自分自身の適用能力をドンドン加速させる事だ。このパイロットの例ではどちらがそれに合致するかは言うまでもないだろう。
また、あとがきの解説でも触れられているが「私は○○だから一生安心」ということはもはや存在しないだろう。常に変化を感じ挑戦していく事を著者は本書を通して多くの人に訴えかけている。それは「国民皆起業」と言っている訳ではなく、個人レベルでの相違工夫、思考、勉強を怠ってはならないという事だ。

余談だが私は本を読むときまずは全体をざっと読んで付箋を貼り、付箋部分を読み返すようにしている。大体200ページ程度の本だと10枚、多くても20枚ほどなのだが本書は70ページ時点で15枚の付箋が貼られた。これは4〜5ページに一枚つまりほぼ全部である。なので付箋を貼るのはやめ、素直にもう一回読む事にした。本書はそれだけ意味のある言葉が網羅されている本であるという事を書き留めておきたい。


2011年05月16日 | コメント(0) | ビジネス | 読み終わった (2011年05月16日) |



大手広告代理店勤務から一転、WEBコミュニティサイトを実際に運営する筆者の立場からWEBを論じた一冊。タイトルは若干釣り気味ではあるが、筆者が言わんとする方向性には合致している。すなわり某WEB進化論等の集合知的な考え方からは真逆を行く持論を展開している。
個人的な立ち位置、私もWEBに関わる一員としてこの本を読んだ時、多くの共感を得た。なるほど、WEB進化論は良い「理想論」ではあるがずっと引っかかっていた違和感を本書は上手く言い表していると言える。
WEB進化論に代表される集合知や知性の高速道路というネタはWEB上に間違いなく存在するし、それはそれですばらしい事だと感じている。多くのオープンソースやFAQサイトが存在しなかったら、間違いなく私は今の仕事をやっていられなかっただろう。WEBに関わる全ての人は多くの見知らぬ人の叡智に大小あれど間違いなく寄りかかっている。
ただ、反面WEBは下を見ればキリが無い程にバカらしい事ばかりが蠢いている掃き溜めのような場所である事も事実だ。WEBに詳しい(アクセス時間が長い)人であれば人であるほどこれに思い当たる事がたくさんあるだろう。
筆者はこれらの状態を明らかにした上で「ではWEBを上手く活用するにはどうすればいいのか?」という事を自身の経験を生かし十二分に語っている。これらの活用法は大きく共感する所もあり、新たな発見に通じる視点もあり、非常に有用な内容と言えるだろう。筆者の言う「WEBを活用する9つのポイント」は非常にシンプルかつ的確に表現されていると思う。WEBの知識が浅く某進化論あたりを読んで期待ばかりが膨らんでいるWEB担当初心者はもちろん、WEBにどっぷりつかってしまいWEBで起きる馬鹿な日常が普通になってしまっているWEB熟練者にも、双方が目を覚ます様におすすめできる一冊だ。


2011年05月15日 | コメント(0) | ビジネス | 読み終わった (2011年05月15日) |



小説のあらすじはamazon辺りに任せるとして。SF愛好家などのオススメを見ると高い確率で上がっている本作品。その人気ゆえOVAも製作されたほど。個人的には国産SFのバイブルがこれで、海外SFは「星を継ぐもの」なのかなと勝手に勘違いしている。(星を継ぐものは読んでないけど)
勝手な勘違いはさておき愛好家にオススメされ、レビューでも高評価を受けているだけあって非常に面白い。全体的に暗めのトーンが横たわっている感じが心地よい緊張感を生み出しており、細かい設定やトンデモはあまり気にさせずに物語りを十分に楽しめることができる。ただ著者は戦闘機マニアなのか、戦闘機についてはかなり細かい描写が繰り替えされ若干食傷に感じた。後半はその辺りの描写は飛ばして読んでしまっていた。
ネタバレせずに本品の場面や言葉などを賛美するのは非常に難しいのだけど、ブッカー少佐が勲章の件でコンピューターと対話するシーンや、雫が病院に運び込まれるシーンなどはかなり緊張感を持って読むことができる。かなり昔の作品なので取り扱うテーマは特に目新しさは無いといえるが、評判通りにSF好きなら誰もが楽しめる内容であろう。むしろこのような「枯れたテーマ」を扱っているからこそ、SFマニアだけでなくライトな小説好きにも受け入れやすく、評価に繋がっているのかもしれない。
何れにしてもエースコンバットシリーズが好きな人であれば迷うことなく読むべきである。メビウス1は人間であっても、マシン自身であってもロマンにあふれているだろう。


2011年04月21日 | コメント(0) | 小説 | 読み終わった (2011年04月19日) |



凄く大まかに分けると事業会社の起業には二つのパターンがあると思います。一つは自分の生活の糧を稼ぐためにスモールビジネスを営む企業を起こすパターン、もう一つは世界にインパクトを与える事を目指して上場やバイアウトを目指す企業を起こすパターン。本書は完全に後者の目的を持つ人にとって書かれている本です。
じゃあ本書は普通の会社員やスモールビジネスの人が読んでも全く意味がないのか?というと、そういうわけでもありません。本書の前半部分は一般的な会計論や組織論についての実務的な話が分かりやすく語られており、ビジネスマンにとって興味深い内容も数多く見つかるはずです。個人的にはフリーエージェント利用に関する考え方、ネットワーク外部性に対する著者の考察(利用者が利用者を呼ぶ)、事業創造の考え方(類似企業を追いかけて勝てるのか?係数は入手できるのか?一人当たりの売り上げは?など)や会計一般にとって重要な考え方であるDCF法や割引率について、この辺りは興味深く読むことができ、起業というだけでなく新規事業を考えるマネージャーなどにとっても有用だと感じます。
後半部分については資本構成やストックオプションの話が中心になってきますので、前述の通り上場等を目指す人にとっては有用かもしれませんがそうではない人にとってはあまりピンと来ない内容かもしれないと感じました。事実、私も後半部分は流し読みしてしまいました。全く興味がないというわけではなかったのですが、こういう事は現場で必要にせまられる事でしか頭に入らないと思うのですね。
さて、本書全体を通して著者は「日本にはもっとたくさんのスタートアップが必要であり、その環境はかなり整備されてきている。足りないのは圧倒的に人である」という主張をしています。この辺りの論理的根拠の示し方や実例の挙げ方、それを導くロジックは普通に読んでるとただただ納得してしまう限りです。本書をサーっと読んだ多くの人は「俺も企業を考えるか!」と読み終わった当日くらいは思うのではないかと感じています。
私は著者の考え方に共感しております。ただ能力のある人全てが上場企業を目指すCEOになるというのは現実的ではないし、著者もそんな事は考えていないかと思います。願わくば著者の分かりやすい言葉で持って企業ではなく事業の興し方、本書でも所々語られていることですが「事業計画を建てる」という部分の指南が著者から出てくるのであれば是非読んでみたいと感じました。


2011年04月04日 | コメント(0) | 経営学 | 読み終わった (2011年04月04日) |

眠れなくなる宇宙のはなし

佐藤勝彦

/ 宝島社 / 2008年06月21日 発売



自分が小学生の時にこの本に出会っていたらどのように感じたのだろうか。今の年齢になって読んでみて素直な感想は「小学生の時にこういう本を読んでおけば、本気で天文学者を志したのではないか」というところ。まぁ実際にそう上手くはいかないと思うけれども。
本書は天文学として位置づけたが実際にカバーしている範囲は広く、宗教観や歴史観といった部分にも存分に寄り道し、古代からの宇宙論の成り立ちを非常に分かりやすく解説してくれている。
実際に天文学、宇宙を考える場合に宗教や歴史の話、哲学思想等を完全に避けて通るのは難しいと思う。天文学は純粋に科学ではあるが、全てを解明しているわけでも無く、先に挙げた形而上学的な考え方は科学にも強い影響を及ぼしているのが本書によってよく理解できる。
そしてそれこそが学問の面白いところでもある。数学なんかは突き詰めれば完全な形而上学であり、自然科学とは一線を画す学問ではあるが自然科学の王様である物理(宇宙物理学含め)学に欠かす事はできない学問であることを疑う余地はない。
ある程度思想が固まってしまった大人になってからこの手の本を読んでも大きく感動することも無く、ちょっとした雑学にしかならないかもしれない。ぜひ頭の柔らかい小さな子供に読んでみる事を勧める。何しろ宇宙は最初から存在して最後まで明かされない永遠のフロンティアなのだから。


2011年03月21日 | コメント(0) | 天文学 | 読み終わった (2011年03月21日) |


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