屋上物語 (ノン・ノベル 653)

著者 :
  • 祥伝社 (1999年4月1日発売)
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本棚登録 : 71
感想 : 19
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老若男女が憩う空中の楽園-デパートの屋上。
そこで起こる不思議な事件。自殺、殺人、失踪、そして落し物。
それらを解き明かすのは、屋上にあるうどんスタンドの主、人呼んでさくら婆ァ。
その濁声で興行師(ヤクザ)をも怒鳴りつけるさくら婆ァだが、彼女にも哀しい過去があった・・・。

これまた面白かったです。
連作短編かと思ったら、これは長編?
一章でひとつの事件が解決されるのですが、その事件が次々連鎖していくという。
そして語り部がまた変わっているのにもやられました。
屋上に在る(居る?)モノ目線なのです。伏見稲荷大神の狐であったり、ベンチであったり、屋上自身であったり。
それらは動くことができないので、屋上で起きた事件の一部始終を目撃しています。
しかしまた話すことができないので、真相を教えることができません。
そのもどかしさがよく描かれていました。

そして探偵役であるさくら婆ァも、ほとんど屋上から動くことができません。
彼女は屋上のスタンドでうどんを作って売らねばなりませんから。
そこで手下(?)となって情報を集めてくるのが興行師の杜田と高校生のタク。
実はこれはいわゆる安楽椅子探偵モノだったのですね。

気がつけば全ての事件は屋上で起こり、また屋上で解決されているという。
変わった構成で面白かったです。
まあとにかく、さくら婆ァの哀愁と気風のよさに惚れますね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリ(日本)
感想投稿日 : 2010年10月15日
読了日 : 2010年6月21日
本棚登録日 : 2010年10月15日

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