三銃士 上 (岩波文庫 赤 533-8)

  • 岩波書店 (1970年10月16日発売)
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感想 : 52

ミレディー物語…じゃないって。

ルイ13世治世下のフランス。銃士になることを夢みて単身ふるさとガスコーニュを後にしたダルタニャンは、パリで同郷の名士・トレヴィルの指揮下にあったアトス・ポルトス・アラミスの三銃士と出会う。王の腹心・リシュリュー枢機卿の陰謀に巻き込まれながらも、三銃士との友情を育み困難を解決してゆく。

 恥ずかしながら初読でした。主役と思しきはダルタニャン一人なのに何故に『三銃士』?これはどう見ても『ダルタニャンと三人の銃士たち』だろ―と思っていました。瀬尾まいこさんの『図書館の神様』という作品の中で「山本周五郎の『さぶ』は栄冶の成長物語なのに何故タイトルが『さぶ』なのか?」と話題にする印象的な件があり、さてはここにも何か深い含蓄が?!と思ったのですが、さにあらず。『三銃士』は本来三部作からなる『ダルタニャン物語』の第一部に当り、日本ではこの『三銃士』が古くから単独の小説として知られてきたとのこと。友情あり、恋あり、冒険あり、娯楽小説の王道と言ってよく、読んでみて今なお単品で愛読される理由がわかる気が致します。

 若く覇気があり、大将としての器も認められ、そこそこ良い男(らしい)のダルタニャンは主役の貫禄十分です。謎めいた過去を持つ寡黙なアトス、単細胞だがムードメーカーのポルトス、学者肌のアラミスのいわゆるキャラの立つ三人組も良い。どんな時も彼らは至って真面目なのですが、そのやりとりは時にはお笑いユニットとまごうばかり。三蔵法師を彷彿させる懐の広いトレヴィル、悪代官そのもののリシュリュー枢機卿、そしてなんと言っても忘れてちゃならない妖婦・ミレディー。

 我が強く野心家の彼女はリシュリュー枢機卿の女間諜として働き、重婚、毒殺、色仕掛けなんでもござれで物語を振り回していくのですが、その妖婦っぷりはここまでくればもうあっぱれ。物語のラスト4分の1くらいからこのミレディーの存在感に圧倒されまくり、気がつけば彼女の最期とともに物語は終わった…のでした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 海外古典
感想投稿日 : 2012年2月13日
読了日 : 2012年2月1日
本棚登録日 : 2012年2月13日

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