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こちらあみ子 (ちくま文庫)
- 今村夏子
- 筑摩書房 / 2014年6月4日発売
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まっすぐな姿と社会との衝突。
罪の意識のないその姿は、自らにないものに対する憧憬と憎悪の対象。
2014年11月16日
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ブラックウォーター――世界最強の傭兵企業
- ジェレミー・スケイヒル
- 作品社 / 2014年8月2日発売
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戦争すら民営化されている。アウトソーシングされている。
その日本ではあまり知らされていない事実に驚く。
これまで軍隊で行われていた護衛や警備業務を戦地において民間企業が行うということは、軍隊としての派遣人数を数字上減らせるということ。
それは、政府にとっては極めて都合のいい数字の操作だ。
まさに戦争を産業化してきたアメリカの作り出した巧妙な仕組み。
2014年11月15日
前半の二人のやり取りは面白い。
後半は、著者の意見というか評論みたいになってしまってちょっと違うかなって感じ。
結婚というものが時代とともに自由になるにしたがい、結婚が遠のいていく。
そこに年齢という要素も加わり、自由な選択肢と思われていた結婚がどんどん選びえない状況に陥っていく。
不自由と思われていた前時代の方が結婚が身近な時代だった。
2014年11月15日
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ハックルベリ・フィンの冒険 トウェイン完訳コレクション (角川文庫)
- マーク・トウェイン
- KADOKAWA / 2004年8月22日発売
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前から読みたいと思っていた名作を読む。
長かったけど面白かった。
やんちゃ坊主の冒険譚。
次々とテンポよく巻き起こる騒動とハックの機転のよさと古き良きアメリカとでもいうようなのどかさが読んでいて気持ちがいい。
2014年10月21日
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愚者よ、お前がいなくなって淋しくてたまらない
- 伊集院静
- 集英社 / 2014年4月4日発売
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ハードボイルド
男の生きざま。
自分と社会の枠を乗り越えることができない人間は、それを越えることができる人間に憧れる。
「人間はな、人の前で馬鹿ができへんかったら……、できへんかったら、しょうもないんと違うんかい」
「他人に笑われてなんぼのもんと違うんかい!」
2014年10月21日
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きょうのできごと、十年後
- 柴崎友香
- 河出書房新社 / 2014年9月29日発売
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「休みも合わないし、電話で話しているときにけんかまでいかなくてもぎくしゃくすることが何度もあって、かみ合ってない会話を止めることができないまま、会って顔を見て話していたらこんなふうにならないのに、と思ったけれど、実際会ったら会ったで肝心なことを言い出せなかった。肝心なことってなんだっだのか、もう思い出せないけれど。」
「さびしいね。そんなに簡単に、夢中になられへんね。もう」
「でも、さびしいのって、そんなに悪いことじゃないかもしれへんよ」
まさか十年後が読めるなんて思ってなかった。
この会話の感じ、これが柴崎さんだなぁと思った。
芥川賞受賞後第1作にこれを持ってくるとは。
芥川賞の候補になっていた一連の作品とは、やっぱり少し違って、芥川賞から読み始めた人たちはびっくりするんじゃないかな。
一日の境目がよくわからないように、十年の境目もよくわからない。
日々の繰り返しだから、自分ってなんにも変ってないように思うけど、彼らと同じように、きっと少しずつ変わっている。
彼らの考えていることが「きょうのできごと」と変わってきているように。
20代の怖いもの知らずの時代を超えて、落ち着き将来を冷静に考えるようになる30代はじめ。
20代の頃、「きょうのできごと」を読んで、同時代性、同世代性に熱狂したように、30代になり、この作品を読み、やっぱり同時代に生きる同年代の言葉だと、深く共感した。
みんな成長してないと感じながら、ちょっとは変わってるんだな。
2014年10月18日
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感染宣告 エイズウィルスに人生を変えられた人々の物語 (講談社文庫)
- 石井光太
- 講談社 / 2013年6月14日発売
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HIVというのが、人生を壊す病であることがよくわかる。
死に至らしめることはほとんどなくなったということだけど、偏見等はまだあって、人間の根源的な部分に関わる重大な病であるということは変わっていない。
感染者と周辺者がともに苦悩させられる病であるということを実感させてくれるルポ。
2014年9月26日
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カッコーの巣の上で (白水Uブックス192/海外小説 永遠の本棚)
- ケン・キージー
- 白水社 / 2014年7月8日発売
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映画よりも不調とマックマーフィーの緊張感が伝わってくる。
チーフの思考なども映画では伝わらない部分で、面白かった。
マックマーフィーの要望がジャックニコルソンとは少し違うとこもあるんだけど、どうしてもジャックニコルソンが頭に浮かんじゃって、やっぱりジャックニコルソンの演技ははまり役ですごかったなと思う。
2014年9月25日
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きことわ (新潮文庫)
- 朝吹真理子
- 新潮社 / 2013年7月27日発売
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流れるような文体は、この人の特徴。
昔の綺麗な思い出の描写と文体がマッチしていると感じた。
2014年9月25日
ほのぼのとしたタッチの絵で、過酷なシベリア抑留が語られる。
そのタッチが、美化せずヒロイズムに陥ることもなく淡々と描かれる物語そのものを象徴しているよう。
何色にも染まっていなかった若者の目を通して、シベリア抑留の姿が語られる。
まさに一兵士の目線。
一兵士の過酷な体験と、それを忘れなければ生きていけなかったという状況は、戦争が個人に残す傷そのものなのだろう。
語ってもらうという体験も、葛藤の中での選択だったのだろう。
語ってもらうことによって、このような作品になるということは、みんなにとって貴重な財産になるということ。
著者の勇気ある選択もすごいこと。
2014年9月18日
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スリー・カップス・オブ・ティー (Sanctuary books)
- グレッグ・モーテンソン
- サンクチュアリパプリッシング / 2010年3月25日発売
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国や宗教といった実態がよくわからないものに囚われていると見えないものがある。
人と人が直接向かい合えば、異教徒でも異国人でも分かり合えることは多い。
彼のおかげで偏見を抱かずに育っていく子供たちがたくさん生まれるのであれば、それは数では計り知れな大きな成果になる。
彼は実績を残しているだけに説得力がある。
「テロに打ち勝つ唯一の方法は、彼らに愛され、尊敬されること。そのためにはまず彼らを愛し、尊敬することです。
善良な市民がいて、テロリストがいます。でもそのちがいは、教育があるかどうかだけなんです。」
2014年9月8日
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異邦人 世界の辺境を旅する (文春文庫 う 29-2)
- 上原善広
- 文藝春秋 / 2014年7月10日発売
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世界各地の被差別民を訪ね歩く。
ひとつひとつが短く少し物足りない感じがするけど、いろいろな被差別民の姿を見ながら、自分を見つめているということが感じられる。
歴史に翻弄され、数を減らしていく北海道、サハリンの北方民族の話を読みながら、文化が消されていくということが、決してとりかえしのつかない事態なのだという重いを新たにする。
アイヌの話を読んだ後だっただけに、とても興味深かった。
2014年8月29日
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さようなら、オレンジ (単行本)
- 岩城けい
- 筑摩書房 / 2013年8月30日発売
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言語が人格をつくる。
外国語を学ぶことで、人と人とのつながりが生まれ、成長する。
それは、子供が言葉を覚えるとともに社会性を獲得していくこととの相似形だ。
第2外国語の学習と海外での生活は、もとの人格の破壊と新たな人格の形成を意味する。
難民と日本人留学生という外国人が支えあいながら成長する姿は、故郷を離れた人間の、淋しさから力強さを獲得していく過程である。
大きな困難は、大きな成長を与えるということを綺麗に描き出す、とても力強い作品
2014年8月29日
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ここは退屈迎えに来て (幻冬舎文庫)
- 山内マリコ
- 幻冬舎 / 2014年4月10日発売
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「東京」という憧れの対象の町と子供時代の同級生の「ヒーロー」
その二つを中心にして、焦燥感と劣等感に包まれた女性たちの物語
「東京」と「地方」という対立関係は鮮明で、地方にいる人は、それだけで劣等感を感じてしまう。
日本における「東京」は、それだけ特別な町。
その東京の特別性は、「東京タワー」で見事に描かれ、この作品はそのことを再び思い出させた。
東京へ行けば、何者かになれるのではないかという、強い憧れは、小学校時代の「ヒーロー」への憧れと似ている。
しかし、「ヒーロー」が、結局は平凡な人生を送るように、「東京」へ行ったからといって、何かを得られ、自分が何者かになれるわけではない。
実体のない憧れは、虚しいが、そのことをわかっていても現状に満ち足りるということは難しい。
だからこそ、自分は特別ではないということを、認識できる年齢になっても、虚しさを見ないようにし、あこがれ続けるという嘘を自分に対してつき続けるのかもしれない
作者の年代とドンピシャで重なるので、そのときどきの文化が懐かしい。
2014年8月23日
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クマにあったらどうするか ――アイヌ民族最後の狩人 姉崎等 (ちくま文庫)
- 姉崎等
- 筑摩書房 / 2014年3月10日発売
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こういうのが知恵であり、文化なのだと思う。
少数民族の文化がなくなるということは、こういう知恵が失われていくということ。
グローバル化と文化の均一化は、文化的な貧しさにつながるのだろうなということを考えてしまった。
狩猟の対象であるクマを、神様として家に迎えるという考え方は、自然の中で、動物たちと共生してきた人間だからこそ生まれる文化だと思う。
2014年8月23日
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右翼と左翼はどうちがう? (河出文庫)
- 雨宮処凛
- 河出書房新社 / 2014年3月6日発売
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実体験に基づく評論だから説得力ある。
根本の部分に同じく民衆を思う気持ちがあるというのはその通りだと思う。
だから「右翼」「左翼」とカテゴライズしてしまうことによって、行動範囲が狭められ、実現できなくなってしまうところはあるだろうな。
それはなにかもったいない。
超えられない壁はあるけど、まずは若いうちに、右翼左翼に属する前にこういった本を読んでみたらいい。
なにも考えずに、政治を避けて通るのはやはりよくない。
こういう本が政治について考えるきっかけになれば。
2014年8月23日
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モルヒネ (祥伝社文庫 あ 24-1)
- 安達千夏
- 祥伝社 / 2006年7月1日発売
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死を前にした弱さや、強がり。
昔の恋人という関係性に甘えてしまう姿などはリアルに思えた。
結局私は必要とされなかったという主人公の言葉は、むしろ必要とされたことへの喜びと、最終的な場面を見させられなかったという安堵に思える。
彼女は、必要とされなかったのではなく、必要とされたからこそそこにいたのであり、大切にされたからこそ、死ではなく、人為的な別離が選択された。その意味で彼女が特別な存在であることは間違いない。
死していなくなることと、行方不明で会えないということ。
会えないという現象の点ではどちらも同じだ。
受け取る側の解釈が違うだけ。
彼女に会うという選択をしたのは、男の弱さと身勝手さだが、それが彼女にとっても幸せなことであったことは間違いない。
生きているということは、生まれた瞬間から延命されているということだ。
2014年8月7日
家という居住空間。
人が住むことによって、その「箱」がまとう空気感を空き家と空き家になって行く家、空き家から空き家でなくなる家の姿をとおして描く。
家という生活空間から漂ってくる生活臭に対する嗅覚が面白い。
狭い住宅地でひしめき合って住んでいる人間同士の、よそよそしさを残す絶妙な都会の距離感も面白い。
他人の変な趣味に異様さを感じつつ、その違和感を隠し見て見ぬふりをしながら、自分も首を突っ込んでしまうみたいな距離感。
ただ、作品自体にあまり特異な感じもしない。
柴崎さんらしい、軽妙な会話もあまりなく、インパクトをそれほど感じない。
これなら、「その街の今は」の方がよかったのではないかとも感じてしまう。
あっちは、新潮で、こっちは文芸春秋だから…などといらんことを考えてしまう。
家で、突然大怪我してしまうところとか、部屋がソファであふれてしまうところとか、なんか長嶋有さん的な面白さが感じられた。
2014年8月7日
長嶋有さんがテレビで紹介していたので読んでみる。
進歩的という思想に囚われたがために、自由恋愛を強要される女性たち。
しかし、自由恋愛が生み出すのは、結局男性の優位に過ぎず、むしろより前時代的な男性本位な関係や、なまなましい嫉妬心である。
進歩的といわれた女性たちが、このようななまなましい恋愛関係に翻弄されていたというのは、今から見れば皮肉的とも思えるが、このような恋愛関係に翻弄されるということ、そしてそのことが表に現れ大衆の目にさらされるということ自体が、当時は進歩的だったということなのかもしれない。
いつの時代もダメな男に惹かれる女性はいる。
2014年8月7日
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あの子の考えることは変 (講談社文庫)
- 本谷有希子
- 講談社 / 2013年6月14日発売
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やっぱり本谷さんの描くパニックの緊迫感がすごい。
狂気のぶつかり合いが、なぜだか嫌悪感と爽快感を生み出す。
いまの東京で生きてくことの幸せってなんだろうと考え込んでしまう。
この作品は、青春エンターテインメントらしい。
これをエンターテインメントといってしまっていいの?…
2014年8月2日
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ラバーネッカー (小学館文庫 ハ 8-4)
- ベリンダ・バウアー
- 小学館 / 2014年6月6日発売
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普通のミステリーかな。
アスペルガー症候群の主人公が魅力的に描かれてて、周囲との摩擦がリアルだった。
アスペルガー症候群の主人公を天才にはしたくなかったって言葉が印象に残った。
2014年8月2日
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元刑務官が明かす刑務所のすべて (文春文庫 さ 44-2)
- 坂本敏夫
- 文藝春秋 / 2009年9月4日発売
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ただ、刑務所の組織や決まりなんかを説明しているだけだったので、それほど面白さはなかった。
2014年8月2日
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コーヒーと恋愛 (ちくま文庫 し 39-1)
- 獅子文六
- 筑摩書房 / 2013年4月10日発売
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真面目な大衆小説って感じ。
案外と恋愛というものを考えさせられる。
3つ星にしようかと思ったけど、終わりがすっきりとしていたから4つ星。
2014年7月22日
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誘拐の知らせ (ちくま文庫 か 5-3)
- G・ガルシア=マルケス
- 筑摩書房 / 2010年11月12日発売
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最近、マルケスの本がよく平積みされてるから手に取って見る。
コロンビアがこんなにも荒れている国だったなんて知らなかった。まさに無法地帯な、想像を絶する荒れ方。
ジャーナリストとしてのマルケスの表現。
小説のような幻想的な表現はないが、政治的な権力闘争やマフィアの世界の栄枯盛衰の姿は、マルケスの小説作品にも通じるか。
コロンビアの現代史に興味がわく作品。
2014年7月14日