金原ひとみさんは、蛇にピアスを芥川賞受賞時以来。
蛇にピアスは、露悪趣味な感じが、うーんって感じだったけど・・・
この作品も露悪的なところがあるけど、あえて出産育児という神聖視される領域を露悪的に描くことによって、現代の出産育児をリアルに描くことに成功している。
母親は意識的、無意識的に母親というイメージに囚われた存在。
そのイメージは清く、温かく、そこからはみ出すことを許そうとしない。
そのイメージの中でうまく立ち回れる人、窮屈さにもがく人。
現代の核家族、地域性の欠如の中で、逃げ場のない母親は、子供を傷つけてしまう。
傷つけられる子供は常に不幸だが、母親もまた不幸。
あえて露悪的に母親の本心を描き切ることによって、その母親の不幸な構造が浮き彫りになる。
虐待のニュースを聞くと、なんでこんな未熟な子が子供を産むんだと思ってしまうが、そのような見方自体が、過度に母親を神聖視し、母親を追い込んで行くのだということを気づかされた。
人間なんて、多かれ少なかれ未熟な存在。
未熟な人間が子育てできるように支えあえる環境をつくること、それが一番難しいけど必要なことだと思う。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2014年4月30日
- 読了日 : 2014年4月30日
- 本棚登録日 : 2014年4月30日
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