ロボット・イン・ザ・ガーデン (小学館文庫 イ 2-1)

  • 小学館 (2016年6月7日発売)
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感想 : 336
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庭の石畳の上に、ポツンと佇むレトロなおもちゃのような姿のかわいらしいロボット。
行きつけの書店で平積みになっていた、酒井駒子さんの手によるこのカバー画を見て、思わず頬を緩めながら本書を手にとっていました。

現代とそう変わらない雰囲気を持ちながら、高性能のアンドロイドが家事や仕事に就くのが当たり前となっていることからすると、少し未来になるのでしょうか。
イギリスの田舎に住む、法廷弁護士として成功している妻エイミーと、対照的に職にもつかず、親から譲り受けた家で、親からの遺産のおかげでぼんやりと過ごしている夫のベン。この夫婦の家の庭に、ある日忽然とボロボロの旧式ロボットが現れたところから物語は始まります。
タングと名乗るこの迷子のロボットに興味を持ったベンは、タングとともに、その生みの親を探す旅に出ることにし…

キュートで魅力的なカバー画と、面白そうなストーリーにも拘らず、冒頭しばらくは、何かと頼りないベンとそれに苛立つエイミーとのやり取りにこちらまでウンザリしました。それに加えて、うるさくて駄々っ子で言うことをきかないタングの様子を見て、少しでもかわいいと思った自分に腹が立ったほどです。
そう、誰一人共感できるキャラがいないところからスタートしたんです。

ところがところが、二人(一人と一体!?)が旅に出てからは、いくつものトラブルやいろんな人との出会いを通じて互いに理解を深め、少しずつ少しずつ変わっていく二人(いや、そやから一人と一体)の姿に、冒頭部での苛立ちも忘れてのめり込んでいきました。
そしてタングの仕草のかわいらしさ、微笑ましさといったら!
時にハラハラ、時にドキドキしながら、いつの間にか、ずっとこの二人と一緒に居たいと願っていました。

ストーリーは全く違うけど、ロボットと人間の温かい絆を描いたと言う意味で、これは現代の「ロビー(アシモフが書いたロボットものの短編)」ですね。本当にいい本でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: デボラ・インストール
感想投稿日 : 2017年2月21日
読了日 : 2017年2月19日
本棚登録日 : 2017年1月28日

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