1998年から5年間、中東特派員として数々のニュース報道に携わったオランダ人ジャーナリストによる「報道されない真実」を赤裸々に描き出した迫真のルポタージュ。
中東という複雑に入り組んだ歴史をもつ地域において「真実を知る」ことの難しさ、また同じ事象でも見る人の立場によって全く異なる「真実」が存在するという矛盾、さらには真実よりも虚実の方がニュースバリューが高いとみなされるジャーナリズムの構造的問題、そして何時の間にかそれらに「慣れてしまっている自分」への嫌悪感…悩み抜いた著者だからこそのユーモアを交えた語り口調に、圧倒的なリアリティを感じずにいられない。
もちろん、本書が書かれた2006年当時からは、中東情勢も変化しており、著者が体験した問題が今もそのまま放置されているとは限らない。そして著者自身が述べているとおり、本書もまたひとつの物の見方であり、これを鵜呑みにすること自体、著者が恐れていることであるともいえる。いずれにせよ、ニュースの受け手の一人として、著者が捨て身で投げかけたメッセージを真摯に受け止めたいと思う。
読書状況:読み終わった
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思考力
- 感想投稿日 : 2015年6月7日
- 読了日 : 2012年5月5日
- 本棚登録日 : 2015年6月7日
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