松永久秀のかわいいことかわいいこと。
傀儡・果心との掛け合いや、兄・庄五郎への親愛、信長への憎しみと嫉妬。
外道の術を扱い、節々で人外らしい評価を得ているのに、その実、誰よりも人間臭い感情を秘めているその葛藤ぶりには、ときめかずにはいられない。
あの時代、既存概念をひっくり返したという意味では誰にも劣らないのに、どちらかといえば織田信長という傑物に掻き消されがちな松永久秀と斉藤道三が、こんな形で描かれるなんて、夢にも思わなかった。
しかし、強い光に隠されがちな星が必死に日輪に抗おうとしている傍ら、微塵も己を「日輪か星か」など疑うこともない信長は、本当に、生まれながらの日輪らしい。
そうなると、たとえ最盛期の霜台であっても、「己は日輪である(あるいは日輪たり得たい)」という発想に至ってしまっていた時点で、明けの明星だったのかもしれないと思うと、冒頭から何とも切ない話だ。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
歴史・時代小説
- 感想投稿日 : 2015年5月24日
- 読了日 : 2015年5月24日
- 本棚登録日 : 2015年5月22日
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