午後の曳航 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1968年7月15日発売)
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本棚登録 : 1922
感想 : 200
3

緻密な構成にため息が出る。
主人公は前半で完璧なる均衡を構築し、後半でそれが崩れそうになるのを必死に防ごうとする。美や理想のための作品だ。不気味なまでに美しい。
穴を見ている時の主人公のポーズなど、至極些細なところにも意味がある。それを考えるのも楽しく、緻密さにまたため息が出る。


題にある「曳航」とは船が船をひく様子の事で、「曳航」と「栄光」をかけている。その理由は、英語での題を読むとわかりやすい。「The Sailor Who Fell From Grace with the Sea」、即ち「海と共に優雅さを失った船乗り」。一人の男が栄光を失って行く、その様子が描かれた作品、という事が題からも暗示されているのだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 純文学
感想投稿日 : 2010年1月25日
読了日 : 2008年11月17日
本棚登録日 : 2008年11月17日

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