モンスター・クラーン 虚構の箱舟 (角川ビーンズ文庫 16-43)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング) (2011年10月29日発売)
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入荷先:品川区立品川図書館(KK03)

クラーン(血族・氏族)の表の顔は言うなれば「ホールディングス・カンパニー」ということになると位置づけて、そのHDの筆頭一族としてやらねばならない「ノブレス・オブレージ」を遂行しようとしたら、クラーン内部に封印しなければならないのっぴきならない事情がやってきた――というのが今回の大まかな見取り図。

この見取り図に沿って考えるならば、結局結城もまた「人外=上流階級にしかいないかもしれない方々」という意識から抜け出ていないという批判の存在もあり得なくはないのだが、しかし一方では人外であるがゆえに人間(本書では「ナバハール」と称呼)社会を外側から参画する以外手段が無かったと見なす必要があるのかもしれない。その意味では『少年陰陽師』とちょうど類似した関係を模索すべきなのかもしれないという結城なりのスタート地点が見えてきたような気がする。咲夜の愛器だけで作品が進まないのと同様に、ただYA世代にファンタジーを提供するだけでも作品は進まないのである。

言うなれば「生みの苦しみ」だ。その「生みの苦しみ」の向こう側に見えるかもしれないファンタジーを超えざるをえない瞬間を、評者としては見てみたいものである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 借受:23区
感想投稿日 : 2011年11月27日
読了日 : 2011年11月24日
本棚登録日 : 2011年11月27日

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