全米で圧倒的人気を誇っているドキュメンタリー番組があります。ある平凡な青年、トゥルーマン・バーバンクの人生を24時間生中継しているプログラム、トゥルーマンショーです。トゥルーマンはハリウッドに特設されたシーヘブン島に住み、そこから一歩も外に出ないまま人生を送っています。
さらにトゥルーマン本人は、自らが番組の主人公だとは知らされていません。生まれてから20年以上、己の人生を盗撮され管理されていることに気づかず、自分の生活を衆目のもとに晒し続けてきました。トゥルーマンの友人、同僚、果ては妻までも役者であり、彼の人生におけるあらゆるイベントは脚本家によってアレンジされたものです。
きっと、誰しもが一度は考えてことがあるんじゃないかと思います。
「実は自分の人生は誰かに操られている。住んでいる町の外はハリボテで、移動のたびに偽物の世界が作られているにすぎない。もちろん外国なんて存在しない。自分以外の人間は全員グルであり、すべての情報から己だけが隔離されている」そんなことを。
そういう冗談みたいな世界が描かれている映画です。
物語のクライマックス、主人公は真実に気付きシーヘブン島からの逃走を企てます。しかし番組の監督はトゥルーマンを説得します。
島から逃げたところで、そこに素晴らしい人生などありはしない。すべてが決定された日々を送ることは、不自由であろうが幸せなことだ。だからお前は島に戻れ。そう言ってトゥルーマンを連れ戻そうとします。
しかし彼は甘言に惑わされることなく、外の世界への扉を開きます。その勇気ある行動に対して拍手を送る視聴者たち。ここでこの映画は終わります。
トゥルーマンほど劇的ではなくとも、きっと全ての人々はシーヘブンから出る経験をするのだと思います。
それは進学かも知れません。就職かもしれないし、人によっては転職である可能性もあるでしょう。
少なくとも私たちは、様々なことが「常に既に」決定される居心地のよい空間をどこかのタイミングで抜け出さなければいけません。
私事ですが、内定式から一年、入社式から半年経ちました。
自分ではどれほど塗絵の方が性に合っていると思っていても白い画用紙しか渡されない会社です。
きっと自分がトゥルーマンだったらすぐシーヘブンに逃げ帰っていると思います笑
けど、シーヘブンで100年生活してもきっと成長できないということは解っているから、また恐る恐る外へと出るのでしょう。
それを繰り返すうちに、ヨチヨチの線で兎くらいは書けるようになるかもしれません。目が三つ、足が七本くらいあるやつです。
トゥルーマンバーバンクの「その後」は映画では描かれませんでしたが、自分の人生は自分で見届けるしかありません。
- 感想投稿日 : 2013年10月4日
- 本棚登録日 : 2013年10月4日
みんなの感想をみる