原作は読んだことありませんが、きっと是枝監督の色で再構成された作品なのではと感じました。
是枝監督の「誰も知らない」でもリアルに表現されていたが、親の立ち位置に立てず、子どもの気持ちをキャッチし難い精神的に幼い母親を描くのが絶妙に上手い。そしてそういった環境で子どもたちがどう生き抜いていくのか、それぞれのパーソナリティや恋愛の仕方をとおして自然に描かれていたなあと思う。その、日常の中にある派手さはないけれど、生きる力強さにどこか惹かれるのかもしれない。
作品キャッチコピーにある「父に捨てられた姉妹の物語」というより、「『母』(的存在)が不在の姉妹の物語」の方が近いのかもしれない。
三姉妹には、父に対する怒りの気持ちや、知りたいという気持ち、寂しい気持ちもある。精神的なつながりがあったことを感じさせる。
一方で、父と同じく子どもを置いて出て行った母へは長女・幸が時折怒りを表現するくらいで、一緒に暮らしたい・寂しいといった繋がりを感じさせる気持ちはそもそも持ち難いことが窺える。
長女はこの姉妹の中で子ども時代から『母』の役割を担い、次女は「父はきっと優しかったんだよ」と『仲裁者』になり、三女は何も知らない『おどけ者』として家族を明るくする(実は周りがよく見えていて、間に入ったり心情に沿ったフォローをしている)。それぞれがこの姉妹という家族のバランスを保っている。
四女・すずも育ちの中で「自分はここに居ていいんだろうか」と感じながら、良い子で大人っぽく振る舞ってきた。その四女が、三姉妹と一緒に暮らす中で徐々に子どもっぽくなっていく様が良かったなあと暖かく感じる。
全体を通した"是枝監督"のメッセージは、宣伝コピーの「父が残してくれたもの」ではなく、
三姉妹の生き方やすずの変化のように、「親とは関係なく、子どもは子どもで、その人はその人で尊く、力強く、その人自身が輝きだ」と本当は言いたいのでは? と、最後のシーンを観ながら思いました。それが何よりの救いなのではないでしょうか。
- 感想投稿日 : 2017年5月7日
- 読了日 : 2017年5月5日
- 本棚登録日 : 2017年5月7日
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