天盆

著者 :
  • 中央公論新社 (2014年7月24日発売)
4.02
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本棚登録 : 114
感想 : 25

一行目からなぜか引き込まれた。
他の本と同じ日本語で始まっているのに、「持っている」本は開いた瞬間に雰囲気が違う。いや、雰囲気など感じる前にその世界に引き込まれている。
年に一度か二度出会うかどうかの神の宿った本だった。
盤上とはいえど、天下の人と人の争いは静謐にして熱く、家族をも巻き込んで国中の人々の心までも席巻していく。
そして読み手の心も。
身体の輪郭など忘れてただ本の文字を追いかけ、それだけで目の前に映画のようにありありと景色が浮かぶ。
これほど夢中になった本はいつ振りだろうか。
C★NOVELS大賞では「煌夜祭」以来の持っていかれぶりだった。
新書ではなく四六判での発刊となったのも納得である。
文芸書として既存レーベルの範疇を越えて多くの人に大切に読んでもらいたい物語。
編集部にさえもそう思わせた大作である。
投稿時とはタイトルが変更されているが、今回のタイトルの方が面白味はないように見えるが、読めば読むほどこの「天盆」というたった二文字のタイトルでよかったと思える。
凡手からとったというが、主人公凡天の名前、天盆をひっくり返している。まさに天盆と遊ぶために生まれてきたのだろう。
彼らのその後の行く末は、自然と気にならなかった。
戦い抜いた、やりぬいた、歓喜に噎ぶ心を抱え、きっと彼らは見事に生き抜いたのだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ファンタジー
感想投稿日 : 2014年9月15日
読了日 : 2014年9月15日
本棚登録日 : 2014年9月15日

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