初めの方は軽い調子で進むのに、文の内容を想像するとかなりグロテスク。その空気のまま進み、「え、それ受け入れちゃうの?」ってくらい周りの反応がオカシイ。さらにオカルト要素まで出てきて、これそういう本だったの?と疑問視。
しかし本の雰囲気に流されつつ読み進めていくと、次第に『軽い調子』では読めなくなる。文をそのまま受け止めず、事実と照らし合わせていったり背景を思いおこすと、なんとも切ない。
『死んでいる』のに存在している浩一。自分にある時間が長くないことを知る。そして、同じく時間が有限であると心の奥では分かっているのに考えまいとしている満。互いに互いが大事すぎて、その存在がない生活を想像できなくて、認められない。
ひき逃げ犯を病院で見かけたシーンは涙が溢れた。大事な人をこんな目い合わせた犯人が許せない満と、糾弾したところで自分の状態が変わらないかつ犯人に子供が生まれようとしている状況を鑑みてしまう浩一。
新たに生まれてくる命のためを思う気持ちも分かるし、犯人を許せない気持も分かる。どちらの立場の気持ちも理解できるからこそ、やるせない気持ちになった。
大切な人を大切にしたくなる、そんな物語。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
BL小説
- 感想投稿日 : 2012年5月15日
- 読了日 : 2012年5月14日
- 本棚登録日 : 2012年5月14日
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