若き日の思い出 (新潮文庫 む 1-11)

  • 新潮社 (1957年9月1日発売)
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僕は宗教としてこの人の考え方をこれからも信じていこうと思う。

・『この世にはどんなことが行なわれようと、時は一向平気な顔をして過ぎてゆきます。私たちは時間を長く思いすぎたり、短く思いすぎたりしますが、時の方はそんなことを一向問題にはしない』
・『それは いつも全体を見ることを忘れてはいけない。一方にはよくっても、他方にはよくないと言うこともよくあります』
・『私なんか碁なんかやってないと言う気が、ついするので、もう一歩と云う所で、進歩が出来ないのです。やっている時だけは、本気になって、勝ちたいと思うのですが、普段が普段ですから、やはり無駄ですわ』
・『人間というものは純粋さを失ったら何処まで迷いだすかわからないものです。昔の人はそれを知っていました。今の人は本を読みすぎたり、いろいろの刺激に逢ったりして、自分を見失って、どうでもいいようなことに夢中になる。そして段々と人間らしくない怪物になっていく。頭のいいもの程、自分を自分で騙すのです。本来の生命を忘れるのです。』
・『人生というものは実際。無尽蔵の宝庫のようなものです、どの宝庫に入っても、宝がありすぎるのです。その宝に夢中になりすぎて自分の生命のことを忘れてしまう。その宝は自分をよく生かす為に必要なので、それ以外の宝には目もくれないという覚悟が大事なのですが、私たちはつい宝物に目がくらんで、自分の一生というものを考えない。それは丁度、一人の子どもがご馳走の国に行って、あんまりうまいものが多すぎるので、どれも皆食べなければならないと思って、自分が人間だということを忘れて、自分を胃の腑以外のものでないと思うようなものはなくなり宝物が中心になるのです。それでは一番大事なものが何かがわからなくなるのです。大事なこと、なくては叶わぬことは一つだということは本当です。それは全ての人が人間らしく生きられるということです。他人を益々本当の人間にして、そして自分も益々本当に人間になるようにする。』
・『怒った調子でものをいうから、お母さんは話が出来ない』
・『恋愛というものは一人前になるために与えられているようなもので、理想の相手を求めると共に、自分を理想の人間にしようという努力が自ずと生まれてくるもの』
・『死に物狂いで勉強しよう。自分の生活を根本的によくしよう。心がけをなおそう。怠けたり、ずるけたりすれば、自分の実質はくさりだす。心の心から自分を良くしなければいけない』
・『私はなんとなく母の今までの寂しい生涯が考えられてきました。母は実際私たちの為に犠牲になって、生きてきた。そして私たちが少しでも元気だと、喜んでくれる。そして私たちが少しでも元気がないと、心配して、何とかして慰めようとしてくれる』
・『人間の値打ちは結局、他人に働きかける質と量できまる。自己を完成するのが値打ちのが個人の務めには違いないが、自己完成というのはつまり円満な人格をつくることを意味している。自分だけを完成する、しかし他人には何の影響も与えないで死んでゆく、それでは面白くない。自分が悟るのはつまり皆を悟らせるために役にたつから尊いのだ。だから愛というものが尊くなるのだ。自己完成をしたことはつまり他人の自己完成に役に立つにだ。人間は他人から切り離された存在ではない』

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感想投稿日 : 2009年2月7日
本棚登録日 : 2009年2月7日

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