コーポレーションの進化多様性 ―集合認知・ガバナンス・制度 (叢書 制度を考える)

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著者 : 青木昌彦
制作 : 谷口 和弘 
zerobaseさん 社会・経済   読み終わった 

2012-01-23読了後メモ
コーポレーションを集合認知システムとして捉えることと、方法論的個人主義を葬送することの意味は、組織の「人間集団」(人間的かつ集団的)としての側面に光を当てるということ。
集合認知システムとしてのコーポレーションは、一人では出来ない意思決定を可能にする。
「株式会社は個人がなしうる物事の単なる寄せ集め以上の物事を実現しうる」(CSRについて、p.142)
「今日、所得、雇用保障、蓄積されてきた認知資産へのアクセス可能性(教育、OJT、フォーマル・トレーニング)などの面で格差が生じているという認識にどう対処するかは、現代日本の公的議論のなかで議論されるべき最も重要な問題の1つになりつつある」(p.215)

会社は何をすべきか。
組織の認知資産を最大限に活用することだけでなく、新たな認知資産を獲得すること。そのために必要な非人的な物的資産を獲得すること。それらの最適な組織アーキテクチャとコーポレート・ガバナンスをデザインすること。
社会関係資本を増大するための活動に投資すること。とくにCSR活動を通じて社会一般における社会関係資本の獲得と、特定市場における評判(ブランド)の獲得を両立すること。ひいては社会全体の贈与を増やすことに貢献すること。
社会交換ゲームへのコミットメントを通じて、よりよい制度の実現に貢献すること。様々な実験や提案を通じて社会の進化多様性を担うこと。
それらすべてを通じて「個人がなしうる物事の単なる寄せ集め以上の物事」を実現すること。

2011-05-25購入
コーポレーション一般の特性・存在理由にかんする存在論的問題
コーポレーション、ガバナンス、アーキテクチャ、社会ゲーム、政治

2011-10-17 読み始め
Oct 24
p.i > コーポレーションは,もっぱら投資家の富を蓄積するために存在するのだろうか。グローバルな会社経済のランドスケープは,金融権力の主権の下でフラット化するのだろうか,フラット化すべきなのだろうか。もしこれらの問題に議論の余地が残されていないとするならば,われわれは,会社法にとっての「歴史の終わり」を迎えているのだろか。
p.ii > 最近のゲーム理論の成果によれば、組織成果の分配についての公平性の概念が共有されていれば、その下で個々の組織参加者が各々の個人的な物質的利得を追求するよう行動することは、彼らが同一の目的、すなわち企業のチームとしての利益、を最大化することと同値になることが示されている。つまり、企業がチームとして成り立つことと、個人が利己的な物質的利益を追求するという想定とが矛盾しない社会的条件が明らかにされたわけである。
p.8 > 1つの参照枠ときて,コーポレーションにかんする最小限の概念化を以下のようにまとめてみよう。すなわちコーポレーションとは,何らかの合目的な集団活動に従事する複数の自然人からなる自発的・永続的な結合体で,独自のアイデンティティを持ち,ルールにもとづいた自己統治的な組織に体化される。
p.11 コース「短期契約の束へと分解できない永続的な生産組織
p.12 > 株式会社が集団レベルの認知(集合認知)システム (system of associational cognition) として組織化される仕方は,株式会社が有するファイナンスの側面に劣らず大いに注目してしかるべき側面だといえるだろう。
p.14 ドラッカー:労働過程全体を経験、理解し、創発的に協働できるナレッジ・ワーカー
p.14 コース「分業が進んだ交換経済のなかで企業が生成する理由」→市場を権限関係によって代替することにより取引費用が節約できるときに,企業が生成・拡大する。相対価格の発見が難しい状況と、市場契約をめぐる交渉が面倒な状況。
p.16 「コーポレーションとは何をするのか」→会社組織において集合認知システムがアーキテクトされる仕方に左右される。→新たなモデルは経営者・労働者・投資家のあいだの新しい関係を含む
p.19 コーポレート・ガバナンス問題の核心→> かくして慣習として進化する集合認知のアーキテクチャにともない,そらぞれの資産所有者の権利・義務という観点から利害調停・調整を図るための合意可能な基本ルールが存在しなければならない。こうしたルールの性質はいかなるものだろうか。→資産所有者間の潜在的な「合意」(ナッシュ交渉解の基本公理を満たす)
p.20 > 株式会社が社会秩序を構成する1つの制度化要素となるには,会社行動のパターンにかんする安定的な期待な社会のなかで生み出され,維持されることも必要なのである。※ライブドア
p.21 社会でくり返しプレイされるゲーム→社会ゲーム (societal game)
> 「プレイは秩序を生み出し、秩序そのものである」
p.23 均衡(静学的)→安定的な共進化経路(動学的)
p.24 > 制度進化の基本性質を理解するには,鉄壁の方法論的個人主義は埋葬されなければならないのである。
ケネス・アロー「特定の個人に還元することのできない社会変数が経済その他の社会システムを研究するうえで不可欠であり,なかでも知識と技能的情報は欠くことのできない社会的要素であって,経時的にますます重要になっている」
p.24 「失われた10年」は社会の認知的危機
p.25 > コーポレーションの進化多様性は,もなや「資本主義の多様性」パラダイムの文献が示唆するような国民特性に由来する多様性というより,程度の違いこそあれ国民経済間で広く確認されるユビキタスな現象にほかならない。その意味では,グローバルな経済統合の産物とみなされうるだろう。グローバルな会社経済のランドスケープは,けっしてフラットになることはないのであって,そこに組み込まれる多様な組織アーキテクチャ様式を表出することになろう。
p.35 現時点の会社のあり様が、現時点の人材(人的認知資産)一般の傾向を決める。 > コーポレーションの支配的な組織アーキテクチャ様式、これに適合した人的認知資産は共進化を遂げる。
41 同化認知(S)、ヒエラルキー的認知(H)、カプセル化認知(E)
44 組織アーキテクチャ(OA)、コーポーレート・ガバナンス(CG)
経営者の認知資産MCA
労働者の認知資産WCA
非人的な物的資産PHA
46 不可欠性、準不可欠
51 組織アーキテクチャの5つの基本様式 H(H-E) アングロ・アメリカ型、G(S-E/S) ドイツ型、S(S-S) 日本型、SV(S-E) シリコンバレー型、RE(H-S/E) MCA, WCA間の相互不可欠型
69 組織ゲームのフレーム:社会、組織間(組織フィールド)、組織内(会社)
80 > チーム・プレイのフォーカル・ポイントとしての組織ルールを創造するとともに、契約設計によってこうしたリスクに対処することは、(…)会社経営者の本質的なタスクにほかならない。
88 > 制度とは、社会ゲームがくり返しプレイされ、またそうプレイされるべき、仕方についての共通認識されているパターンである。
公的表象、共有知識、
96 > 国家は、単に政府組織やそれが設定する(だが破られることも、無視されることもありうる)ルールにあるのではなく、政府自体も服している秩序である。それは、民間主体、政府が自分たちの(逸脱的な)行動によりもたらさらうる結果について抱く安定的な共有予想を含み、その元で予測可能な行動パターンが維持される。こうした意味で、国家は内生的な規範的秩序という一面を持つといえよう。
97 制度的補完性:政治ゲームと組織フィールドの相互依存性
100 絶対的略奪国家、裁量的略奪国家、結託国家、相関的国家、
民主主義国家
124 社会的交換ゲーム
126 社会関係資本:ある主体の経時的な期待社会的利得の現在価値和(行為主体が、経時的に正の純社会的利得を得るか、他のドメインで便益を得るべく、その利得を用いうる期待能力)
129 > 規範は、内面化されれば、他者がそれにたいする違反を観察できない場合であっても遵守されうるであろう。というのも、規範に違反することは、罪の意識、恥、あるいは他に何らかの負の感情的利得を生み出すからである。こうした道徳観は(…)むしろ実践に由来するとみなすのが妥当だろう。
アリストテレス「道徳善(エチケ)」と「エトス(習慣)」
130 > 経済取引と社会的交換は連結され、規範はこれら2つの相互作用をつうじて進化を遂げることもある。
→社会的埋め込み(social embeddedness)
131 > 共有予想によって支えられたこのような協力的行動の基準を社会規範と呼ぼう。こうした規範が歴史的にいったん確立してしまうと、もはや各メンバーは、規定された戦略を計算して一から導き出す必要もなければ、集合的にも個人的にも合理性を意識しなくともよい。規範は、メンバーにたいして自分の認知的負担を軽減できる認知的フレームを提供する。
134 > 情報の豊かな仲介者、助けになるメンターが高い評価を受け、良好な評判を蓄積していく。したがって、SV型の組織アーキテクチャ様式にも密な社会的交換が埋め込まれているのであって、このネットワークのなかで社会関係資本への投資を行っている主体は、事業機会、社会的地位といった点で将来的に経済的・社会的利益を得ることが期待できる。
139 CSR会社が存在することにより総社会的贈与は増大しうる。
141 > 会社による社会関係資本の蓄積は、市場特殊的な評判資本とのあいだで補完的となる。
> 純粋な社会貢献、戦略的な社会貢献が結合した会社のCSR活動は、株式会社(CSR起業家、従業員など自社のステイクホルダー)と一般市民のあいだでプレイされる経済取引ゲーム、共有財ゲーム、社会的交換ゲームを連結するのである。
170 共通事前確率分布は文化的予想「あらゆる特有の文化的集団の過去の世代が積んできた経験をカプセル化したもの」
172 > 社会的認知カテゴリーと個人的認知が織り合わさって、社会秩序を生み出しているのである。こうした社会秩序の二重性を理解することは、社会ルールの進化プロセスを分析する際のカギとなる。方法論的個人主義も、ホーリズム(あるいは社会構造主義)も、どちらも社会を完全に語りつくせるものではない。
文化という形態で前世代の人々による影響をも部分的にうける一方、現世代の人々による将来についての予想もが重要な意味を持つという点で、次世代の人々による影響をも部分的に受ける。かくして制度的環境は、ともに創造・共有に加わっているすべての主体の拡延的認知を構成するとみなされよう。このように各主体は、認知的資源・内容を共同で拡延することにより、自己の肉体を超えた認知の地平を広げるのである。
181 > たとえば、2008年の金融危機が勃発したプロセスにおいて、ウォール・ストリート、シティといった金融街でベスト・アンド・ブライテスト(超一流の人材)とみなされていた人々は、ハイリターンのデリバティブ商品の開発という仕事に表象された高い社会的地位をめざして競い合った。彼らの「強欲」ぶりが、結果的に悲惨な帰結をもたらした元凶としてしばしば非難される。そうした強欲ぶりとは、このケースでははたして何を意味したのだろうか。クオンツと呼ばれたファンド・マネージャー間で展開された競争は、金銭的利得のあくなき追求という単なる経済的競争ではなく、名声、畏敬、嫉妬などといった感情的利得をもたらすような能力・知性の顕示という社会関係的競争でもあった。かくして彼らにとっては、追加的に数百万ドルのリターンを生み出すということ自体はもはや大した問題ではなかったのかもしれないが、こうした社会関係的なラット・レースには上限はなかった。ファンド・マネージャーの報酬が彼らの短期的な運用実績によって評価される、という経済取引ゲームのルールによって、社会関係ゲームにおける彼らのラット・レース文化がもたらされた一方、社会関係ゲームをプレイすることによって、経済リスクを内生的に拡大するような経済行動を選択させる動因が生じたというように、経済取引ゲームと社会関係ゲームは連結されていたのである。最大のあやまちは、インセンティブ契約のデザインにあったといえるかもしれないが、いくつかの主要金融機関の目をみはるほどの大失敗が生じた理由は、そうした文化にとりこまれてしまった人々のマインドセットにあったともいえる。これは、ゲームの安定性を根底から揺るがす自己破壊的効果をもたらした不安定なフィードバックの一例である。
186 > かくして社会ゲームのルールの進化プロセスは、複雑で流動的だといえよう。社会ルールの変化は、制定法はもとより政治的企業家によって簡単にデザイン・履行・実効化されるものではない。それは、ゲームを実際にプレイするプロセス、個人的・社会的な認知フィルターを必要とする。そうした進化プロセスをつうじて、特定の外的表象が説得力、信憑性を高め、支配的になるという意味で際立った公的指標としての地位を得たときに、プレイヤーの行動予想はかなりの程度で収斂し、互いに重複し、協調することになる。このようになってはじめて、社会ゲームの新しいルール、ないし制度が創発したといえよう。
187 > したがって制度進化のプロセスは、当然のことながら多くの時間を要し、漸進的にしか進まないことになる。
208 > いくつかの会社による長期雇用へのコミットメント、その外部で自発的・非自発的に実現している人的な認知資産のモビリティは、かならずしも相互背反的だとはいえず、競争に依拠した規律づけという点で補完的だとみなされよう。
214 > こうしたすべての進化的状況があわさって、人々のあいだで行動予想の不確実性が高まっただけでなく、社会が進むべき明確な方向性も見失われた。「失われた10年」というフレーズがなぜ多くの人々の心をひきつけてやまなかったかというと、それは物質的というより、心理的問題だったからである。つまり、当然とみなされてきた人々の行動予想が揺さぶられたのである。
> 会社ドメインにおける進化多様性、
政治ドメインにおける官僚制仲介型交渉国家の漸進的崩壊は、相互に補完し合っており、それぞれ働きを強め合っている。
> 労働力格差が広がった結果、(I型ハイブリッドのクラスターにみられるように)相対的に安定した雇用機会を得ている人々、そうではない人々といった形で人口全体の分化が進展している、という認識が国民のあいだで醸成されつつある。
> 今日、所得、雇用保障、蓄積されてきた認知資産へのアクセス可能性(教育、OJT、フォーマル・トレーニング)などの面で格差が生じているという認識にどう対処するかは、現代日本の公的議論のなかで議論されるべき最も重要な問題の1つになりつつある。
215 > 新しい制度配置がはっきりした形で進化を遂げるには、一世代にも匹敵するほどの時間がかかる、と私は予測する。1990年代初期に現行の制度変化のプロセスがはじまったとすれば、日本はまさに制度変化の道半ばにあるとみなされよう。
217 > 人的資産集約産業では、PHAにたいする残余コントロール権の行使、本質的にはその撤退権は、財産権理論が予測しているほど実効的ではない。株式所有は、不可欠な人的認知資産が協力関係を実現し、企業価値を創造するのを許すものでなければ、何の便益ももたらさない。
218 「経営者」「労働者」が産業に分布している場合。例えばゲーム産業のコア会社/プラットフォーム・プロバイダとサテライト企業
219 > SV型は、いわゆるA&D(買収による開発)、IPO(株式公開)をつうじて、統合型株式会社の内部にRE型のOA様式の創造プロセスを提供する要素であると解釈できる。(…)しかし同時に、このことは、こうした相互関係が創造されても、その後それを維持していくのはかならずしも容易ではないということも示唆する。というのも、被買収企業に含まれていた認知資産はモビリティを持ちうるため、もし適切なインセンティブが提供されなければ、その所有者は買収企業から退出してしまうことがありうるからである。
223 > H型のOAは、ほぼあらゆるところに存在しているが、2つの方向に向けて分岐する傾向がある。すなわちひとつは、機敏な経営者による独特な戦略策定と高いスキルをもつが標準化したタスクに適応した労働者の活用によって特徴づけられ、他は、重量級マネージャーと相対的に低いスキルしか持たない労働者の結合によって特徴づけられる。
226 > すなわちどの経済についても、認知資産の質・水準・志向性を人口のあいだで均等化するのは明らかに不可能だが、社会の安定化、技術・組織アーキテクチャのアップグレード、個の発展などのために、異なるタイプの認知資産全体について可能な限り上昇モビリティを増大させる機会を保障するのが望ましい。この点にかんして、公的部門と会社部門による相互作用の仕方は明確なインパクトを生み出し、その点での試行錯誤のプロセスは、本章第5.1.3節で日本について例示したように、国民国家の性質の実質的な適応をも究極的にはもたらすかもしれない。
234 > 株式市場は、会社の社会関係資本の価値を株価に内部化するようになりつつある。グローバル・コモンズ(環境)にたいする事実上の財産権は、会社部門からグローバル・コミュニティへと急速に移転されつつあるという点に注意を払えば、そうした内部化の動きは予想できないこともない。そして第3章第3.3.4節で論じたように、グローバル・コモンズのコントロールにあたって国民国家の限界を超克しようとする民間レベルのアクティビストであるNGOの活動も存在する。自社の行動を事前に自己統治するか、NGOによる要求にたいして拒絶・承諾の判断を行う、などといった具合に、個々の株式会社による反応はさまざまだろう。こうした「民間」政治交換をつうじて、政府はやがて、私的交渉がもたらす特定の結果を制定法によって模倣・実効化することが適切だということを見出すかもしれない。したがって、われわれはこのドメインにおいても、もっぱらフォーマルな国際合意だけに依存することもできなければ、依存する必要もない。株式会社の自発的行動、株式会社・民間主体間の民間政治交換に加え、国民国家間、国際機関内で行われるフォーラム、交渉はどれも、環境規制の進化プロセスにおいて重要な要素たりうる。
> 多様性が高まりつつある世界において、ルール形成ゲームは、さまざまな次元、相互連関性を持つさまざまなドメインでプレイされなければならない。ルール形成のための単一の集権的メカニズムは、存在しえないからである。さまざまな実験、提案、デザインが私的慣行、公的論議をつうじて提案され、検証され、吟味され、選択されていく。このプロセスにおいて、株式会社が重要なプレイヤーとなることは疑うまでもない。だが、株式会社にたいするわれわれの期待は、社会プロセスにおける株式会社の性質・働きにかんするわれわれの理解にかかっている。本書はささやかながらも、こうした理解に貢献することを意図した。

レビュー投稿日
2011年5月25日
読了日
2012年1月21日
本棚登録日
2011年5月25日
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