教育学を教え大学教育について考えてきた教授は、論文を執筆するだけでなく講義でもその考えを実践してきた。常識やハウツー的マニュアルに頼るのでなく、自ら考える能力はどうすれば形成できるのか?ありきたりなステレオタイプから抜け出し、知識や情報に振り回されない視点とはどのように身に付けられるのだろうか?そのアプローチを、学生に伝えるために丁寧に、丁寧に解説していく良書。
いや、正直そんな新しい発見は無かったんですよ。「書く事で考える」「問いの立て方を掘り下げる」「逆説や関係論的な見方をする」そういった思考法ってこれまで無意識にやってたりするんで。でも、その個々の要素をこれだけ体系的に、きちんとその理由も説明していくことでいままで点で理解した事が面で見えてくる感じ。そして身に付け方についても、基礎から発展の流れできちんと教えてくれる。
最後に。本書では複眼的思考を身に着けるための方法として「批判的読書」を薦めている。それは、手に取った本を初めから非難するような気持ちで接するのではなく、著者と対等な立場になって考える道筋を追体験し、その上で自分だったらどうするかという代案を出す行為だ。そう、この本に対していかに批判的読書を行えるのか?これが、読了者に対する卒業試験だ。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
評論/研究
- 感想投稿日 : 2012年1月24日
- 読了日 : 2012年1月23日
- 本棚登録日 : 2012年1月23日
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