こんにちは、ブクログ通信です。
でんぱ組inc.のメンバー、夢眠ねむさんの『本の本―夢眠書店、はじめます―』(新潮社)発売記念ロングインタビュー第3回をお届けします!
インタビュー第2回では、『本の本』で夢眠さんが訪れた取材先の思い出をうかがいながら、「夢眠書店開店日記」連載をしたあとの影響をお聞きしました。第3回は、夢眠さんが実際に選書した夢眠書店プレ企画「夢眠書店 ~ねむの本棚編~」のことについて、おうかがいします!会場の様子も詳しくレポートしていますので、足を運べなかったかたもぜひお楽しみくださいね。
取材・文/ブクログ通信 編集部 大矢靖之 猿橋由佳
7.「夢眠書店 ~ねむの本棚編~」の舞台裏 ねむきゅん、陳列する
─「夢眠書店 ~ねむの本棚編~」の企画について質問しますね。会場となったAWAJI Cafe and Gallery(以降AWAJIと略)と文禄堂高円寺店(以降文禄堂)に足を運ばせて頂きましたよ。
ありがとうございます。選書、偏ってたでしょう?
─選書は、小説やエッセイが少し多めだと思いました。けれども、夢眠さんのこれまで読んできたもの、関心があるものが充分に表現されていてすごかったなと思います。
ありがとうございます!
─これがギャラリーの外観ですね。

─中にちょっとした地下スペースがあって、夢眠さんの選書とグッズが並んでる。

─コミック『酒のほそ道』があって印象的でした。

これ、帯のついてる本は在庫がなくて並べられませんでした。残念。
最新で書いてるものは「酒のほそ道 37」のあとがきです。私の大好きな漫画! pic.twitter.com/PmMmvgpYT4
— 夢眠ねむ (@yumeminemu) 2015年6月25日
─たくさんのファンが集まってきたからか、残念ながら品切れになってしまったものもありましたね。でも、品切れの本のPOPも飾られていたのはよかったです。

新潮社編集小川さん AWAJI開店翌日に行ってみたんですが、売り切れが多くて、何もなかったです。
売り切れたのもうれしかったですね。
─品切れもまた宣伝になりますからね。さきほど数学の話が出ましたが、『数の悪魔』も並んでましたね。
あの本はおもしろいですね。ちっちゃい時に買ってもらった本でした。

─吉田豪さんの『聞き出す力』も推されていました。
好きなんです。
─吉田豪さんとは面識はおありですか。
仲良しです。私のファーストシングルの帯を書いてくださった時からのご縁です。
─『たぬきゅん もこもこポシェットブック』などのグッズも並んでいました。ここに並んだPOPについては、先のインタビューでおっしゃっていた通り、言葉がベースに書かれてましたね。難しい言葉を使わず、どんなところが好きでした。おすすめです、というポイントが過不足なく書かれていました。
ありがとうございます。
─小技やテクも色々。本によっても薦め方や、紹介の角度が変わっていた気がします。これは、書店さんへの取材などを参考にして生まれた切り口ですか?
仕事柄、よく何かをお勧めする機会があるので。本もそうだし、お菓子だったり、CDだったり、映画だったり、「何かおすすめはありますか?」と聞かれることが多いんです。
でも合わない人に合わないものを買わせるのは違う、と思っている。だから、紹介するものが向いている人を考えて、文章を変えるというか。例えばTwitter向きの文章とInstagram向きの文章って、全然違うと思うんですよね。そういうのを自然に使い分けていて、個別にやった感じです。
─なるほど。今回AWAJIのフェアについては、設営も参加されたんですか?
サーっと様子を見に行って、やっぱり並びがすごく気になってしまって、すでに並んでいるものも見直しました……半分DJみたいな感じで(笑)本と本の流れを考えました。この本とこの本が隣り合わせだと、より良いぞ……というように並べ替えました。
8.「ねむの本棚」売上ベストを振り返る

─今回、「ほんのひきだし」さんの協力で、AWAJIと文禄堂の2店舗で売上がよかったものを調べました。
おお!発表!!
─それぞれの店で売上傾向が違いますね。AWAJIの方では、『ゆめみやげ』が1位でした。
めっちゃいい本なのでこれは売りたかったんです。みんな意外と、この本は情報しか載ってないって思いがちなんですけど、私のカットがしっかり載っているし、コラムも書いてるんです。
「今までのねむちゃん本でNo.1」って言ってくれる人もいるし。おばさまとかにも読んでいただきたいんですよね。
─おばさまに、ですか。確かにここで紹介されてるお土産、人へのプレゼントとしてすごくよいものが並んでいますよね。
ありがとうございます。
─なんかすごい夢眠さんの女性的なところであるとか、食であるとか、色々な細やかなところ、ファンが気になるところも全部含まれている本ですよね。
こんなにいいのに、実はみんなに知られていないというところで、プッシュしたので。この結果には満足です。
─AWAJI売上第2位は『酒のほそ道』でした。
おおー!これも実は巻末にあとがきを書いているんです。色々な人から「読んでる」って言われてすごい嬉しかったんですよ。
『酒のほそ道』で私のことを知ってくれた世代もいるし、著者のラズウェル細木さんの周りにいる飲みおじさんたち、パリッコさんとかも私がそれを書くことにすごく喜んでくれたり。私を酒飲みと認めているおじさん方がっていう。

─AWAJI3位は同率がかなりあったので省略してしまいますが、文禄堂さんの売上1位を見てみましょう。川上未映子さんの『きみは赤ちゃん』ですね。
おお〜!すごい!川上大先生!いいですね。
なぜ棚に入れたかというと私の周りで妊娠、出産をしている友達も、ファンのかたもすごく多くて。ファンの方がファン同士で結婚をして妊娠してます、ってことも多かった。
─そうなんですか?
そういう時って、奥さんに読んでもらって、「旦那にも見せろ!」みたいなことも言いやすい。私が旦那さんの顔もわかるからですね。
この本は、ちゃんとHow toというかエッセイとしてよいものだったので嬉しいです。よい話ですよね。
─川上さんはエッセイと文芸作と書き口がだいぶ違いますけれど、文芸作のほうは読まれますか?
『乳と卵』をはじめ読んでますし、HMVで取材のとき川上さんのサイン本を見かけて、うわ!欲しい!と思いながら取材を続けたりしていました。
─そのなかで、やっぱり先の周囲の結婚・妊娠エピソードもあってこれを選んだんですね。
はい。私は女性として川上さんがものすごく好きで。髪型も一緒なのですごく尊敬してるんです。同じ髪型の女性をすごくチェックしてるんですよ。アーティスト界では草間彌生さんとか(笑)
─そこなんですか!?
やっぱりおかっぱの女っていうのは強いんですよすごく!切り込んで行くかたが多いんで。文芸界のおかっぱとしては、川上さんですね。
─おかっぱチェックすごいですね。
そうですか?楠田枝里子さんも好きです(笑)もう髪型変えちゃいましたけどあの方はチョコを買いにフランスに行くようなかたですから。そういうこだわりの強い女になりたいなっていうのがあって。私は文芸界でおかっぱと言えば川上さんなんです。
─そうなんですね。ありがとうございます。文録堂での売上2位には、星新一さんの『ボッコちゃん』が来ました。
かつては『ボッコちゃん』って全国民が読んでいる印象さえありましたね。小学校の時、朝の読書の棚にあったし、図書館にもあった。ショート・ショートっていうと、星新一を読むじゃないですか。
でももしかしたら今の世代……ケータイ世代とか、ちょっと怖い話が好きな世代にも響く本じゃないかな。文章書きで、あんなに短い期間であんなに発明を繰り返している人は他にいないと思うので、せひ今の世代が読んでくれれば、ということで選ばせていただきました。
─今の世代も教科書で星新一さんを目にするかもしれませんけど、教科書から他の作品を読むっていう人は少なくなったようですね。そういう人が読むと感動する作品だと思います。
そして文禄堂売上の3位は、『モモ』でした。
……最高!『モモ』は本当に大好きで。
─紀伊國屋書店取材のときに「ほんのひきだし」でも言及されていましたね。
AWAJIと売れた本の色が全然違いますね!
─この取材前に『モモ』を読み直しましたけど、ああこういう話だったか、って。現代の批判みたいな箇所もあった。自分にとっての時間の使い方っていうのを改めて考えさせられたし、大人にも示唆を与える童話です。
ね。『モモ』は改めて素晴らしいなって思います。私がちっちゃい時は、「灰色の男」が本当に怖くて、お風呂に入れなくなったりだとかそんなこともあったんですけど。今、改めて読んで、その男たちに感情移入しちゃう。「そういうことがあってこうなってしまったんやなぁ……」とか、そういうのも考えたりして。
─その男たちも途中で……
そう、物悲しい描写もあるし。なんか小さい頃には見えなかった視点で読むことができるし、いろんな時間がなくなっている人たちとして読めるっていうのも、今の自分ならでは、だと思うし。ぜひみんな読んでほしいです。
─AWAJIと文禄堂とでだいぶ売れ方が違いましたが、どちらも品切多数、ってほどよく売れたのは間違いないようですね。
ありがたいです、よかったー。

─『ボッコちゃん』『モモ』などの古典作を入口に、本好きの方がもっと増えたらいいですね。ちなみにPOPについて、作るときの苦労というのはありましたか?
最初、あれはふらっと企画の会場に立ち寄って、「1枚ずつ増やしていきまーす」みたいな構想を練っていて。私が夢眠書店に立ち寄るたびにつけていこうと思ったんです。何度も来て欲しいな、って思いがあったからそうしようと思ったんですけど。
でも1回目に来た時に、まだPOPを書いてない別の本がその人にとって運命の本だったかもしれないし……とも思ったので、行った時にブワーって無心にいっぱい書いちゃったんですよ。あ、いっぱい書いちゃった!と思って(笑)
最初3枚くらい書いて帰ろうと思ってたんですけど。「これ書いたんだったらこれも書かなきゃ」とかあれもこれもして、結局ほとんどのものを一気に書いてしまって。だからあとから継ぎ足すのをやめて、最初からラインナップで貼り出すようにしました。
説明なしでもいい本はPOPを貼り出さなかったんですけど。一応、一言は必要かなという本……たとえば土地柄にあう本ですね。『バイトやめる学校』は、まさに高円寺にいた人が書いた本なので高円寺文禄堂にふさわしいなと思ったし。その店で売れていたこともあって、わざわざ出版社の方が直接追加納品を運んでくれたみたいでしたね。
逆にAWAJIでは「何でこれが置かれてるんだ?」っていうハテナがお客さんにあったと思うので、それについて書いたりとか。そういうことを気にしました。
夢眠さん、ありがとうございました!インタビュー第3回目はここまで。次回が最終回!インタビュー4回目では、選書で苦労した点や、これから考えている企画をおうかがいします。さらに、夢眠さんはアイドルとして、そして本の導き手としてどこへ向かおうとしているか?近日中に公開いたしますので、お楽しみに!
夢眠ねむさん本人による『本の本』紹介動画、まだご覧になっていないかたはぜひどうぞ!
関連リンク
「いろんな人が携って本が作られていることを、どうしても知ってほしくて─でんぱ組inc.夢眠ねむさん『本の本』刊行記念インタビュー(その1)」
「こういう仕事を続けていって知ってもらえることがあるなら─でんぱ組inc.夢眠ねむさん『本の本』刊行記念インタビュー(その2)」
新潮社ホームページ『本の本―夢眠書店、はじめます―』紹介ページ
ほんのひきだし「夢眠書店開店日記」
夢眠ねむさん 公式Twitter
夢眠ねむさん 公式Instagram「nemuqn」
でんぱ組inc.公式ホームページ