評論家の西部邁(にしべ・すすむ)さんが1月21日亡くなりました。78歳でした。ご冥福をお祈りします。
読売新聞「評論家の西部邁さん、多摩川に飛び込み自殺か」(2018年1月21日)
毎日新聞「評論家の西部邁さん死亡 東京・多摩川で見つかる」(2018年1月21日)
経歴:西部邁(にしべ・すすむ)さん 1939年3月15日 – 2018年1月21日)
1939年、北海道生まれ。北海道札幌南高等学校卒業後、東京大学入学。在学中に全学連中央執行委員として60年安保闘争に参加し、新左翼運動を先導。しかし1961年3月に左翼過激派と決別し、大学院に進学。東京大学大学院経済学研究科理論経済学専攻修士課程修了。
横浜国立大学経済学部助教授、東京大学教養学部助教授を務め、カリフォルニア大学バークレー校・ケンブリッジ大学にも籍を置いた。1986年東京大学教養学部教授(社会経済学専攻)就任。放送大学客員教授も兼任。しかし1988年に中沢新一さんの助教授採用をめぐる教授会の採決(否決)に抗議して東京大学を辞職。以降評論活動を続ける。活動のかたわら、テレビ朝日系列の討論番組「朝まで生テレビ」に出演してお茶の間にも名を馳せた。1994年から2005年までは自ら主幹を努める雑誌『発言者』、2005年創刊『表現者』などに関わりながら言論活動を続ける。
主な受賞歴として、1983年『経済倫理学序説』で吉野作造賞、1984年『生まじめな戯れ』でサントリー学芸賞、1992年第8回正論大賞、2010年『サンチョ・キホーテの旅』により芸術選奨文部科学大臣賞。
遺著:『保守の真髄』
西部さんは単著・共著含め多くの著作を世に送り続けました。その中から遺著と、アカデミズム時代の代表作を紹介します。
昨年の2017年12月に発売された『保守の真髄』が、現時点での遺著となりました。もはや筆を取る体力がなく口述筆記で進められたという本ですが、後書きに自裁をほのめかす文章があったことから、様々なニュースがこの本を報じています。
しかしながら西部さんは様々な場で自裁のほのめかしがあり、2000年に発行されている『私の死亡記事』という本の中でも、自らの死因が自殺になることを語っていました。その死についてはスキャンダラスな仕方ではなく、西部さんの思想の一環のなかで考える必要があるかもしれません。毎日新聞「西部邁さん 最後の『保守と死』論 自裁の10日前に言及」(2018年1月23日)という記事が、自裁の意図を示唆するものになっています。
代表作:サントリー学芸賞受賞作『生まじめな戯れ』
大衆社会において自らの拠り所となる価値基準は何か。価値はすべて自分の好みや立場にもとづいて仮設されたものだ、という価値相対主義への懐疑から絶対的なもの「正義」の現代的なあり方を探ろうとした評論集。
代表作:『国民の道徳』『知性の構造』
ブクログユーザーによく読まれているのは東大辞職後、保守論者として評論活動を開始して以降の作品です。その中から、一般にも読まれた二冊をご紹介します。
これからも西部さんの著作が多くの人に読まれることを願ってやみません。