2017年10月26日未明、学習院大名誉教授の篠沢秀夫さんが逝去。84歳でした。心からご冥福をお祈りいたします。
篠沢秀夫(しのざわ・ひでお)さん(1933年6月6日 – 2017年10月26日)
1933年6月6日、東京市大森区(現・東京都大田区)生まれ。学習院大学文学部フランス文学科を卒業したのち、東京大学大学院人文科学研究科仏語仏文学専門課程にて修士課程修了、フランス政府給費留学生試験に合格しフランス・パリ大学へ留学。明治大学教授を経て学習院大学教授、名誉教授。2009年、難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断されて以降も、闘病を続けながら執筆活動に勤しんでいました。2013年、瑞宝中綬章叙勲。
今上天皇とは学習院大学在学中、同級のご学友だったそうです。俳優の児玉清さんの1年先輩で、ドイツ文学科だった児玉さんを「上背があるから」と、当時企画していた仏語劇『ブリタニキュス』主役に抜擢したエピソードがよく知られています。
1976年「クイズダービー」放送後、1枠のレギュラーだった鈴木武樹さんが参院選に出馬。その後任として、和久峻三さんを経て1977年に1枠回答者に入りました。回答者の候補に挙げられた人は100人以上いたそうです。けれども模擬テストでの回答が実に面白かったそうで白羽の矢が立ったそう。実際、番組内ではよく珍回答を連発しながら、「ゆかい、ゆかい」とよく笑っていました。ここからついたニックネームが「ゆかい教授」。『ゆかい教授の女性学』、『ゆかい教授の愛情学』といった著作もあります。
ご存知の通り、篠沢教授は「クイズダービー」によってお茶の間に広く名を知られることになりました。
研究者としての篠沢秀夫さん
クイズダービーの人気回答者というのがパブリックイメージですが、フランス文学の翻訳を多数手がけており、研究者としても知られます。近年は政治について保守的な立場から発言することも増えていましたが、もともと篠沢さんは19世紀以降の「文体」について研究を進めていました。その成果は、著作『文体学の基礎』などに示されています。
学士論文はモーリス・ブランショがテーマで、以後も翻訳に関与。ブランショと直接の交流もあったそうで、篠沢教授ブログ過去の記事にも手紙の存在が示されています。また通称『地獄の季節』(Une saison en enfer)でしられるランボーの散文詩集について、『地獄での一季節』という邦訳を刊行していました。ほかにも多くの翻訳があります。
大学でどのような講義を行っていたか、どのようなフランス文学史への見方を持っていたかは、5冊組の『篠沢フランス文学講義』から読み取ることができます。
篠沢教授の著作は新刊で入手困難なものが多いのですが、古書では比較的容易にみつかるでしょう。興味のあるかたは早めにチェックを。篠沢教授のお仕事が広まることを願ってやみません。