雨の日も晴れやかな気分になれる小説10選!【前編】

こんにちは、ブクログ通信です。

梅雨や台風、ゲリラ豪雨など、年間を通して雨の降る日は少なからずあります。恵みの雨という一面がある一方で、憂うつな気分になったり、外に出るのがおっくうになる人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、雨の日にこそ読みたい小説を選びました。

ブクログのみなさんに、数ある小説のなかでも、とくに雨の日にオススメの10作を紹介いたします。前編ではタイトルに「雨」が使われたり、「雨」がモチーフとなっている作品を、後編では雨の日の鬱屈とした気分が晴れ晴れとするような作品を集めました。ぜひ、雨の日読書の参考にしてみてください。

1.水野敬也『雨の日も、晴れ男』超絶ポジティブ男の生き様から人生を学ぶ!

雨の日も、晴れ男 (文春文庫)
水野敬也さん『雨の日も、晴れ男 (文春文庫)
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あらすじ

二人の小さな神様のいたずらで、アレックスは理不尽なできごとに遭遇しつづける運命となった。しかし、職場をクビになろうと、家が燃えようと、アレックスはそのできごとの中にポジティブなものを見つけだす天才だった。いつでも前向きに生きようとするアレックスの姿から、神様たちは大事なことに気付かされていく——。累計400万部突破の『夢をかなえるゾウ』シリーズ著者による、雨の日にこそ読みたい晴れ男小説。

オススメのポイント!

ちょっとしたことで心が折れそうになる、辛いことが起きても前向きでいられるマインドを養いたいという人にとくにオススメの本作。ユーモラスな文章もたくさんあり、とても読みやすい小説ですので、気分が沈んだり、集中力が続かないという雨の日でもサクサク読めます。読み終わるころにはなんとなく気持ちが盛りあがり、自分もアレックスのように、ポジティブに物事を考えられるようになりたい!と思うのではないでしょうか。

水野敬也さんの作品一覧

アレックスの考え方、前向きで素敵。辛いことも全部捉えかた次第。悲観的になる必要なんてない!

りさんのレビュー

2.長野まゆみ『雨更紗』艶めかしい文章美にうっとりと酔いしれる

雨更紗 (河出文庫―文芸コレクション)
長野まゆみさん『雨更紗 (河出文庫―文芸コレクション)
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あらすじ

よそ者への目が厳しい児手山の土地に昨年、転居してきた丘沢哉。哉は思いつくかぎりの道草を食ったのち、児手山に住む従兄・児島玲のもとを尋ねる。馴染みのない店で「ご贔屓に」と言ってくる紅い着物を着た女。哉の肌を夜光貝に例える画家。哉を自分の弟と思いこむ老婦人。姿を現さない玲。哉とは、玲とは誰なのか。雨夜に哉を抱いたのは幽霊か。こぬか雨の降るような、淡く耽美的な文章が魅力的な珠玉の一作。

オススメのポイント!

熱にうなされ、夢かうつつかわからない薄ぼんやりとした景色を見ているような、独特の空気感のある作品です。謎に満ちた哉と玲の一族について、読者の想像力が試されます。美大卒の著者が描いた装画も幻想的。耽美的な作品や、美少年を描いた作品を多数生み出してきた著者らしい秀作といえるでしょう。この作品が気に入った方には、長野さんが文芸賞を受賞した際のデビュー作『少年アリス』もオススメです。

長野まゆみさんの作品一覧

全ての境界線が曖昧な、水分をたっぷり含んだ水墨画のような話。長野作品に数多く登場する“二人の少年”の中でも、哉と玲の関係は特に異質で、甘美で、哀しかった。この話において「少年の視点で語る」のは重要なポイントだけれど、私は他の誰か…出来れば越智の視点でもう一度この話を読みたい。そうすればきっと、ぼやけた輪郭が実は単純な一本の線で、黒一色だと思われた色彩も暖かさを持っていたのだと気付けるはずだ。

buchiさんのレビュー

3.宮下奈都『静かな雨』鋭い感性が光る、一世一代のデビュー作

静かな雨 (文春文庫)
宮下奈都さん『静かな雨 (文春文庫)
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あらすじ

行助はある年のクリスマス、会社が倒産したことを知った。家に帰る途中、プレハブ建ての店で鯛焼きを買った行助は、その鯛焼きのおいしさに感動する。鯛焼き屋に通ううち、行助はそこで働く女性・こよみと親しい仲になるが、ある日、こよみは交通事故に遭い、三ヶ月間眠り続ける。奇跡的に意識を取り戻したこよみだが、後遺症である高次脳機能障害のため、新しい記憶を短期間しか留めておけないようになってしまっていた。

オススメのポイント!

デビュー作となる本作は著者にとって思い入れが深く、「こんな小説はもう書けない」と語るほどです。絶望的に見える二人ですが、行助はこよみとの生活に希望を見つけようとします。物語全体を通して「静かな雨」が降っているような静謐な文章が連なっていますが、実際に「雨」について描かれたシーンはとくに印象的です。2020年に映画化されました。宮下さんの代表作であり、第13回本屋大賞に選ばれた『羊と鋼の森』もオススメです。

宮下奈都さんの作品一覧

忘れても、残るものがある。育つものがある。経験してきたことや、感じてきたもので自分の世界は創られている。登場人物の思いが自分にたくさんの勇気や温かさをくれる本でした。
『特別な日の特別なできごとを覚えていられないのは、さびしいけれども我慢ができる。僕がこよみさんのぶんまで覚えていればそれでいいと思う。だけど、もっとささやかな、朝ごはんにおいしかった干物だとか、洗濯物を干すときの癖だとか、ふたりで歩いた帰り道に浮かんでいた月だとか、そういう日々の暮らしの記憶が積み重なっていかないことがたまらない。ほんとうは、その些細なことこそが人間をつくっていくのではないか?』

kayoko.さんのレビュー

4.窪美澄『雨のなまえ』生きていると、雨に打たれることがある


雨のなまえ (光文社文庫)
窪美澄さん『雨のなまえ (光文社文庫)
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あらすじ

悠太郎は、日々、母親らしくなっていく妻・ちさとのように、父親らしくなっていくことができずにいた。そんなある日、悠太郎は勤務先に現れた女性客と関係を持ってしまう。出産が迫るにつれ現実逃避するように、不倫相手との情事に溺れていき——。(「雨のなまえ」)生きづらさを感じる登場人物たちの日常と性を赤裸々に暴く。あるときはしとしとと、あるときは激しく降り注ぐ人生の雨模様を描いた五作の短編集。

オススメのポイント!

浮気、不倫、暴力や、夫婦のすれ違いなど、目をそらしたくなるような性と家族の現実に真っ向から立ち向かった作品ばかりです。そのため、短編とは思えないほど、一作一作の濃度が高く、読みごたえがあります。また、後半の三作品はどれも震災をモチーフにしており、現代の日本に生きる私たちに、答えのない問いを投げかけているように感じます。雨の日だからこそ、どっぷりと読書沼にハマりたいという人にオススメの作品です。

窪美澄さんの作品一覧

希望も夢もなく、ただ一日を費やし成果を求めない日々を送る人たちを描く五編の短編集。降り続く雨の季節のような鬱屈した気分になる。もどかしさややりきれなさが重くのしかかってくる。こんな感情を呼び起こすのも、窪美澄さんのテクニックのひとつだと思う。特に『ゆきひら』で一気に落ち込ませた後、最終話『あたたかい雨の降水過程』の意外なエンディングに至る過程は見事。

iyoharuka13さんのレビュー

5.麻耶雄嵩『あいにくの雨で』歪んだ世界観がクセになる、青春ミステリ小説

あいにくの雨で (講談社文庫)
麻耶雄嵩さん『あいにくの雨で (講談社文庫)
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あらすじ

町外れ、雪に囲まれた廃墟の塔で、密室殺人事件が発生した。発見者は三人の高校生、烏兎・獅子丸・祐今。その塔ではかつて、今回の事件と酷似した状況で祐今の母が殺され、容疑者として挙がっていた祐今の父は逃亡していた。そして今回の遺体は、祐今の父。現場に残っていたのは、塔へと向かう一筋の足跡だけ。二つの事件は未解決のまま、呪われた塔では第三の事件が。衝撃の冒頭からラストまで、読み飛ばし不可の濃密ミステリー。

オススメのポイント!

ページを開いてまず、乱丁かと思う人もいるような冒頭シーンから、どんでん返しの展開まで、ミステリの限界を探り続けている麻耶さんならではの破調が繰り広げられます。読者は最初から最後まで麻耶さんの掌の上で転がされつづけますが、だんだんとそれが心地よくなってくる不思議な作家さんです。ミステリに重きを置いている一方で、一つの青春ものとしても楽しめるのが本作の特徴。タイトルも秀逸です。

麻耶雄嵩さんの作品一覧

麻耶雄嵩の小説は、ほっとした次の瞬間にいきなり氷水を浴びせられるような衝撃があるのですが、この『あいにくの雨で』は中でも特別だと思います。閉鎖された村に息巻くしっとりとした猜疑心や当惑が心を冷やしていき、終焉直前にほっとさせられます。それが本当の恐怖ですが。麻耶雄嵩 にはまったきっかけの作品。これもタイトルにやられました。

momonacchiさんのレビュー

雨の日はなんとなく思考が内向きになりジメジメしてしまうもの。ですが、外側に目を向けることで、トキメキに満ちた世界が広がっているかもしれません。上記10作を参考に、雨の日読書を楽しんでみてくださいね。