雨の日も晴れやかな気分になれる小説10選!【後編】

こんにちは、ブクログ通信です。

ブクログのみなさんに、数ある小説のなかでも、とくに雨の日や梅雨シーズンにオススメの10作を紹介いたします。前編ではタイトルに「雨」が使われたり、「雨」がモチーフとなっている作品を、後編では雨の日の鬱屈とした気分が晴れ晴れとするような作品を集めました。ぜひ、雨の日読書の参考にしてみてください。

6.舞城王太郎『阿修羅ガール』混沌の果てに見る、現代の映し鏡

阿修羅ガール (新潮文庫)
舞城王太郎さん『阿修羅ガール (新潮文庫)
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あらすじ

アイコは自尊心を傷つけられ、同級生・佐野をホテルに置き去りにした。翌日、佐野は行方不明になっており、自宅には切断された指が送られてきたという。あらぬ嫌疑をかけられたアイコは、六年にわたり思いを寄せる幼なじみの陽治と佐野探しを始める。一方、街では三つ子を殺した「グルグル魔人」が暴走し、匿名掲示板「天の声」では中学生狩りが過熱していた。東京と魔界の狭間で、アイコが見つけたものとは——。

オススメのポイント!

東京の話かと思いきや、空想の世界や魔界へと飛び出したりと、理解が追いつく前に物語が通り過ぎていってしまうような、疾走感とカオスを感じる作品です。一体、著者の頭の中はどうなってるの……?と翻弄されながら読むのも楽しいでしょう。雨が降っていることを忘れさせてくれそうな没頭本。物語に振り回されないよう、しがみついて読んでみてください。第16回三島由紀夫賞受賞記念の短編、「川を泳いで渡る蛇」併録。

舞城王太郎さんの作品一覧

女性主人公が女性らしく強かに成長する話が好きな人におすすめ
主人公のわざと悩みつつもそこで成長を感じさせるのが大好き。主人公の気持ちも行動も強く共感できるし、文章が文語体で読みやすく、勢いもある。何度読み返しても新しい発見があり、読む度に感動してる。

worldyさんのレビュー

7.三浦しをん『仏果を得ず』お仕事小説に定評のある著者が「文楽」を語る

仏果を得ず (双葉文庫)
三浦しをんさん『仏果を得ず (双葉文庫)
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あらすじ

人形浄瑠璃・文楽の若手大夫である健は、三味線の実力者でありながらも妙な噂の絶えない兎一郎と組むことになった。厳しい芸事の世界で、師匠や兄弟子、兎一郎たちに揉まれながらも、健はメキメキと上達していく。寝ても覚めても文楽浸けだった健だが、ある女性との恋をきっかけに、芸か恋かという命題に悩み始める。一芸を極める道を選んだ健が、芸事だけでなく、人間的にも成長していく様子を描いた文楽青春小説。

オススメのポイント!

国語辞典の編纂者たちを描いた『舟を編む』で本屋大賞を受賞するなど、マイナーな職業にスポットを当て、表現することに長けた三浦さんらしいお仕事小説です。文楽という芸事の世界を垣間見られるので、非日常のワクワクを感じることができます。劇場へ足を運んだような気分にもなれるので、お出かけできない雨の日にも没頭できる作品。同著者による文楽に関するエッセイ本『あやつられ文楽鑑賞』もオススメ。

三浦しをんさんの作品一覧

文楽という新世界を開かせてくれた!主人公の健が義太夫の芸の道を悩みながらも猛進する姿がすがすがしかった。現実の恋と人形浄瑠璃の世界のどうしようもなく人間くさい恋がうまく合わさって健が語りながら主人公になりきっていくところが素晴らしかった。師匠をはじめ個性的な人々がみんな愛らしい。文楽ってちょっと敷居が高かったけど、昔も今も変わらないんだなと思った。観に行ってみよっ!

mao2catさんのレビュー

8.坂木司『女子的生活』〈刷り込み〉に流されるのはもうやめよう!

女子的生活 (新潮文庫)
坂木司さん『女子的生活 (新潮文庫)
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あらすじ

ブラックなアパレルメーカーに勤務するOLのみきは、同僚たちとともに、忙しいながらも憧れの「女子的生活」を満喫していた。しかしある日、自宅マンションへ帰ると、部屋の前に不審な男の姿が。マウンティング、モラハラ、毒親と、日常に次々と立ちはだかる強敵を前に、みきは持ち前の芯の強さで立ち向かっていく。「普通」とは、「自分」とは何か、考えるきっかけをくれる、痛快ガールズストーリー。

オススメのポイント!

人は誰しもなんらかの「刷り込み」に晒されています。女性蔑視やトランスジェンダー、人種差別などの問題が日々、少しずつ議論されている今、多くの人に読まれてほしい小説です。扱う問題は決して軽いものではないですが、みきの明るい口調で語られる物語は、読む者に元気を与えてくれます。気分が晴れやかになる読後感の作品ですので、雨の日にもオススメです。2018年には志尊淳さん主演でテレビドラマ化を果たしました。

坂木司さんの作品一覧

NHKのドラマが面白かったので、原作を読んでみた。トランスジェンダーで女子が好きなみき。彼女の差別と偏見に対する態度が爽快。ガールズトーク炸裂も面白い。女子はこんなふうに考えているのか。そして何よりも大きな存在が、みきの同居人である後藤。彼のフラットさと熱さが、物語をブレないものにしている。

ともてぃさんのレビュー

9.柚木麻子『私にふさわしいホテル』文学史上、もっとも不遇な新人小説家の奮闘を描いたドタバタコメディー

私にふさわしいホテル (新潮文庫)
柚木麻子さん『私にふさわしいホテル (新潮文庫)
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あらすじ

文学新人賞を受賞し、小説家になれる!と思っていた加代子。しかし、同時受賞者である元・人気アイドル女優に注目を奪われてしまう。昼も夜も働き通しでフリーターと変わらない生活を送る加代子だが、毎年かならず同じ日に、山の上ホテルで自腹カンヅメをしていた。そこへ、大手出版社に勤める大学時代の先輩・遠藤がやってきて、真上の部屋には大御所作家・東十条宗典が滞在と聞く。それを知って加代子は、思い切った行動に出る。

オススメのポイント!

まったくツキを感じないデビューをした加代子ですが、小説家として認められたい一心から、さまざまなことを企て、遂行していきます。小説として面白いだけでなく、加代子のような激情、バイタリティーがなければ小説など書けないのかも……と思わせられます。小説家という職業の舞台裏や、現代の人気作家たちが登場人物として書かれているのも読書好きにはたまりません。雨の日読書にもピッタリの、気分がアガる一作です。

柚木麻子さんの作品一覧

数々の理不尽をパワーと機知で乗り越える女性作家加代子の物語。パワフルな人を見るとこっちも元気になる。加代子は、私のイメージでは、アスファルトに咲くタンポポみたいな感じがする。抽象的に言えば華やかでがむしゃらな人間だ。決して楽してないから僻んだりせず「私も頑張ろう」と思える。人気アイドルに世の関心をかっさらわれたことに劣等感を感じる加代子。その悔しい!って感情がパワーの源なのかしら。「負けて当然と思っちゃいけない。だって主人公は私だぜ?」という小説。大好き。

猫に小説さんのレビュー

10.小路幸也『東京バンドワゴン』心強くもあり、おせっかいでもある。家族の力を感じる人情物語

東京バンドワゴン (集英社文庫)
小路幸也さん『東京バンドワゴン (集英社文庫)
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あらすじ

東京の下町で、明治18年より続く老舗古本屋「東京バンドワゴン」を営むのは、四世代の大家族。三代目店主の勘一を大黒柱に、60歳にして伝説の金髪ロッカー・我南人、画家で未婚の母・藍子など、一癖も二癖もある八人家族が、一つ屋根の下、朝から晩まで感情を剥き出しに生きていく。一風変わった家訓に従い、季節ごとに起こる事件を解き明かしていく堀田家の一年を追った、人情味溢れるホームドラマの決定版。

オススメのポイント!

古き良き昭和の香りが漂う本作は、語り手を故人が担っているのも魅力。76歳で他界した勘一の妻・サチの視点で進行する物語は、家族への愛に溢れ、温かみを感じるものになっています。今では珍しい大家族の日常が綴られ、人肌の温度が恋しくなります。2013年、亀梨和也さん主演でテレビドラマ化された際のキャッチコピーは、「ただいま、おかえり、LOVEだねぇ」。シリーズ最新作は第15弾『イエロー・サブマリン』です。

小路幸也さんの作品一覧

予想以上にとても面白かった。NHKのホームドラマ観てるみたい。下町人情あふれる大家族の賑やかな日常と、ミステリーのような先が気になる展開。そして訪れるハッピーなラスト。小説独特の読みにくい感じもないので、普段小説を読まない人にもおすすめできる。あったかいエンターテインメント作品。

百子さんのレビュー

雨の日はなんとなく思考が内向きになりジメジメしてしまうもの。ですが、外側に目を向けることで、トキメキに満ちた世界が広がっているかもしれません。後編5作品を参考に、雨の日や梅雨シーズンの読書を楽しんでみてくださいね。