こんにちは、ブクログ通信です。
柔らかな色調の水彩画と独創的な作風で、世界中から高い評価を受けた画家・安野光雅さん。教員を経て35歳で画家として自立した安野さんは、科学・数学・文学にも造詣の深い芸術家として知られています。1968年に発表した初めての絵本作品『ふしぎなえ』は、不可能図形の不思議な世界観が世界中で評判となりました。1974年には芸術選奨新人賞や講談社出版文化賞など、いくつもの芸術賞を受賞しています。その後も、国内外で多くの賞を受賞し、2012年にはその功績が認められ文化功労者の称号を得ました。
ブクログから、そんな安野さんの傑作絵本を5作紹介いたします。どこか懐かしい温かみのある色使いと、緻密に描きこまれた絵による唯一無二の世界観が楽しめる絵本たちです。これから先もずっと読み継がれるであろう名作の数々、ぜひチェックしてみてくださいね。
『安野光雅(あんのみつまさ)さんの経歴を見る』
1.安野光雅『旅の絵本』 あなただけの物語が生まれる、著者代表作絵本

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あらすじ
『いろいろ探して想像しながら見てください。絵を見る人の想像の方が、わたしの説明より正しいかもしれないのです』——安野光雅。緻密で繊細な風景画の中に、よく見ると童話の主人公や名画、誰もが知っているあの人物などが紛れ込んでいます。作者の遊び心が詰まった、世界各地を巡る絵本シリーズ第1作。
おすすめのポイント!
安野光雅さんの代表作の1つです。文章は一切なく、純粋に絵を楽しむための絵本となっています。細部まで丁寧に描かれた風景画は、見れば見るほど心奪われる不思議な魅力にあふれています。遠景で見た時の美しさはもちろん、細部に目を凝らすほど、愉快な「仕掛け」に気づかされる作品です。読み終わるころには、本当に旅をした気分になれるでしょう。シリーズ第1作となる本書は「中部ヨーロッパ編」です。第2作のイタリア編、第3作のイギリス編と続き、シリーズは全部で8冊。手元に揃えて末永く楽しみたくなる、素敵な絵本です。
テレビで「新美の巨人たち 安野光雅『旅の絵本』×片桐仁」を見て図書館で借りてみた。安野光雅さんは知っていたし、幼少期何冊か絵本を読んだこともあったと思うけど、この『旅の絵本』は初めて読んだ。テレビ番組を見たからか、大人になった今だからか、この絵本の良さがすごくわかった。海の波がひとつひとつ描かれていて、草が繊細な線で細かく描かれている。絵も美しいが、名画を模した風景や童話の一場面も描かれていて、見つけた時の喜び・探す楽しみもある。こちらの教養を試されそうだが…。人々の営みがありのままに描かれていて、ずっと眺めていられる。娘も気に入ってくれたようで夜寝る前に二人で読むが、なかなか読み終われず寝るのが遅くなってしまうのが少し困ったところ。次作のイタリア編も楽しみ。
2.安野光雅『天動説の絵本』 美しい装丁と重厚な内容が魅力!未来まで読み継ぎたい1冊

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あらすじ
全宇宙の中心は地球だと、誰もが信じていた頃。人々の考える世界とはどんな風だったのでしょう。中世の人々が信じたもの、考えたこと、そして天動説と地動説。現代の私たちにとって常識となったことが、どう生まれ、どう信じられるようになったか……。古代壁画を思わせる美しい絵に彩られた、大人も子供の楽しめる科学絵本。
おすすめのポイント!
天動説が信じられていた時代に視点を据えた、ユニークな切り口の科学絵本です。宗教画のような雰囲気の絵が物語の世界観を引き立てています。絵本という形をとってはいますが、描かれている内容は本格的です。なぜ古代の人々は天動説を信じたのか、当時の「世界」に対する考え方とはどんなものだったのか、を詳しく知ることができます。また、まるで古文書のような美しい装丁も見どころの1つ。本棚に飾っておきたくなるほどです。絵本としても魅力的かつ、科学や数学の学びにも役立つ絵本となっています。贈り物としても人気です。
天動説、地動説を説明したものではなく、解説にあるように「天動説を信じていたころの人びとは、世界がどのようなものだと考えていたか」書かれています。絵はもちろん、文章も語りかけるようで難しくありません。芸術作品とも言える本です。
3.安野光雅『はじめてであうすうがくの絵本 1』 数学の面白さを教えてくれる名作絵本

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あらすじ
数学の原語「Mathematics」の意味は、「ものの考え方」というような意味だったのだとか。今では「数学」は、すっかり難しいイメージの学問になってしまいました。発見や創造の楽しさ、思考する面白さ、わからない口惜しさ……それこそが、数学の本質なのかもしれません。さまざまな「気づき」が散りばめられた、遊び心いっぱいの数学絵本。
おすすめのポイント!
大人も子供も一緒になって遊べる、数学について学べる絵本です。「なかまはずれ」「じゅんばん」など、小さな子供にも親しみやすいテーマで、数学の基本概念を学ぶことができます。数学が苦手な人にもおすすめです。本書を読むと、作者からの「数学は楽しい。数学は難しくないよ」というメッセージと遊び心が感じられます。数学や科学にも造詣の深い安野さんだからこそ描けた絵本だといえるでしょう。数学をまだ知らない子供から、数学とは縁遠くなってしまった大人まで、幅広い世代に読み続けてほしい名作絵本です。
数に親しむよい本 すうがくの本という名前であるが、かたぐるしくはない。 安野光雄の独特の絵で、数について馴染みやすい。 もっと難しい数学の本も、安野の挿絵つきになればよいと感じさせる。
4.安野光雅『あいうえおの本』本を開けば空想が広がる!日本語の魅力を詰め込んだ1冊

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あらすじ
長年構想を練り続けた著者が贈る、「あいうえおの本」の決定版!見ているだけでも楽しくなる上に、「文字との出会い」にぴったりの1冊。左ページはひらがなの文字が、右ページにはその文字から始まる物が描かれています。よく見れば、背景にもさまざまなものが隠れていますよ。親子で楽しむのはもちろん、大人の観賞用にもおすすめしたい美麗な作品。
おすすめのポイント!
「あいうえおの本」はたくさん出版されていますが、安野光雅版は絵の美しさと緻密さが魅力です。左ページのひらがなは木で作ったように描かれており、温かみを感じさせます。文字への興味をそそると共に、じっくり眺めていたくなる絵画的魅力にもあふれているのです。右ページでは、緻密な描きこみに引き込まれます。想像力を刺激される、楽しい学びの世界へ誘われる絵本です。一度ページを開けば、ついつい時間を忘れて見入ってしまうことでしょう。姉妹作の『ABCの本』もおすすめですよ。
まず、見開いた左側の文字の木目・繋ぎ目に見入ってしまった。右側の絵も想像力を働かせるようになっていて楽しい。
5.安野光雅『ふしぎなたね』何度読み返しても、新たな学びと発見をくれる作品

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あらすじ
あるところに、怠け者の男がいました。ある日、男は仙人から「ふしぎなたね」をもらいます。その種を食べると「1年間おなかがすくことはない」のだといいます。けれど、種を食べずに地面に埋めると、「1年後には2個実る」らしいのです。男はその種をどうしたのでしょう——。2の倍数についてお話感覚で学べる、愉快な数学絵本。
おすすめのポイント!
昔話のような優しい雰囲気の数学絵本です。柔らかい色調の絵とのんびりとした物語仕立てで、子供にも大人にも親しみやすい1冊だといえます。日常生活でも接する機会の多い「2の倍数」。この絵本は、物語を楽しんでいたら「2の倍数」の概念についても学べているという、まさに一石二鳥な本なのです。また、この作品は「あとがき」も素晴らしいので、ぜひお手元に据えて何度も繰り返し読んでみてはいかがでしょうか?
読んでいる本の中で、子どもにシステム論を考えさせるのに向いている本として紹介されていたので借りてみた本。算数の本だけれども、普通に面白かった。
安野さんがつくる絵本は、読んで楽しいのはもちろん、芸術的美しさと学びにも触れることができます。読むほどに奥深いメッセージを感じられる名作揃いなので、ぜひ一度手にとってみてくださいね。