【朝井リョウさん】おすすめ10選!前編~人間の弱さを優しく掬いあげる名作揃い~

こんにちは、ブクログ通信です。

朝井さんは、大学在学中の2009年、『桐島、部活やめるってよ』で第22回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2013年には『何者』で第148回直木賞を受賞。この受賞は、平成生まれの作家としては初であり、男性では最年少の受賞となり、大きな話題となりました。2021年3月刊行の最新作『正欲』は、ブクログ「本」週間ランキングで4週連続1位となるなど早くも衆目を集めています。

現代を生きる人々の、声なき声を拾うような作品の多い朝井さんの作品の中から、文庫化されているオススメの10作を発行年順前編5作品を紹介いたします。あらすじやオススメのポイントを読んで気になる作品からぜひ手に取ってみてくださいね。

『朝井リョウ(あさい りょう)さんの経歴を見る』

朝井リョウさんの作品一覧

1.朝井リョウ『桐島、部活やめるってよ』未熟さと脆さと残酷さと。等身大の17歳を切り取ったデビュー作

桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)
朝井リョウさん『桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)
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あらすじ

とある田舎の県立高校で、男子バレー部の頼れるキャプテンだった桐島。彼は誰にも理由を告げず、ある日突然、部活を辞めた。日常という池に投げこまれた小さな石が、五人の同級生たちに波紋を広げていく。野球部のユーレイ部員・宏樹、男子バレー部補欠・風助、ブラスバンド部部長・亜矢、映画部・涼也、バドミントン部・実果。表面的な交わりで過ぎていく各人の学校生活は、桐島の退部をきっかけに徐々に変化していく。

オススメのポイント!

五人の登場人物を各章のタイトルとしたオムニバス形式で書かれているため、誰か一人の考えに偏ることがありません。集団の中にいるからこそ孤独を感じたり、自分の立ち位置を探りながら居場所を確保したり。そんな、誰もが経験したことのある感情の揺れ動き、打算やずるさが書かれているにもかかわらず、陽だまりに包まれているようなあたたかみのある作品です。2012年には神木隆之介さん主演で映画化を果たしました。

きっと誰しもが思い当たる学生生活で、きっと私もその世界観から未だに抜け出せずにいるんだろうなって思った。何かに熱中するのが羨ましくて未だにそんな光を追いかけている。何にもなれない自分に焦って、高校時代よりも大学の方が将来のことしっかり考えなきゃいけないのに逃げてばかり。ダサかったとかいいながらも遮二無二に部活に励んでいた学生時代に嫉妬してる。胸がきゅーっと締め付けられて熱くなる、そんな本だった。読む人よって解釈の仕方が様々な本だと思う。私は大満足の大好物でした。

ainalaend さんのレビュー

2.朝井リョウ『もういちど生まれる』輝いた世界の中で、輝けないたった一人の自分

もういちど生まれる (幻冬舎文庫)
朝井リョウさん『もういちど生まれる (幻冬舎文庫)
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あらすじ

彼氏以外の人からキスをされた汐梨。チャラそうに見えて一途な翔太。母親に複雑な気持ちをぶつけられずにいる新。双子の姉が好きになれない梢。才能の限界を感じながらもダンスを続ける遙。焦りとプライドに揺れ動く若者だけが感じている世界は、オノマトペと輝きに満ちている。特別な誰かを羨み、特別になりきれない自分に苦しむ彼らは、それでも自分だけの何かを掴みとろうと、悩みながらも一歩を踏み出していく——。

オススメのポイント!

誰かと比べて秀でていない自分への焦り。努力して形になるものと、努力しても追いつけない才能。少ない恋愛経験の中での探りあい。若さという特権を享受しながらも、大人との狭間で揺れ動く、19歳ならではの焦燥感が描かれています。登場人物たちはどこかで繋がっており、連作短編集という形を取っているので、読み進めるにつれ、どんどんページをめくる手が早くなっていきます。最近焦っているかも、という人にオススメです。

5つの短編がパルプフィクションのようにどこかで少しずつ繋がっているお話です。最初の「ひーちゃんは線香花火」を読み終わって時、最後涙が出ました。「そんなのたいしたことじゃない」と、そうされた事によって何も壊れないし変わらない、今の自分の気持ちがすべてなんだと、思うことを許されたような、私が考えている気持ちを許可されたような、心地よいお話でした。「才能」と「努力」が若者の心の中で揺れ動く、それでも人の心の中はどうなのかなんて、その人にしかわからない。その人にはその人の悩みがあって、癒されるものを求めて自分に問いかけて生きていく。そんな気持ちの表現を朝井リョウはいつも代弁してくれます。

Kaniさんのレビュー

3.朝井リョウ『何者』「カッコ悪さ」を受け入れよ

何者 (新潮文庫)
朝井リョウさん『何者 (新潮文庫)
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あらすじ

御山大学の演劇サークルで脚本を手がけていた拓人は、同居人・光太郎の引退ライブで瑞月と再会する。光太郎の元カノである瑞月に、拓人は密かに思いを寄せつづけている。再会をきっかけに瑞月の留学仲間の理香、その同棲相手である隆良を含めた五人は、「就活対策本部」と銘打ち、理香の家に定期的に集まることに。SNS上や面接で語られる本音と自意識は錯綜し、次第に五人の関係は変容していく……。

オススメのポイント!

就活生たちが、たった一人で社会と向きあう苦悩に迫っています。Twitterでのやりとりや裏アカウントでの呟きを取りいれた手法は、現代の若者の切り取り方として見事としかいいようがありません。就活生あるあるに思わず頷くシーンもありますが、社会人として日々を送る多くの大人にとっても、強く響くセリフが散りばめられています。2016年には佐藤健さんら豪華キャストを迎え、映画化されました。

ここまで面白いなんて。朝井リョウという作家を過小評価していたのかもしれない。就活がテーマということで、リアルなあるあるネタを散らしてあるだけかと思ったがそうではない。SNSを巧みに用いて、若者の人間関係の在り方をよく描いている。今回はテーマとして、たまたま就活が適していたというだけなのだろう。話もそれほど起伏があるわけではないのに、なぜか読む手が止まらない。ラストも見事。良書としておすすめ。

mktrさんのレビュー

4.朝井リョウ『世界地図の下書き』人生には、逃げる「覚悟」が必要なときもある


世界地図の下書き (集英社文庫)
朝井リョウさん『世界地図の下書き (集英社文庫)
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あらすじ

両親を交通事故で亡くした小学生の太輔は、児童養護施設「青葉おひさまの家」で暮らしている。太輔が小学校を卒業する年、施設の中では精神的な柱となっていた年上の佐緒里は、高校卒業とともに施設を卒業することに。佐緒里に憧れのような好意を抱いていた太輔は、かつて町で行われていた「蛍祭り」を復活させる計画を立てはじめる。佐緒里の願いを叶えようと、ランタンを飛ばす「願いとばし」を復活させるため、奮闘するが——。

オススメのポイント!

いじめや虐待などを受けてきた子どもたちの未来に光を当てるような本作は、「大人も子どもも共有できる優れた作品」に贈られる坪田譲治文学賞を2013年(第29回)に受賞しています。「今、ここ」が辛くても、「これから先、どこかで」待っている幸せに一歩ずつ近付いていく勇気をくれます。自分で居場所を決めることが難しい年齢の子どもたちや、「今」を変える自信が持てない人に、とくに手に取ってほしい作品です。

児童養護施設が舞台。挑戦すること。そこには逃げることへの挑戦も含まれていること。必ず悪は存在するけれども、希望も同じく存在すること。胸ぐらを掴まれるような、悲しみの底を見据えた上の未来へ続く物語でした。

本≒人生さんのレビュー

5.朝井リョウ『スペードの3』革命を起こすのは自分だけだ

スペードの3 (講談社文庫)
朝井リョウさん『スペードの3 (講談社文庫)
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あらすじ

小学生時代には学級委員としてクラスの統率を取ったこともある美知代は、その才覚を活かし、ミュージカル女優・香北つかさのファンクラブ「ファミリア」のまとめ役を担っていた。しかし、ファミリアに入会した小学生時代の同級生・アキの出現により、美知代の地位は脅かされてしまう。アキの狙いはなんなのか。美知代、アキ、つかさ、三人の人生が交差するとき、一人ひとりの魂に「革命」が起こる。

オススメのポイント!

大富豪になぞらえて「スペードの3」「ハートの2」「ダイヤのエース」というタイトルをつけられた3つの短編からなる小説です。「革命」は待つものではなく起こすものであり、日々の積み重ねが自分を作っていくのだと感じさせられます。また、本作は朝井さんが初めて「社会人」を扱った意欲作でもあります。朝井さん自身も、自分の殻を破るという意図をもって書かれたのかもしれませんね。現状に満足できない人にオススメです。

嫉妬、焦り、優越感…朝井さんは、人間の表に出さない感情を炙り出すのが本当にうまい。本作は特に「優等生」と言われる人たちの劣等感を、グサグサと刺してくる。面白くてあっという間に読んでしまうけど、ぐったりとした余韻が残る。これが癖になってしまうんだなー。

もちこさんのレビュー

「正しさ」は人それぞれであるということをテーマにしたものが多い朝井さんの作品。アイドル、就活、エッセイ、オマージュ作品と彩り鮮やかです。爽やかな中にも毒が潜む朝井作品、ぜひ読み進めてみてくださいね。後編5作品もお楽しみに!