こんにちは、ブクログ通信です。
浅倉秋成さんは、2012年に第13回「講談社BOX新人賞“Powers”」で、Powersを受賞した長編小説『ノワール・レヴナント』で作家デビューしました。同時投稿作の『フラッガーの方程式』も2013年に書籍化されています。その後も話題作を続々と発表し続けている浅倉さんは、『六人の嘘つきな大学生』で「ブランチBOOK大賞2021大賞」を受賞し注目を集めました。同作は第43回「吉川英治文学新人賞」候補および第22回「本格ミステリ大賞小説部門」候補となった他、第19回「本屋大賞」第5位にも入賞しています。
そんな浅倉さんの作品の中から、本好きのみなさんに高く評価されている5作品を紹介いたします。ブクログ内で人気の作品ばかりです。ぜひ最後までチェックしてみてくださいね!
『浅倉秋成(あさくら あきなり)さんの経歴を見る』
1.浅倉秋成『俺ではない炎上』ネット上で殺人犯にされた男の手に汗握る逃亡劇

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あらすじ
大学生の住吉初羽馬は、ある日SNSで奇妙な投稿を見つけた。殺人を示唆する内容だ。投稿は瞬く間に拡散され、アカウントの持ち主が判明する。大手ハウスメーカーに勤める山縣泰介という男らしい。個人情報が特定され、ネット上では大炎上となった。ところが、山縣自身にはアカウントを開設した覚えも、殺人を犯した覚えもない。日本中の人間を敵に回した山縣は、必至の逃亡を続けながら事件の真相を探り始めるのだった。
おすすめのポイント!
SNSでの炎上、ネットリテラシー、情報拡散のリスクといった、現代社会ならではの問題に切り込んだ社会派ミステリーです。殺人犯に仕立て上げられた男が、孤立無援の状態で真実に迫ってゆくスリリングな展開に、読む手が止まらなくなります。ネット社会のデメリットや恐ろしさが臨場感たっぷりに描かれている作品なので、誰もが「自分だったら……」とリアルな恐怖を感じるはずです。一発逆転はあるのか、意味深なタイトルは何を指すのかなど、最後まで読み応えのある作品なので、ぜひ手に取ってみてください。
テンポが良くて読む手を止められませんでした…SNSの怖さは勿論だけれど、この小説を読んで思ったのは自分の正しいは誰かにとっては正しくないし、誰かの正しいは自分にとっては正しくないことが日常にたくさんあることを改めて考えさせられる内容でした。
2.浅倉秋成『九度目の十八歳を迎えた君と』大人にならない少女の謎に迫る青春ミステリー

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あらすじ
印刷会社で働く間瀬は、ある朝、駅のホームで同級生の姿を見つけた。高校のときクラスメイトだった少女・二和美咲だ。あれから何年も経っているというのに、彼女は18歳のときと変わらない姿で、高校の制服を着ている。数日後、間瀬は下校中の二和と再会し、彼女がまだ18歳のままで、今も高校に通い続けていることを知るのだった。彼女に何があったのか——間瀬は二和が18歳のままでいる原因を探り始める。
おすすめのポイント!
「18歳を繰り返す少女」というユニークな設定が光る青春ミステリーです。ごく自然に大人になり、社会人として辛いことや面倒なことを抱えつつも、日々を実直に生きている間瀬。一方、18歳を何年も繰り返し、一人だけ青春時代のままで居続ける二和。そんな対照的な二人を軸に、「大人になるとはどういうことか」「なぜ子供のままで居られないのか」といった普遍的な問いに切り込む作品となっています。今大人である誰もが、一度は味わったことがある葛藤や苦しみが丁寧に描かれており、読む人の心をギュッと掴む、印象的な作品です。
終盤のの間瀬と二和が対峙するシーンは二和の言葉にドキッとした。私は今大学生で子供でも大人でもない曖昧なところにいると思う。この先の人生はどんなことがあるかわからない。今いるところでの最善の跳躍を決めていくしかない。とても心に沁みた。
3.浅倉秋成『教室が、ひとりになるまで』「最高のクラス」での連続死をめぐる切ない人間ドラマ

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あらすじ
私立北楓高校で、生徒の自殺が相次いで起こった。一人はトイレで首を吊り、二人は校舎から飛び降りたのだ。自殺した生徒たちは、同じ文言の遺書を残していた。「自殺なんかじゃない。みんなあいつに殺されたの」——自殺だと思われた三人の死に、同級生の白瀬美月が異議を唱える。一方、美月の幼馴染・垣内友弘は、不思議な手紙を受け取っていた……。
おすすめのポイント!
第20回「本格ミステリ大賞」小説部門、第73回「日本推理作家協会賞」の長編及び連作短編集部門の候補作です。とある高校で起きた生徒の連続自殺、それは「みんなが仲良しの最高のクラス」での出来事でした。不思議な手紙によってある力を得た主人公は、事件の真相に迫ります。一見平和で楽しそうな高校生たちの日々に、スクールカーストや同調圧力といった闇が見え隠れする描写が見事です。明るさと不穏さのバランスが絶妙でハラハラさせられ、先へ先へと読み急ぎたくなるので、ぜひじっくり腰を据えて読むことをおすすめします。
一人になりたいけど一人では生きられない。そんなもどかしさの中で必死に息を潜めながら過ごしている人たちがここにいた。「教室が、ひとりになるまで」という意味が最後になって理解できた。
4.浅倉秋成『フラッガーの方程式』予想を裏切る展開と伏線回収が見事なラブコメ劇

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あらすじ
現実において、誰もが物語の主人公になれるシステム——それが「フラッガーシステム」だ。平凡な高校生の東条涼一は、ある日、フラッガーシステムのモニターに選ばれる。このシステムを使えば何もしなくても”フラグ”が立ち、物語の主人公のような特別な日々を過ごせるのだという。システムそのものに懐疑的だった涼一だが、憧れの佐藤さんとのラブロマンスを期待して、モニターを引き受けるのだった……。
おすすめのポイント!
『物語の主人公になってみたい』という、誰もが一度は考えたことがある願いが実現したら……を描く、ロマンあふれる物語です。ただし、この作品の特徴かつ難点なのが、「深夜アニメのような物語の主人公になれる」ということでしょう。両親の突然の不在や好きな人とのドキドキハプニング、恋心をめぐるドタバタなど、深夜アニメ「あるある」が現実に起きたらどうなるか、を真面目に描いた作品なのです。緻密な伏線により思わぬ方向へ進んでゆく波乱のストーリーと涼一の恋の行方を、ぜひご自身の目で見届けてください。
『フラッガーシステムによって構築されたストーリーは的確な伏線を張り、余す所なく美しく回収、誰もが納得のいく物語を作り上げてくれます』下らない、下らなすぎるが、しかし確かに最高であった。これはいい荒唐無稽っぷりだ。斜に構えてそうで、フィクションに対する愛情に溢れているのがとても良い。前半のコメディパートには何度もクスッとさせられたし、クライマックスは、もちろんご都合主義なのだが、それでも非常に満たされた気分になりました。
5.浅倉秋成『ノワール・レヴナント』絶賛の声多数!圧巻の完成度を誇る著者デビュー作

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あらすじ
高校生の大須賀駿には特殊な能力がある。他人の背中に、その人の幸福レベルを表す数字が見えるのだ。基本値は50なのだが、ある日、同級生の弥生の背中には85という数字があった。弥生の幸運にあやかろうと行動を共にしていた駿は、自分と同様に不思議な力を持つ仲間たちと出会う。記憶、予知、破壊——特殊能力を持つ4人の高校生たちは、ある少女の死によって結びつけられていた。
おすすめのポイント!
ブクログ内でも絶賛の声が多い、浅倉さんのデビュー作です。長編作でありながらぐいぐい引き込まれるストーリーと魅力的なキャラクター、カッコいい特殊能力、そして衝撃の結末と、何拍子も揃っています。緻密に張られた伏線の回収も見事で、読み終えた後は爽快さも味わえる作品です。文庫本で700ページを超える対策ですが、物語が動いてくると一気に読み進んでしまいます。浅倉さんの筆力が存分に発揮され、デビュー作とは思えない完成度の高さを誇る本作は、読まないでいるのが勿体ない傑作です。ぜひ読んでみてください!
本作が著者のデビュー作とのこと。いやスゴい。ファンタジーだのご都合主義だの、いろんなご批判はあるでしょうけど、これぞエンターテイメントですよ。大好きな本です。
浅倉作品は、巧みな物語運びと丁寧な心理描写が魅力です。今回は、多数の作品の中でも特に展開が見事で、意外な結末に驚かされるものを選びました。読んで損なしの傑作ばかりです。ぜひチェックしてみてくださいね!