綾辻行人さん作品5選!~ミステリーの枠を超えた名作選~

こんにちは、ブクログ通信です。

綾辻行人さんは京都大学教育学部在学中の1987年に、『十角館の殺人』で作家デビューしました。後に「新本格ミステリー」と呼ばれるその作風は、緻密な叙述トリックと巧みなどんでん返しが持ち味です。ミステリ―小説界からの評価も高く、『時計館の殺人』で第45回「日本推理作家協会賞」長編部門を受賞するなど、数多くの文学賞を獲得しています。代表作の「館シリーズ」は、数あるミステリー小説の中でも屈指の人気シリーズです。

そんな綾辻さんの作品の中から、ブクログ内で高評価の作品を「館シリーズ」以外で5作ご紹介いたします。初期の名作から意外性のある作品まで幅広く揃えました。綾辻さんの魅力をギュッと詰め込んだ5選です。ぜひ最後までお楽しみください。

『綾辻行人(あやつじ ゆきと)さんの経歴を見る』

綾辻行人さんの作品一覧

1.綾辻行人『Another』徐々に迫りくる死の恐怖を味わえる学園ホラー

Another(上) (角川文庫)
綾辻行人『Another(上) (角川文庫)
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あらすじ

持病の関係で夜見山北中学三年三組に転校してきた榊原恒一は、謎めいた少女・三崎鳴と出会う。同じクラスなはずなのに、なぜか鳴の存在は希薄だった。しかもクラスメイト達は何かにおびえている様子だ。三崎鳴は本当に存在しているのか……。戸惑う恒一は、彼女との接触を試みる。そんな中、クラス委員長が悲惨な死を遂げた。謎が深まる一方で、さらなる犠牲者が増えていく。

おすすめのポイント!

第22回「日本ミステリー文学大賞」受賞作で、アニメや映画など度々映像化されている人気作です。田舎の中学校を舞台に、「呪われたクラス」に巻き込まれていく主人公の恐怖と葛藤が描かれています。物語前半は学園ホラーとして、後半は謎解きミステリーとして楽しめるので、ホラー・オカルト好きな人にもミステリー好きな人にもおすすめです。相次ぐ不審な死は止められるのか、謎の少女の正体は何、そして主人公は無事に生き残れるのか……全ての結末は、ぜひご自身の目で確かめてください。本作と併せて『Another 2001』も要チェックです!

幻想的で伝奇的なミステリー小説。ぼんやりとしてわからなかったことが徐々に明確に形を持って分かってくる感じが良かった。文体も読みやすくておもしろくて閉鎖的な舞台に惹き込まれてすらすら読めた。

たくさんの猫さんのレビュー

2.綾辻行人『どんどん橋、落ちた』著者からの挑戦状!セオリー無視の意欲作

どんどん橋、落ちた (講談社文庫)
綾辻行人『どんどん橋、落ちた (講談社文庫)
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あらすじ

ミステリ作家・綾辻行人のもとには、さまざまな謎が持ち込まれる。どれも一筋縄では解けない難事件ばかりだ。崩落した<どんどん橋>の向こうで殺人事件が起きた。犯人はいかにして殺人を成し遂げたのか——(「どんどん橋、落ちた」)。明るく平和な一家を襲う突然の悲劇。一家崩壊の裏にはどんな真実があったのか——(「伊園家の崩壊」)。他三篇を収録。著者から読者への挑戦状ともいえる作品集。

おすすめのポイント!

本格ミステリーの大家である綾辻さんが、遊び心たっぷりに書き出した作品集です。「犯人当て」を目的とした五つの難事件が描かれ、著者と読者の頭脳バトルを楽しめます。かなりチャレンジングな作品集で、推理小説のセオリーが通用しないユニークな一冊です。頭を柔軟にし、提示されたヒントを一つ一つ丁寧に積み上げていくと、「正解」にたどり着けるかもしれません。ときに「そんなのアリ?」と叫んでしまうようなトリックもありますが、型にはまらない面白さが詰まった作品集となっています。一読の価値ありです。

中短編集のため、気軽に手を出すことができた。綾辻さんらしい叙述トリックが満載で、注意深く読んでいないと、伏線を見逃してしまう。大枠のトリックに気づけても、問いをきちんと読んでおかないと、最後の最後に「しまった!」と悔しい思いをすることになる…本編ももちろんだが、文庫版後書きを読むと、作品への思い入れを知ることができ、再読するときにより深く物語を味わうことができると思う。

とら子さんのレビュー

3.綾辻行人『霧越邸殺人事件』謎の洋館での連続殺人事件、その真相とは?

霧越邸殺人事件 (新潮文庫)
綾辻行人『霧越邸殺人事件 (新潮文庫)
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あらすじ

ある秋の日、信州の山奥で遭遇した8人の劇団員の前に、西洋館が現れる。吹雪に閉ざされた山中の洋館・霧越邸である。命拾いしたと安堵したのもつかの間、外界との連絡が一切絶たれた邸内では不審な死が相次ぐのだった。密室と化した洋館、謎に包まれた住民たち、そして増えていく犠牲者。どうやら北原白秋の「雨」になぞらえた連続殺人事件が起きているらしい。館の主に探偵役を命じられた劇団代表は、事件解決に向けて動き出す。

おすすめのポイント!

ノンシリーズでありながら、著者代表作「館シリーズ」を彷彿とさせる重厚なクローズドサークル・ミステリーです。雪で閉ざされた洋館で起こる見立て殺人は、推理小説の王道設定でありながら、ほど良い安定感を発揮しています。丁寧にちりばめられた伏線と巧妙なトリックで読み応えも抜群です。論理的な推理シーンは、謎解きの面白さと奥深さを改めて教えてくれる秀逸さとなっています。綾辻さんの筆力を存分に味わえる名作なので、まだ読んだことがない人はぜひ手に取ってみてください。

綾辻の館シリーズファンであるので、霧越邸殺人事件も当然ながら期待大で読んだ。やはり、期待に応え十分楽しめた作品だった。第七幕の対決はなかなかの展開だった。

orionrigelさんのレビュー

4.綾辻行人『フリークス』精神病棟で起きた殺人、不気味で不穏な推理劇

フリークス (角川文庫)
綾辻行人『フリークス (角川文庫)
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あらすじ

才能と劣等感を抱えた科学者のJ・Mは、5人の子供に人体改造を施した。毎日子供たちを「怪物」と呼び責め苛むJ・Mは、ある日惨殺死体となって発見された。J・Mを殺したのは一体誰なのか——。小説家の「私」と探偵の「彼」が事件解明に挑む。精神病棟を舞台に繰り広げられる、異形への真摯な愛が生み出した歪な3つの物語。

おすすめのポイント!

「フリーク=畸形(きけい)」というタイトルの通り、畸形をテーマにしたホラーミステリーの短編集です。人の心に潜む狂気や絶望、歪んだ愛情などが臨場感あふれる筆致で描写されています。本作は精神病棟患者の日記という形で描かれており、読み進むほどに「現実」と「妄想」の境目があいまいになっていく不気味さも味わえる作品です。「科学者を殺したのは誰か」という謎解きの巧みな展開ぶりにもご注目ください。読み終わったときには、「畸形」の本当の意味について深く考えさせられます。

これはミステリ系どんでん返しといったところでしょうか、面白かった!精神がおかしい人ばかり出てきて初見はちょっとびっくりしたけどハマるしオチもちゃんとあってどんでん返しはすっきりできる。ただ話の胸糞は良くなくてもやもや残る感じでそういうのが好きならおすすめ(あたしは好きです!)特に芹沢さんの話が1番好きだった。

ナさんのレビュー

5.綾辻行人『くうきにんげん』可愛さに隠された恐怖と謎がクセになる

怪談えほん (8) くうきにんげん
綾辻行人『怪談えほん (8) くうきにんげん
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あらすじ

空気のように目に見えなくて、軽くて、形は自由自在に変えられる。それが「くうきにんげん」。誰も気づいていないけど、世界中にはたくさんの、くうきにんげんがいるんだよ。くうきにんげんが2人そろえば、とあるすごいことができるのさ。ほら、君のそばにもきっといる。それが、くうきにんげん。

おすすめのポイント!

岩崎書店が贈る「怪談えほんシリーズ」にて、人気イラストレーター・牧野千穂さんと綾辻さんがタッグを組んだ絵本です。淡く可愛らしいパステル画と、繰り返し表現が効いた綾辻さんの柔らかな文章が、幻想的な世界を作り出しています。はっきりとした「恐怖」が描かれていないのに、じわじわと恐ろしさが増してくるのが本書の魅力です。シンプルな文章ゆえに、作家・綾辻さんの筆力が存分に発揮されているといえるでしょう。繰り返し読むほど謎が深まるミステリアスな本作は、子供も楽しめる綾辻作品です。

絵本でも綾辻先生のテイストが炸裂!「狙われることの恐怖」が子供向けに、でもしっかり描かれていて、大人が読んでもとても怖い。

脈拍さんのレビュー


今回は人気作家・綾辻さんの作品の中から、何度読んでも新しい発見がある味わい深い名作選をご紹介しました。ミステリーが苦手な人も楽しめる作品ばかりなので、ぜひ気になる作品をチェックしてみてくださいね!