こんにちは、ブクログ通信です。
千葉雅也さんは、哲学者であり小説家です。哲学および表象文化論を研究し、立命館大学大学院先端総合学術研究科、同大学衣笠総合研究機構生存学研究所教授を務めています。2019年に小説『デッドライン』で「野間文芸新人賞」、2021年には短編小説『マジックミラー』で「川端康成文学賞」を受賞しました。その後も新書・小説を問わず多数の著書を発表し、話題を集めています。
今回は、そんな千葉さんの著書の中から、今読むべき作品を5つ紹介いたします。
「哲学って難しそう」という人にもおすすめの入門書から、哲学を小説に落とし込んだ力作まで幅広く厳選しました。ぜひ最後までチェックしてみてくださいね。
1.千葉雅也『現代思想入門』「新書大賞2023」受賞作!現代思想の入門に最適な一冊
あらすじ
1960年代から90年代にかけて発展した「フランス現代思想」をベースに、現代思想の入門の入門書として書かれた本書。近代哲学史における代表的な思想家をはじめ、最高峰の哲学者たちの「考えていること」をわかりやすく解説しています。既成概念に囚われない、自由な哲学思想のための一冊。
おすすめのポイント!
「新書大賞2023」の大賞を受賞した新書です。「現代思想の入門書を読むため」の入門書として書かれた本であり、哲学初心者にもとっつきやすい本となっています。デリダ、ドゥルーズ、フーコーといった近代の代表的な哲学者の紹介に始まり、現代思想の特徴や歴史についてできるだけわかりやすくまとめている点が魅力です。哲学書というと難しいイメージを持つ人が多いかもしれませんが、本書は話し言葉で書かれているため、ハードルが低く感じられます。哲学の基本を学びたいときにおすすめです。
いま抱えている自分の悩み(個性、権力などとはなにか)を分かりやすく説明しており、読了後心が軽くなった。一読するだけにとどまらず、何度も繰り返し読んで理解を深めていきたいと思う。
2.千葉雅也『勉強の哲学 来たるべきバカのために』勉強が嫌いな人にこそ読んで欲しい新感覚の哲学書
あらすじ
『勉強とは、自己破壊である』——勉強ができるようになるためには、変身が必要であるという独特な視点をもとに、勉強について哲学的アプローチを極めた本書。前半では、勉強することの真の意味を著者ならではの言い回しで考察しています。後半は実践編です。勉強の仕方や著者体験談を紹介することで、読者の勉強への意欲を高めてくれます。
おすすめのポイント!
「勉強ができる人は何が違うのか?」「なぜ勉強しなくてはいけないのか?」そんな、誰もが一度は思ったことのある疑問に、哲学的解答をくれる本です。哲学的とは言っても、難しいことはありません。著者ならではの噛み砕いた表現により、哲学に詳しくない人にもわかりやすい内容になっているからです。一部を紹介すると、著者は「勉強をするとノリが悪くなる」と主張しています。詳細はぜひ本書で確認してほしいのですが、理由を聞くと深く納得がいくからさすがです。繰り返し読むことで理解が深まります。
人生は勉強だろう。人は言葉を使い、概念を持って思考する。勉強し、成長し続けるためには、アイロニーとユーモアを組み合わせ、来るべきバカとなり続けるということなのだろう。深いし、スカッとする。面白かった。
3.千葉雅也『センスの哲学』センスが良くなりたい人必読!センスを哲学的に楽しく読み解く新書
あらすじ
洋服や食べ物を選ぶとき、何気なく使われる「センスがいい・悪い」という言い回し。あるいは、音楽やアートなどの芸術的センスを捉えて「音楽がわかる」などと表現すること。この「センス」とは何か?センスの良さは変えられるのか?さまざまなジャンルを横断しながら考える「センスの哲学」にして芸術入門の書がここに誕生——。
おすすめのポイント!
誰もが何気なく使っているのに、いざその意味を問われるとはっきり答えることが難しい「センス」という表現について哲学的に突き詰めた本です。言われてみると確かに、と思うことばかりで、目から鱗が落ちる思いをたっぷりと味わえます。本書の前半では「センスとは何か?」「センスをリズムで捉える」など、基礎的な考え方や著者ならではの定義が展開され、飽きずに読ませる文章が魅力です。後半ではより実践的な内容となり、センスを良くする方法が紹介されています。これまでにあるようでなかった、新鮮な切り口が魅力です。
しなやかに自分の感覚を認め、愛し、伸ばす、という姿勢のエッセンスを伝えてくださる本。在り方の多様性という哲学の実践としても読めるけれど、もっと身近に、自分の部屋にセンスとアンチセンスを投影させて、自分なりの享楽をマイペースにじわじわ育てるスタンスでいいな、と思えます。
4.千葉雅也『意味がない無意味』考えるよりもしっかり行動する大切さが理解できる一冊
あらすじ
「頭を空っぽにしなければ、行為できない。」という主張をベースに、「身体と行為」の本質を問う論集です。著者によると、ただ無意味といっても「意味がない無意味」と「意味がある無意味」の2種類があるのだといいます。ポストモダンの各思想を引き合いに出しながら、斬新な切り口で展開する「無意味」に対する考察が深い一冊だといえるでしょう。
おすすめのポイント!
ときにクリスチャン・ラッセンの絵やギャル男、『海辺のカフカ』など、身近で一見哲学とはつながらなそうな例を用いて、「身体と行為」の本質についてわかりやすく解説しています。「無意味」について考えたことがある人は、きっとほとんどいないことでしょう。本書は、そんなニッチな分野である「無意味」について、改めて考えさせられる本です。何事も考えすぎてしまう人は、ぜひ本書を読んで「無意味」な行動を心がけてみてはいかがでしょうか?
本作を読んだ方は、ぜひレビュー投稿をお願いいたします!
5.千葉雅也『デッドライン』一人の大学院生が対峙する人生のデッドライン
あらすじ
大学院で哲学を専攻する「僕」は、ゲイである。論文の期日が迫る一方、欲望を満たせる相手を探して街中を回遊する日々を送っていた。いい男に抱かれればいいのに——珊瑚礁のまわりで群れをなす魚のように、男たちは導きあう。ゲイであること、思考すること、生きること……。「僕」は、動物になることと女性になることの線上で悩み葛藤していた。
おすすめのポイント!
ゲイの男子大学院生が主人公の小説です。ジェンダーのことや生理のこと、男性器のことなど、赤裸々に語る意欲作となっています。性的な描写も登場しますが、本作は全編を通して、哲学を学ぶ1人の大学院生の等身大の日常を描いている点が特徴です。哲学を小説に落とし込んだことで、読者を深く思考させる作品でもあります。読み終わった時にはきっと、「デッドライン」という意味深なタイトルの意味もわかることでしょう。
モンタージュされたシーンのレイアウト感覚がやさしく、かっこいい。多面的な感想が湧き上がり、関係性に対して捉え方が柔軟になった。読後もシーンと文章が様々に脳内で繋がり、本書のミームが身体に染み込んできて、なんだか心地よい。
千葉雅也さんの作品は、哲学という難解なテーマをわかりやすく身近に感じさせてくれます。
より良く生きるためのヒントがたくさん詰まっているので、ぜひこの機会に手に取ってみてはいかがでしょうか?