こんにちは、ブクログ通信です。
『誰がための刃 レゾンデートル』で、2011年に第4回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞し、2012年に作家デビューを果たした知念実希人さん。現役医師でありながら作家業もこなす知念さんは、「死神」シリーズ」や「病棟」シリーズなど、多数の人気シリーズを抱える、今話題の作家の一人です。2020年には、啓文堂大賞(文庫部門)を受賞した『仮面病棟』が映画化されるなど、作品のメディア・ミックスも続いています。
ブクログから、そんな大注目の作家である知念さんのオススメ作を5作紹介いたします。臨場感あふれる医療ミステリが真骨頂といわれる知念さんの作品の中から、高評価が付いている作品や人気の作品、メディア化作品を中心に集めました。ぜひ参考にしてみてくださいね。
『知念実希人(ちねん みきと)さんの経歴を見る』
1.『仮面病棟』 初の映画化作品!怒涛の展開に一気読み必至の医療ミステリ
あらすじ
療養型病院に勤める外科医の速水秀悟は、ある夜、先輩医師の代わりに当直に入った。急患もなく、平和な夜を過ごすはずだった速水の前に、ピエロの仮面をかぶった男と、ケガをした女性が現れる。男は強盗犯で、病院の中にいた人全員を人質にして、病院に立てこもるのだった。極限の状態の中、速水はあることに気づいて——。
オススメのポイント!
病院での立てこもり事件、徐々に明らかになる病院の闇……読み進めるほどに加速する展開で、先が気になり、一気に読めてしまう作品です。作者の知念さん自身が現役医師ということもあり、院内の描写や速水の存在感がかなりリアルに描かれています。医療とミステリの融合という、斬新な物語をぜひ一度体験してみてください。また、本作は、2020年に俳優の坂口健太郎さん主演で映画化されました。キャストには永野芽郁さんや内田理央さんなども名を連ね、大きな話題を集めた作品です。ぜひ原作小説と併せて、チェックしてみてください。
まさかそんな結末を迎えるとは、という読者が予想できないような結末です。
単なる強盗かと思っていたが、その人には別の思惑があって、それに巻き込まれていく主人公。読んでいて一緒に推理できて楽しかったです。また、ハラハラドキドキしっぱなしで本当に面白いなと思える作品でした。ぜひおすすめしたいです!
2.『優しい死神の飼い方』心がじんわり温まる、気難しくも優しい死神の物語
あらすじ
死神のレオは、犬の姿に封じ込められ地上のホスピスへ派遣された。死が間近に迫った人間たちの未練を解き放ち、魂を無事にあの世へと送り届けるのがレオの仕事だ。戦時中の悲恋を悔いる老人、洋館での殺人事件に巻き込まれた男、色彩を失ってしまった画家……患者たちと触れ合い、過去の謎を解き明かしていくレオ。しかし、その行動は思わぬ危機を招いていた——。
オススメのポイント!
もふもふの犬の姿をした死神という、ありそうでなかった設定がユニークな物語です。ホスピスを舞台にしたヒューマンドラマであり、ミステリ要素もありという、1冊でいくつもの味わいを楽しめる作品でもあります。死に直面した人々の過去や悔い、願いに向き合うレオが、少しずつ変化していく様子が丁寧に描かれ、感情移入してしまうこと必至です。医療サスペンスで知られる知念さんの、新境地を実感できる作品なので、ぜひ手に取ってみてください。
犬の姿に封じられ、地上に左遷された死神のレオ。死に直面する人間を未練から救うため、患者たちの過去の謎を解き明かしていく。ここまでである程度ストーリーが想像できるかと思いきや、後半はなにやら雲行きが怪しく、はらはらする場面もあり、読み応え十分。そして、優等生ながら自分が案内する魂たちの行く先さえ興味のなかった死神も、ホスピスで出会った人々と触れ合う中で、変化を遂げていく。最近、帯の「涙」とか「感動」とかいう言葉に踊らされてきたが、これは文句なし。エピローグでレオが語る「未練が生まれる理由」がまたぐさりとくる。
3.『十字架のカルテ』 2人の精神鑑定医が挑む、究極の頭脳戦!
あらすじ
新人医師の弓削凛は、日本有数の精神鑑定医・影山司の助手に志願した。正確な鑑定のためにはあらゆる手を尽くす、影山。精神鑑定を学ばなくてはいけない理由がある、弓削。無差別通り魔の犯人、引きこもりの末に姉を刺した男、同僚を刺殺した多重人格者——、2人は、さまざまな犯罪者たちと会話し、究極の頭脳戦を展開する。
オススメのポイント!
精神鑑定医という視点から、さまざまな事件を紐解いていく新しいタイプのミステリです。弓削や影山と犯人たちが対峙する際、巧妙な駆け引きや腹の探り合いが次々と行われ、まさしく「究極の頭脳戦」と呼ぶにふさわしい展開が楽しめます。また、弓削と影山がそれぞれに抱える「想い」にも惹き込まれ、読み進めるほどに感情を揺さぶられてしまうはず。精神鑑定の難しさ、責任の重さが丁寧に描かれ勉強にもなる一方で、スリリングな展開に先を読む手が止まらなくなる作品です。
この本を読むまでは、精神鑑定医という職業を知らなかった。司法精神鑑定。
罪の裏に隠された真実を精神鑑定という形で紐解いていく、新しいミステリー小説。
一言で言って、「面白かった」。続きがあるなら、読みたい作品。
4.『ひとつむぎの手』 大学医局を舞台にした、ある心臓外科医の生き様を描く感動作
あらすじ
大学病院の医師である平良祐介は、過酷な勤務に耐えていたある日、医局の最高権力者・赤石教授から指示を受ける。それは、3人の研修医を指導し、うち2人を入局させろというものだった。指示を達成できれば、念願だった心臓外科医への道が切り開けるが——。さらに、赤石教授を告発する怪文書が出回り、平良はその犯人探しまで任されることになってしまう。やがて、事態は思わぬ方向へ進んでいく……。
オススメのポイント!
心臓外科医のリアルな日常が描かれています。医師としての志、医局でのしがらみ、医療現場の問題点など、さまざまな角度から医師を取り巻く環境を描き出し、熱いヒューマンドラマが展開される作品です。主人公の平良が、理想と現実の間で揺れ動く様に、「医者になってからも大変だな」としみじみ感じられます。現役医師だからこそ描ける説得力のある描写で、最後までぐいぐいと読ませてくれる秀作です。結末には、驚きと感動が待っています。
正直驚きました。ミステリー少な目ファンタジーなし。真向から医療ヒューマンドラマで勝負している。現役医師としての知識や経験を基にリアリティのある描写、医局内の派閥争い、人手不足の問題など説得力のある話が続く。前・中・後半へ向けてのストーリー展開も非常に素晴らしい!3人の研修医とのストーリーにとても感情移入して心を持っていかれる。思わず涙が頬をつたう。そしてエンディング。あぁと唸ってしまう温かい終わり方。タイトルの意味も分かってまた感動。
5.『天久鷹央の推理カルテ』 天才女医が解き明かす、摩訶不思議な事件の数々
あらすじ
天医会総合病院の統括診断部には、各科で「診断困難」とされた患者が集められる。河童に会ったという少年、人魂を見た看護士……そんな患者たちを救うのは、天才女医の天久鷹央(あめくたかお)だ。頭脳明晰、博覧強記の天久が、患者たちの謎と病を解き明かす。大人気シリーズの第1作目。
オススメのポイント!
とにかく、天久先生のキャラクターの濃さに魅了される作品です。一見破天荒に見える天久先生ですが、超人的な医学知識と情熱をもって患者に対峙し、他の科ではわからなかった「真実」を探り当ててしまいます。本格的な医療ミステリ作品でありながら、堅苦しい専門用語は極力省かれ、わかりやすい表現がされている点も魅力です。2016年から2018年にかけてコミック化され、全4巻が発売されました。小説とコミック、どちらも天久先生の魅力を存分に堪能できますよ。
初読み作家さん。面白かった。童顔・天才・好奇心の赴くままに行動する問題児の女医・鷹央と、それに振り回される助手の、病院を舞台にしたライトなミステリ。主役コンビのキャラは典型的だし、読み始めは当たり障りのない日常の謎解き系かな~と思っていたけれど、後半は中絶の倫理的問題が題材にされたり、論理が信条の鷹央の感情の揺れが描かれたりと、ライトな中にも医療に誠実に向き合うことの重みや温かさがありよかった。でも基本サクサク読めて読後感は解決!スカッ!連作短編なのだけど、各話ちゃんと二重オチなのもよくできていて楽しい。
知念さんの作品は、本格的な医療ドラマからライトミステリまで、幅広い魅力に溢れています。一気読み必至の名作ばかりなので、ぜひ今回ご紹介した作品の中から、気になったものを手に取ってみてくださいね。