江國香織さん作品5選!~心の琴線に触れる人気作揃えました~

こんにちは、ブクログ通信です。

江國香織さんは、1985年に20歳で『ユリイカ』に詩作品「綿菓子」を初投稿したことをきっかけに本格的に執筆活動を開始します。1987年には『草之丞の話』で「《小さな童話》大賞」を受賞しました。その後も精力的に執筆活動を続け、1989年にはアメリカ留学時の体験をテーマにした小説『409ラドクリフ』で第1回「フェミナ賞」を受賞します。数々の文学賞を獲得し、名実共に一流作家となった江國さんは、2004年に『号泣する準備はできていた』で第130回「直木賞」を受賞しました。

今回はそんな江國さんの作品の中から、ブクログ内でも特に人気のおすすめ作品を5つ紹介いたします。繊細な心理描写と軽やかな文章が魅力の江國さんの作品を、ぜひ最後までチェックしてみてくださいね!

『江國香織(えくに かおり)さんの経歴を見る』

江國香織さんの作品一覧

1.江國香織『冷静と情熱のあいだ Rosso』イタリアを舞台に描かれる美しくも切ない「忘れられない恋」の物語

冷静と情熱のあいだ Rosso (角川文庫)
江國香織『冷静と情熱のあいだ Rosso (角川文庫)
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あらすじ

イタリアでアメリカ人の恋人・マーヴと暮らしているあおいは、何の不満もない完璧な日常を送っていた。しかし、心の中には忘れられない人がいる。かつて日本の大学で出会い、愛し合った順正だ。10年前の雨の日、あおいは何よりも大事だった順正を失った。残ったのは、ある約束だけ。約束の日が近づくにつれ、遠く離れたあおいと順正の心は再び動き出して……。

おすすめのポイント!

誰もがうらやむような満ち足りた生活を送る女性・あおいの、忘れられない恋を描いた小説です。江國さんが描く女性視点の「Rosso」に対して、人気作家・辻仁成さんが描く男性視点の「Blu」もあります。イタリアを舞台に繰り広げられる、切なくももどかしい恋模様が心に迫る作品です。2001年に竹野内豊さん主演で映画化され、イタリアの美しい風景とロマンチックなストーリーで大ヒットを記録しました。江國さんの代表作でもある本作は、ぜひ一度は読んでほしい名作です。

読んでいて苦しかった。大切なひとをまさに失おうとしてる瞬間を分かってしまうアオイの、自業自得の孤独。わたしは永遠に忘れられないほどの恋をしたわけでもないのに、何故か過去の自分と重ねてしまって、マーヴの優しさとか、ひとの身勝手さとか、もうどうにもならない過去とかにかなしくなった。ただ、江國さんの描く静かできれいな文章が好き。また読み返したい。

すずまさんのレビュー

2.江國香織『号泣する準備はできていた』恋を失った女たちの感情をみずみずしく描いた直木賞受賞作

号泣する準備はできていた (新潮文庫)
江國香織『号泣する準備はできていた (新潮文庫)
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あらすじ

真由美は17歳の夏を思い出していた。兄も姉もすでに家を出て行き、両親と三人暮らしの真由美は、精肉店の息子で小学校の同級生である河村寛人をドライブに誘ったのだった。寛人は免許を持っていなかったが、真由美の希望を叶えてくれた。暑くて妙な臭いのする車で海に到着した2人だが、真由美はある感情を抱いて——(『じゃこじゃのこのビスケット』)。12編の切ない物語を収めた短編集。

おすすめのポイント!

第130回「直木賞」受賞作で、江國さんの代名詞とも呼べる「切ない恋のお話」が12編収められた作品です。各話が短いので、短時間で読み切ることができます。なにげない日常の中で起こる、すれ違いや愛する喜びと悲しみ、葛藤といった様々な感情にスポットを当てた一冊です。高校生のほろ苦い恋や大人のドロドロとした恋情、男女の駆け引きなど、多様な恋模様がみずみずしく描かれています。この一冊で、きっと誰もがかつて自分がしてきた恋を思い出してしまうことでしょう。

好きなひとに愛されることは「雨のように降り注ぐずぶ濡れになるような贅沢」で、そのひとを失うことは「ねじ切れてしまいそうな淋しさ」。ぴったりとくる感情表現とリズムカルな文章に、読了後は五感が冴えわたる。日常が色づく。言葉にひとつも嘘がなくて、すこしもずるくなくて、運命を静かに受け入れるヒロインたちは、反面教師だなと思うけれど、そのたった一瞬の感情に集中する生き方が、やっぱりすごく魅力的。

ふうかさんのレビュー

3.江國香織『つめたいよるに』甘く濃厚な余韻を残すショート・ショート

つめたいよるに (新潮文庫)
江國香織『つめたいよるに (新潮文庫)
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あらすじ

キスが上手な愛犬・デュークを亡くした翌日、「私」は電車の中でハンサムな男の子に席を譲られた。悲しくて悲しくて息もできないくらいだった「私」は、その知らない男の子と1日過ごすことになるが……(『デューク』)。どうしようもなく孤独な夜。「私」はねぎを刻む。細かく、細かく、ただねぎを刻む。自分を見失わないように……(『ねぎを刻む』)。デビュー作「桃子」を含む、柔らかで幻想的な短編集。

おすすめのポイント!

この本には21編の物語が収められています。1編は平均して10ページもないショート・ショートです。そんな短い作品の中に、切なさや喜び、孤独や愛情といった、様々な感情が織り込まれています。どの作品も、読者である私たちの日常と地続きにあるような、身近で普遍的な世界観です。しかし、江國さんの手にかかると日常的な風景でさえ、どこか特別でエモーショナルな光景に見えてきます。本作は江國さんの作品の中では初期に位置するのですが、完成度の高さとみずみずしい文章に圧倒的な才能を感じさせられる作品です。

この本も何度も読み返してしまう。とってもとっても短いお話なのに、胸の奥をぎゅっとつかまれる。私の感じていることを書いてくれたように感じるのは、なぜ?1冊に贅沢な数の物語がつまっていて、どの作品から読んでも愛おしい。この本から江國香織さんのファンになった。

はるさんのレビュー

4.江國香織『去年の雪』百人超の登場人物が交錯する幻想的で壮大な小説

去年の雪
江國香織『去年の雪
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あらすじ

過去と現在、今と未来。時空を超えて自由に進みゆく物語は、百人の登場人物の日常を鮮やかに織り成す。亡くなった夫と交信する女、妻のある部分に異常な執着を見せる夫、 若奥様になることを夢見る少女……。 百人百様の人生を歩む彼らの意外な繋がりとは——?

おすすめのポイント!

本作は江國さんの他の作品とは一線を画す、実践的で革新的な作品です。特定の主人公は登場せず、百人を超える登場人物たちの人生がタペストリーのように色とりどりに綴られています。「百人」の中には人間も動物も、時には霊さえ含まれており、この世界を全てを俯瞰しているような感覚になれる不思議な作品です。過去・現在・未来が交錯し、幻想的な世界観を醸し出している点にもご注目ください。江國さんが贈る、壮大な歴史絵巻とも呼べる一冊です。

江國香織さん…本当にすき。いちばん好きな作家さん。江國ワールド満載すぎる一冊だった…うっとりするほど。雪が降って、溶けて、また降って、少し積もって…その繰り返しのような小さな短編たち。100人以上の登場人物。みんな違って、少し交差して、ふわふわと降る雪のような…読後面白かった!この話が好き!とかは特になく、ただ、ぽわんと。なんだろ、不思議な気持ちになるし、こんな読後初めてで混乱もしてる。残らない小説、だけど、すごくいい。

Aaa**さんのレビュー

5.江國香織『ひとりでカラカサさしてゆく』 タイトルの意味を噛みしめたくなる、味わい深い一冊

ひとりでカラカサさしてゆく
江國香織『ひとりでカラカサさしてゆく
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あらすじ

大晦日の夜、とあるホテルに80歳過ぎの男女三人が集まっていた。酒を飲み、共に過ごした過去の思い出話に花を咲かせ、最後には三人とも猟銃で命を絶った。年老いた三人に一体何が起きたのか——。夫婦でも、親子でも、親友でも、理解できないことはある。残された者たちの日常は、思わぬ形で絡み合っていくのだった……。

おすすめのポイント!

三人の老人が猟銃で自殺するというショッキングな事件を起点に、残された家族や友人たちの「その後」の様子を描いた作品です。本作では、家族や友人たちが悲しみに暮れるというよりも、どちらかといえば戸惑いや苦悩、怒り、呆れといった感情が先立つ様子が描かれており、それがかえってリアルで生々しく感じられます。「死」があるからこそ、人生についてより深く考えることができる……そんなメッセージを感じられる物語です。

かつて美術系の出版社の同僚だった80代の男女三人が大晦日にホテルで猟銃自殺をとげる。衝撃的な出だしだけれど決してミステリーではありません。彼らの人生、そして残された家族の人生がこの事件をきっかけに少しずつ明らかになっていきます。当事者三人、そして遺族たち、それぞれの心の機微がとても丁寧に描かれていて濃厚でした。本人にしか分からない心の内はそのままに、生きてる者は日常を歩んでいくしかないのですね。読後感は不思議と悪くはなく。葉月のアンデルセンのダークサイドとサニーサイドの話が興味深かったです。

Spicaさんのレビュー


江國香織さんの作品は、柔らかな文章が心にすっと入り込む、不思議な魅力を持っています。今回ご紹介したのは、そんな魅力がたっぷり詰まった5選です。未読の方は、ぜひこの機会に読んでみてくださいね!