こんにちは、ブクログ通信です。
一緒に暮らしていると、当たり前に感じてしまう家族のぬくもり。遠く離れて暮らすようになってから、その温かさを思い知ったという人もいるのではないでしょうか。時に面倒くさく思えても、ふとしたときに心を温めてくれるのは、家族の愛だったりしますよね。
ブクログから、「家族の愛」を感じられる小説を5作ご紹介します。読めばきっと、心が温かくなる作品ばかりです。ブクログのみなさんに人気の作品やメディア化作品を中心に、ブクログがおすすめする名作選となっています。心が寂しくなったとき、家族が恋しくなったとき、ぜひ手に取ってみてくださいね。
1.鷺沢萠『ウェルカム・ホーム!』 「普通」じゃない家族の、とびきりホットな2つの物語

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あらすじ
元シェフの渡辺毅は、離婚し親に勘当され、家も経済力も失った。そんな毅に、親友が同居を提案する。妻を亡くした親友は息子と2人暮らしだが、忙しくて家事と育児に手が回らないという。毅は親友宅に居候し、元シェフの腕を活かした同居生活を始めるが——。一方、キャリアウーマンの児島律子は、再婚に失敗し、前夫の連れ子である娘と引き離されてしまった。月日が経ったある日、思いがけない人物が律子のもとを訪れて……。
おすすめのポイント!
この作品は、2つのユニークな家族の姿を描いた物語です。いわゆる「普通の家族」とは違い、血縁や婚姻関係にこだわらない関係が描かれています。年齢や性別を超えた絆や、人と人が家族になっていく様子を明るく描き出し、読後は爽やかな気持ちになれる作品です。父親が居て、母親が居て、子供が居る……そんな「普通」に縛られることはない、という優しくも力強いメッセージを感じられることでしょう。ゆっくりと愛情豊かな家族になっていく、2つの家庭の物語をぜひお楽しみください。
渡辺毅と児島律子の物語。この二人に関連性はなく、それぞれの家族の形が描かれている。所謂、両親が揃っていて・・・という「普通」の家族、「普通」の結婚を逃した二人が、自分達なりの幸せと家族の形を捉え、受容していく過程がよかった。表現が適度にポップで、重すぎず暗すぎず。幸せにもひたりすぎずで、これからも様々に形を変えうる家族の可能性を秘めながら、前向きに進んでいこうとする家族たちに感動しました。
2.北村薫『月の砂漠をさばさばと』心の柔らかい部分を刺激する、大人のための童話

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あらすじ
9歳のさきちゃんは、作家のお母さんと2人暮らしです。さきちゃんは毎晩、お母さんが作ったお話を聞かせてもらっています。なんてことのない毎日を、楽しく、大切に過ごしています。お母さんは、ふと思うのです。さきが大きくなったとき、いつか今日のことを思い出すのかな——。さきちゃんとお母さんの、穏やかで温かい日々を描いた、珠玉の物語。
おすすめのポイント!
1ページ目から、温かで柔らかな空気に包まれた、きれいな物語です。9歳のさきちゃんは無邪気でほがらか、言葉の一つ一つが可愛らしく、誰もがさきちゃんに魅了されてしまうことでしょう。そんなさきちゃんを見守る、ユーモアがあり愛情豊かなお母さんも魅力的です。2人が過ごすかけがえのない時間を、北村さんのみずみずしい文章が繊細に描き出しています。大きな事件や物語のオチといったものが無いにも関わらず、心にじんわりと染み込む感動作です。読み終わったとき、きっと「お母さん」の声が聞きたくなりますよ。
女の子さきちゃんとお母さんの物語。ふとした日常のひとこまを優しくクスッと笑わせてくれたり、時にドキッとさせられるようなお話がたくさん描かれていてほっこり温かい。娘のさきちゃんがお母さんにつっこんだり、さきちゃんの間違いをお母さんが微笑ましく見ていたり。ふたりのやり取りが可愛らしく、親子のような友達のような素敵な関係だ。そして更に、いろんなことを楽しみ喜ぶふたりはとても素敵だ。優しい世界が広がっている。挿絵もとても可愛らしい。
3.早見和真『ぼくたちの家族』 バラバラだった家族の、希望と再生の物語

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あらすじ
家族みんなの気持が別方向を向いている——そんな若菜家は、母・玲子が仲を取り持つことで成り立っている。ある日、玲子の脳に腫瘍が見つかった。余命宣告を受け、家族は残された時間が少ないことを知る。場当たり的に生きてきた父・克明、しっかり者だけれど秘めた想いを抱える兄・浩介、だらしない生活を送る弟・俊平。玲子のために動き出した3人だったが、徐々に思わぬ事実が明るみに出て……。
おすすめのポイント!
「家族とは何か」「家族の愛とはどんなものか」を、読者の心に問いかける物語です。家族でありながら心はバラバラ、互いに対して思うところありな若菜家の面々に、自分を見ているかのような気持ちになる人は少なくないでしょう。家族だからこそ感じるわずらわしさ、家族だから言えてしまう言葉が、リアルに描かれているからです。この作品は、2014年に映画化されています。妻夫木聡さん、池松壮亮さん、原田美枝子さんといった豪華キャストで制作された映画版は、TAMA映画賞をはじめ数々の映画賞を受賞しました。
都合のいい時だけ家族であったという悪い方の話は世の中に五万とあると想像され、苦しい時に家族が結束したこの物語は、まさに「奇跡」に違いない。そうした奇跡に包まれながら、気づかない人や家族も多いことだろう。それに気づくだけで、どれほど幸せか、教えてくれる。
4.森浩美『こちらの事情』 「家族でいることの幸せ」を描く、心に響く短編集

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あらすじ
正文は、ある日兄から頼みごとをされる。「老人介護施設に預けることにしたから、母を送り届けてほしい」。割り切れない思いを抱えて悩む正文だったが、母はそんな正文を優しく諭すのだった。施設入居の日、いよいよとなり気持ちを抑えきれなくなった正文は——(『荷物の順番』)。ほか、7編を収録。家族との関係に葛藤し、わだかまりを抱える人々の姿を愛情深く描いた短編集。
おすすめのポイント!
家族との関係に小さな「ズレ」を抱えた人の心模様を、温かな視点で描いた短編集です。読み終わったとき、心の中にぽっと明かりが灯るような感動作が8編収められています。作者の森浩美さんは、作詞家としても有名です。SMAPやKinKi Kidsの曲を手がけ、数々のヒット作メーカーでもあります。そんな森さんの紡ぐ物語は、印象的なセリフや心に残るシーンが多いのが魅力です。何度も読み返したくなること請け合いの、心に響く1冊だといえます。
家族は、良いなと思うときもあれば、その反面煩わしいなと思うこともある。しかし、ずっと会わないとまた会いたいと思えてくる。他人とは絶対に分からないことが、この本を通して見えてくる。今一人暮らしをしてる人は、自分の両親や妹、姉、弟、兄のことをどんな風に思って日々過ごしているんだろう。一日のほんの数分でもいいから考えてみて欲しい。この本を読めば、家族ってかけがえのないものだと思えてくる。
5.奥田英朗『家日和』 面倒でも、厄介でも、「家族っていいな」と思える短編集

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あらすじ
ネットオークションにはまり、家中の「不要品」を売りに出す専業主婦。会社が突然倒産し、主夫になったサラリーマン。妻と別居することになり、気ままな暮らしを始める男。ごく平凡な家族の平凡な毎日と、ちょっとした不和や問題をユーモラスに描く短編集。6編を収録。
おすすめのポイント!
直木賞作家・奥田英朗さんが描く、6つの家族の物語です。軽快な筆致で、6つの家族の酸いも甘いも描き出す、明るく楽しい短編集となっています。本作は文壇でも高く評価されており、第20回柴田錬三郎賞を受賞しました。どこにでもいそうな家族の、よくありそうな出来事を描いているのが特徴です。特に既婚者の人や、長年連れ添ったパートナーがいる人にとっては、「あるある」と笑ってしまうような描写が多々あり、楽しめるはず。シングルの人はきっと、「こんな家族っていいな」と温かい気持ちになれますよ。
夫婦、家族の日常の中に起きるちょっとした変化。その変化に戸惑ったり、案外さらっと適応したり、むしろ楽しんでしまったりする人たちの様子がさらっと描かれていて、なんだかリアルで面白い。「ここが青山」「家においでよ」が特に好き。男性が家事を始めて、インテリアも楽しんで自分のお城を作っていく様子にものすごく共感できるし、思わず憧れてしまう。こういう生活もいいよなぁーと。
面倒なときもあるけれど、いざとなれば支えてくれるのが家族の温かさです。今回ご紹介した5作は、読後に家族に会いたくなること請け合いの感動作ばかりです。ぜひチェックしてみてくださいね!