やる気が出ない時に元気をもらう小説10選!【前編】〜心の栄養補給にぴったりの名作たち〜

こんにちは、ブクログ通信です。

「どうしてもやる気が出ない……」。時には、そんな日もありますよね。なんとなく心が落ち込んでいるとき、前向きな気分になりたいとき、読書で気持ちをリフレッシュしてはいかがでしょうか。やる気が出ない日に元気をくれる、とっておきのおすすめ小説をご紹介します。

困難に立ち向かう物語、明るく楽しい物語、爽やかな感動の物語など、さまざまな作品を集めました。10の異なる魅力で、あなたの「やる気」をきっと呼び覚ましてくれるはずです。気分をスカッと切り替えたい日には、ぜひ、これからご紹介する作品を手に取ってみてください。

1.唯川恵『淳子のてっぺん』 直木賞作家が贈る、「世界のてっぺん」に挑む女性の雄姿

淳子のてっぺん
唯川恵さん『淳子のてっぺん
ブクログでレビューを見る

あらすじ

ごく平凡な女性である淳子は、会社勤めをしながら、暇さえあれば山に登っている。「エベレスト?女なんかに登れるもんか」。そんな男の言葉をきっかけに、淳子は女性だけの隊でヒマラヤを目指す決意をする。最初の目標は、アンナプルナだ。初めての海外遠征で、淳子は資金繰りや準備の大変さを、改めて思い知る。さらに、女性同士ならではの嫉妬や軋轢も加わって、淳子の前途は多難を極めるのだった——。

おすすめのポイント!

女性として、初めてエベレスト登頂を果たした田部井淳子さんをモデルにした、登山小説です。恋愛小説の名手として知られる唯川さんですが、実は山好きという一面も持っています。そんな唯川さんが情熱を込めて描き出す、世界の頂点に挑む女性の物語です。登山の大変さだけでなく、海外渡航にまつわる障壁、資金繰りの難しさ、女性隊員ならではの問題点など、細かなところまで丁寧に取り上げられています。膨大な問題を1つずつクリアしていく淳子の姿を見ていると、「自分もがんばろう!」とやる気が出てくること必至!

唯川恵さんの作品一覧

何度も涙した。登山家・田部井淳子さんの物語。山の頂に登るように彼女の人生を追いかけた。男尊女卑が当たり前の時代にこれだけのことを成し遂げる……どれだけの女性に力を届けたことだろう。容易ではない登頂までの道のり。命がけの決断、登頂。ご主人の言葉、支え、それを胸に一歩を踏み出す姿、思いに何度も涙で文字が霞んだ。てっぺん……愛に包まれた淳子さんがうらやましい。そして何かを成し遂げた時はもちろん、勇気を出した場所、包まれる場所……誰にでもてっぺんはある、そんなことをそっと教えられた素敵な作品。

くるたんさんのレビュー

2.宮下奈都『スコーレNo.4』自分のダメな部分も、前向きに受け止められるようになる1冊

スコーレNo.4 (光文社文庫)
宮下奈都さん『スコーレNo.4 (光文社文庫)
ブクログでレビューを見る

あらすじ

骨董屋の三姉妹の長女として育った麻子。1歳違いの妹・七葉は自由奔放で、麻子にないものをたくさん持っている。七葉に比べれば、麻子は平凡だ。それでも麻子は七葉を親友のように思っていた。ある日、違和感を抱くまでは——。中学・高校・大学・社会人の4つの段階に分けて、麻子の歩いた道のりを描くみずみずしい長編小説。

おすすめのポイント!

主人公・麻子の心の成長を、淡く美しい描写で切り取った物語です。思春期の心の揺れ、コンプレックス、家族との軋轢や葛藤など、麻子の心の機微を丁寧に1つずつ描いています。大きな事件や物語の起伏はありませんが、読み進めるほどに、心の奥深くに響いてくる傑作小説です。読後は、爽やかな余韻が胸いっぱいに広がることでしょう。1歩1歩、丁寧に着実に歩いていくことの大切さを、改めて気づかせてくれる作品です。

宮下奈都さんの作品一覧

少女から女性への成長と片想いを含めた恋愛を描いた作品。恥ずかしながら、宮下さんの世界観に心奪われてしまいました。

読魔虫さんのレビュー

3.坂木司『ホテル・ジューシー』 沖縄ムードに癒される!疲れた心をリセットできるお仕事小説

ホテルジューシー (角川文庫)
坂木司さん『ホテルジューシー (角川文庫)
ブクログでレビューを見る

あらすじ

「ヒロちゃん」こと18歳の柿生浩美は、大家族の長女として生まれたしっかり者だ。曲がったことが嫌いで、自分にも他人にも厳しい性格をしている。そんなヒロちゃんは、夏休みのバイト先として沖縄を選んだ。ひょんなことから、那覇のホテル・ジューシーでバイトすることになったヒロちゃん。常に不在のオーナー、いい加減なオーナー代理、ハウスキーパーの双子のおばあちゃんらに囲まれ、ヒロちゃんの夏休みが始まった。

おすすめのポイント!

沖縄のゆるい空気、大らかな人々に囲まれて、孤軍奮闘するヒロちゃんの姿に笑って泣ける物語です。何事もしっかりやらないと気が済まないヒロちゃんですが、ホテル・ジューシーのスタッフたちは、そんなヒロちゃんとは正反対の人たちばかり。ぶつかり合い、少しずつ互いを理解し合うその姿に、読み手である私たちの心がほぐれてくことでしょう。肩の力がそっと抜けて、気持ちをリセットできる作品です。読後には、ひと夏を沖縄で過ごしたような、リフレッシュした気分になれますよ。

坂木司さんの作品一覧

『正しさは尺度にならない』解説にもあったが、最も印象に残った台詞。正しいことは大切だけど、それが正解かはそれぞれ違う。大家族の長女として育ち、責任感が強く、真っ直ぐで、お節介なヒロ。最後のオーナー代理とのやり取りのなかで、ヒロが今まで背負ってきた何かが、ふと軽くなった瞬間がすごく好きな場面。ヒロにとって本当にかけがえのない夏になったんだろうな。沖縄で働いてみたいなと思わずにはいられない気持ちになります。

emikoさんのレビュー

4.重松清『青い鳥』 弱った心にそっと寄り添う、優しいぬくもりのような短編集

青い鳥 (新潮文庫)
重松清さん『青い鳥 (新潮文庫)
ブクログでレビューを見る

あらすじ

村内先生は、国語の教師だ。中学校で国語を教えているが、言葉がつかえて上手に話せない。だから、口数は少ないし、大事なことしか言わない。そんな村内先生には、授業よりももっと大事な仕事がある。自分の気持ちを伝えられない生徒に、村内先生はそっと寄り添う。「ほんとうにしゃべりたいことは、しゃべらなくてはならない」——。本当に大切なことを伝えるために、村内先生は一生懸命話すのだった。

おすすめのポイント!

作中に登場する村内先生は、「こんな先生に会いたかったな」と思わせる、素敵な先生です。完ぺきではなく、特別な力があるわけでもないのですが、一人ぼっちの子のそばにいてくれます。吃音があるため、村内先生の話す言葉は独特です。しかし、だからこそ一言一言に重みがあります。テーマは重めですが、読後は心洗われるような爽やかな気持ちになる作品です。気持ちが沈んでいるとき、前向きな気持ちになれないとき、きっとこの作品が元気をくれますよ。2008年に、阿部寛さん主演で制作された映画版もオススメです。

重松清さんの作品一覧

読書が好きになったきっかけの本です。読書量が少ない私は、最初はただ、あったかい気持ちになりました。こんな優しい人がそばにいればなぁ…と。でも、時間を空けてもう一度読むと違う印象を受けました。「誰でもひとりぼっちじゃないこと」「誰かのそばにいることはできること」そんな風に感じました。日々がさみしいとか日常が空しいときにまた読みたい一冊です。

のりたまさんのレビュー

5.佐藤多佳子『一瞬の風になれ』 心のエンジンをかけたいときに!一緒に走り出したくなる青春小説

一瞬の風になれ 第一部 -イチニツイテ- (講談社文庫)
佐藤多佳子さん『一瞬の風になれ 第一部 -イチニツイテ- (講談社文庫)
ブクログでレビューを見る

あらすじ

神谷新二の家族は、サッカーのこと以外頭にない。両親は根っからのサッカー好きで、兄は高校サッカーで活躍する選手だ。新二も中学まではサッカー一筋だった。自分には才能がない、と気づくまでは——。家族の反対を押し切って、サッカーとは関係のない公立高校へ進学した新二。春野台高校陸上部で、生まれて初めて陸上の世界に飛び込み、その面白さにのめりこんでゆく。

おすすめのポイント!

2007年に、本屋大賞と吉川英治文学新人賞を受賞した作品です。2008年にテレビドラマ化されました。躍動感あふれる、青春小説です。臨場感のある情景描写、スピード感のある文章で、ぐいぐい惹き込まれます。主人公・新二と、幼馴染でライバルの一ノ瀬連との、熱い絆も見どころです。学生時代スポーツに打ち込んだ人は、その頃を思い出し、きっと胸が熱くなるでしょう。スポーツとは縁遠かった人は、作品を通じて、新二の高校生活を疑似体験できます。眠っていた「やる気」も目を覚ます、思わず走り出したくなる情熱的な作品です。

佐藤多佳子さんの作品一覧

陸上に青春をかけた高校生たちを描いた作品。2007年本屋大賞を受賞している。3部構成の本書は第1部。高校1年次を描く。本作は、話の途中で視点が変わることもなく、終始主人公の視点から物語が描かれている。他人と比較される(比較してしまう)歯がゆさ、試合にかける思い(特に400mリレー)、緊張感、淡い恋心など、青春の要素をぎっしりと詰め込んだような作品。青春小説なので登場人物は多いが、個性あふれる特徴的な奴らが多いため、読んでいて混乱することはない。また、会話文も多いためスラスラ読むことができる。主人公たちの成長物語としても面白い。

mutotsu55さんのレビュー

やる気が出なくて困ったとき、「もうひとがんばり」が欲しいとき、あなたの背中をそっと押してくれる作品を選りすぐりました。今回ご紹介した10の名作から、元気をチャージしてみてはいかがでしょうか?後編5作もお楽しみに!