こんにちは、ブクログ通信です。
春は「卒業」と「別れ」の季節です。誰にでも、忘れられない「別れ」が一度はあるのではないでしょうか。春風の吹く日、桜の咲いた日、卒業や別れの1シーンを思い出し、切ない気持ちになる人も多いかもしれません。今回は、そんな懐かしい想いを呼び覚ます、卒業・別れがテーマの名作を紹介いたします。
読めばきっと、懐かしいあの頃を思い出し、胸がキュンとしたり心が震えたりすることでしょう。春風のように爽やかな物語、散りゆく桜のように儚い物語など、珠玉の作品ばかりです。甘く切ない気持ちに浸りたいとき、ぜひチェックしてみてください。
1.『風に桜の舞う道で』 青春時代からの卒業を描く、心ときめく友情小説

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あらすじ
「僕」は、10年前の日々を思い出している。大学受験に失敗した年。そして、なぜか予備校の特待生に合格した年でもある。その年、僕は「桜花寮」と呼ばれる寮に入った。翌年の大学受験に向けて、寮の仲間たちと共に1年間勉強するため。寮には入寮式の日に出会った個性豊かなメンバーがいてリュータやヨージたちだ。時が経ち10年後、「リュータが死んだ」と聞かされた僕は、その足跡を追うのだが……。
オススメのポイント!
予備校の寮を舞台にした友情小説です。10年前と10年後が、交互に語られます。「僕」と寮の仲間たちの友情、大学受験をめぐる葛藤や努力、そして10年間の軌跡が、明るいタッチで描かれている物語です。子供ではない、しかし大人になりきってもいない、揺れる年頃の心模様が丁寧に描写されています。将来への不安、受験へのプレッシャーなど、進学時の悩みや葛藤が描かれているシーンでは、多くの人がついつい共感してしまうはず。青春時代からの「卒業」を疑似体験できる作品です。
最高に面白かった!
一緒に泣いて、笑って、馬鹿やって……
こんな仲間って本当に一生ものの宝だと思う。
ずっと皆を見ていたくて、読み終わるのが寂しく感じました。
2.『四月になれば彼女は』1通の手紙がもたらす、過去からの卒業

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あらすじ
四月、精神科医の藤代のもとに、1通の手紙が届いた。差出人は、初めて付き合った彼女・ハルだ。ウユニ塩湖にあるホテルで書かれたその手紙には、2人が付き合っていた頃の思い出が綴られていた。一方で、同棲中の弥生との結婚を控えた藤代は、弥生を愛しているのかがわからない。ハルと藤代と弥生、現在と過去が交錯し始める。ハルはなぜ9年ぶりに手紙を送ってきたのか——。
オススメのポイント!
人を愛するということの意味を、考えさせられる物語です。ハルと藤代、藤代と弥生という組み合わせを通して、過去と現在が交錯して描かれています。初めての恋人と、結婚を決めた恋人、2つの恋の形が対比になっている点も秀逸です。作中では、さまざまな恋愛観や結婚観が描写されており、読み進めるほどに、読者の心も揺さぶられてしまいます。やがて、藤代の出した結論とは…。2つの恋愛の結末と、印象的な「別れ」のシーンは、ぜひご自身の目で確かめてみてください。
美しくせつないお話。戻らない青春時代や、遠ざかっている人を思う気持ちを刺激され胸を締め付けられながら読みました。川村さんの文章は最後まで淡くキレイな小説の世界に居させてくれます。
3.『卒業するわたしたち』 人生におけるさまざまな「卒業」を描く、13の美しい物語集

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あらすじ
吹奏楽部の後輩男子に密かに恋をしたものの、告白できないまま卒業していく先輩女子を描いた『流れる川』。離婚を決めた夫婦が、最後の会話の中で引っかかりを残す『春の雨』。28歳の娘が、仲の良い母の再婚をめぐり葛藤する『母の告白』。人生のさまざまなシーンで訪れる「卒業」を、13の物語で紡いだ1話完結型の短編集。
オススメのポイント!
歌人としても活躍する作家・加藤千恵さんによる、卒業をテーマにした短編集です。各話の始めには短歌が添えられており、物語に深みを持たせています。学校からの卒業、人からの卒業、環境からの卒業など、誰の人生にも訪れるいろいろな形の卒業を、巧みに描き出した作品です。情景豊かに描かれる物語は時に切なく、時にほろ苦く、時に甘酸っぱい気持ちを呼び起こします。そして、読後には新しい世界への前向きな気持ちを感じさせてもくれます。いつかやってくるかもしれない「卒業」を、楽しみに待てるようになる…そんな素敵な1冊です。
卒業がテーマの短編集。あっという間に読み切れる短編しか入っていないのに、冒頭の短歌が上手く効いていて読みごたえがあります。なんでこんなにわかってくれるの、と声をあげたくなるくらい自分の体験に重なる部分が多くて切なくなりました。卒業って言われてすぐに思い描かれるような「胸に赤い花」から確かにこれも卒業だって感じる「にじむオレンジ」まで多彩だからテーマが同じなのに飽きないし同じだと感じさせません。一気に読むよりも少しずつ楽しんだ方が一話ごとの余韻に浸れてよかったです。
4.『四十九日のレシピ』 大切な人との別れを、明るく描いた人気作

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あらすじ
熱田家は、乙美と夫の良平、良平の前妻の子である百合子の3人家族だ。ある日、乙美が急逝した。乙美の葬儀を終え、すっかり気力を失った良平。一方、百合子は夫の愛人が妊娠したことを知り、離婚を決意して熱田家に戻るのだった。そんな2人の前に、乙美の友人と名乗る男女が現れる。乙美の遺した「暮らしのレシピ」をもとに、熱田家の新しい暮らしが始まった——。
オススメのポイント!
乙美という、大きな存在を失った熱田家の再生の物語です。乙美の遺した「レシピ」は食事のことだけでなく、日常生活のさまざまなことが記されていて、乙美から家族への愛情の深さが浮かび上がります。「大切な人との別れは、いつやって来るかわからない」と、思い知らされる物語です。また、良平と百合子を支える、乙美の友人たちもいい味を出しています。本作は2011年にテレビドラマ化、2013年に映画化されました。ぜひドラマと映画の方もチェックしてみてはいかがでしょうか。
最初から最後まで涙が止まらなかった。心が温かくなる作品。クスッと笑えたあとにはポロポロと涙がこぼれてくる。わたしの処方箋(レシピ)になりました。
5.『バイバイ、ブラックバード』 軽やかな余韻を残す、ポップなお別れストーリー

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あらすじ
星野一彦には、5人の恋人がいる。みなタイプが違って、魅力的な女の子たちだ。ある日、星野の前に、見た目も態度も規格外の女・繭美が現れる。星野が「何か」をしでかしたため、「あのバス」に乗せて恐ろしいところへ連れていくというのだ。出発は二週間後。星野は、残された時間を使って、5人の恋人に別れを告げにいくことにした。星野と監視役の繭美による、不思議なコンビ生活が始まる……。
オススメのポイント!
異性関係のだらしない星野という人物が、謎めいた世界で「別れ」を迎えるストーリーです。星野、繭美、星野の恋人たち、それぞれの「別れ」が、ユーモアあふれる筆致で描かれています。星野のしでかしたことは何か、あのバスとは何かといった謎多き設定が、味わい深い余韻を残す作品です。2018年に高良健吾さん主演でテレビドラマ化され、巨体の繭美を城田優さんが演じて話題となりました。「別れ」を描いているのにカラリと明るい独特な世界観を、ぜひ一度味わってみてください。
伊坂さんらしい、軽快でユーモアの効いた、奇想天外な話だった。主人公も周りの女性も、みんな魅力的でいい。楽しかった。
「卒業」や「別れ」は、決して悲しいだけのものではありません。今回ご紹介した作品を通して、懐かしいあの頃やあの人への気持ちを、もう一度思い出してみませんか?読後には、きっと前向きな気持ちになれますよ。後編もお楽しみに!